Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

カエターニ/都響

2013年09月26日 | 音楽
 オレグ・カエターニOleg CAETANI指揮の都響。カエターニは2009年10月にも都響を振ったそうだが、そのときは聴いていないので、今回が初めて。イーゴリ・マルケヴィチの息子。親の七光りを嫌ってか、マルケヴィチ姓を避けていると、どこかで読んだ記憶がある。たしかな話かどうか。でも、あのマルケヴィチを親にもったら、素直に育つのは難しい――多少ひねくれるのは仕方がない――という気がする。

 ちょっと脱線するが、マルケヴィチは今まで聴いた指揮者のなかで、もっとも強烈な印象を受けた指揮者の一人だ。オーケストラだけでなく、聴衆までも威圧する並外れた存在感があった。その息子のカエターニは、風貌こそマルケヴィチに似ているが、威圧感はあまりなかった。けれども指揮者としての力量は相当なものだ。巨匠の域に達していると思った。

 1曲目は芥川也寸志の「コンチェルト・オスティナート」。この曲を聴くのは初めてだ。こういう曲があるのかと思った。芥川也寸志の、いつもの明るく洒脱なイメージとはちがって、――とくに前半は――多少晦渋な、自己の内部に沈潜した音楽だ。その部分は面白かったが、後半の急‐緩‐急の「急」の部分が、正直にいって、作曲年代の1969年を反映して、昭和だなぁと感じてしまった。

 チェロ独奏は都響首席奏者の古川展生。伸びやかな音楽性が感じられ、好演だった。聴いていて心地よかった。オーケストラも明るく好演だった。チェロ独奏にもオーケストラにも一種の余裕が感じられた。余裕をもってこの曲のよさを表現していた。

 2曲目はショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」。この曲は第12番と並んで、苦手というか、よくわからないところがあるのだが、そういうことを忘れて、なるほどこれはよくできた曲だ、と思える演奏だった。どこかの部分を強調することなく、すべてがバランスよく表現され、結果、堂々たる全体像が現れてくる、そんな演奏だった。凄まじい音の炸裂もあるが、けっして絶叫調にならず、常にコントロールされていた。

 都響の演奏力の向上もあるが、カエターニの力量もあった。この曲は若手の指揮者では手におえないのではないか、カエターニくらいのヴェテランにならないと、その本来の姿を表現することは難しいのではないか、と思った。

 ともかくこの曲の演奏として、これはひじょうに納得のいく演奏だった。
(2013.9.25.サントリーホール)
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