Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

スクロヴァチェフスキ/読響

2013年10月15日 | 音楽
 スクロヴァチェフスキ指揮の読響。来日中に90歳の誕生日を迎えた。当日は演奏会があり、アンコール(?)にオーケストラが「ハッピー・バースデイ」を演奏したそうだ。微笑ましい話だ。

 1曲目はスクロヴァチェフスキの自作「パッサカリア・イマジナリア」。演奏時間26分(プログラム誌による)の大作だ。大作だけれども、ちっとも飽きさせない。活発な音の動きを追っているうちに、あっという間に終わった観がある。スクロヴァチェフスキの自作曲は今までいろいろ聴かせてもらったが、そのどれもが面白く、これもまたそうだった。

 スクロヴァチェフスキの作品は、ルトスワフスキを代表とするポーランド楽派から派生したものだと思うが、そこに指揮者としての経験が加わり、またスクロヴァチェフスキ自身の個性である活発な音楽的思考が加わって、オーケストラを面白く聴かせる巧みさが特徴になっていると思う。

 ただ、この曲の場合、途中で不確定性の部分が出てくるが、今はそういう部分でちょっと古めかしさを感じるようになった――これはわたしだけかもしれないが――。スクロヴァチェフスキのことではなく、一つの時代の様式としてだが。

 2曲目はブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」。第1楽章はなぜか響きがまとまらない感じがした。第2楽章は――以前とくらべて――メロディーの角がとれ、音に湿り気が感じられた。ひょっとするとこれが今のスクロヴァチェフスキのスタイルかと思った。

 だが、そう思うのは早計だった。第3楽章になって、演奏は精彩を帯びてきた。音とリズムが引き締まり、いつものスクロヴァチェフスキが戻ってきた。トリオをはさんで主部が戻ってきたとき、演奏はさらによくなった。そして第4楽章は神々しいまでの演奏になった。どこがどうというよりも、全体として神々しい光を放っていた。今までスクロヴァチェフスキのブルックナー演奏の特徴だと思っていた精緻なリズムの絡み合い、そして精妙な各声部の絡み合いが、さらに一段上の次元に達したように感じた。

 演奏終了後、大きな拍手が起きた。スクロヴァチェフスキがコンサートマスターの手を引いてオーケストラを退場させたのちも拍手は続いた。再度登場するスクロヴァチェフスキ。それはいつもの光景かもしれないが、心のこもった暖かい交流が感じられた。わたしは拍手をしながら、スクロヴァチェフスキの、わたしにとっての意味を考えた。
(2013.10.12.サントリーホール)
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