Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ワルキューレ

2013年09月15日 | 音楽
 神奈川県民ホールの「ワルキューレ」。あちこちで第1幕だけ演奏されているなかで、本来のオペラ公演はそれだけで新鮮味がある。ほんとうは新国立劇場に新制作の一つでも出してもらいたいところだが、さっさと不戦敗を決め込んだのは情けない。

 第1幕、ジークリンデの大村博美に期待したが、かなり緊張していたのではないか。席は1階前方だったが、声が届いてこなかった。音楽の表情が硬く、こなれなかった。もっとも、緊張していたのは大村博美だけではなかったようだ。とくにオーケストラ。いつまでたっても、取り澄ました、他所いきの演奏だった。フンディングの斉木健詞に注目した。クールな悪役、ハーゲンのようだった。

 第2幕はフリッカの小山由美が支えていた。ヴォータンをはじめ、すべてを威圧するフリッカ。大村博美もだいぶ調子が出てきた。もちろん、ジークムントの福井敬は、第1幕から本調子だったのだろう――と、念のため、補足するが、正直なところ、最近の福井敬、とくにそのドイツ・オペラには、なにか癖を感じる――。

 第3幕になってやっとオペラ的な舞台になった。冒頭のワルキューレの騎行は大健闘。続くブリュンヒルデの横山恵子はパワーがあり、またヴォータンの青山貢もすばらしい美声だった。大村博美もエンジン全開、ワーグナー歌手としても大器であることを示した。オーケストラも美しかった。

 でも、オーケストラについては、第1幕で感じたことが払拭できなかった。それは、新日本フィルの記者会見でメッツマッハ―がいった「日本人は西洋音楽をリスペクトしすぎる」という発言だ(なおハーディングも同様の発言をした)。二人がいっていることは当たっている――本質を突いている――という思いが頭から離れなかった。これはオーケストラ(神奈川フィルと日本センチュリー響の合同演奏)の問題なのか、当日の指揮者沼尻竜典の問題でもあるのか。

 演出はジョエル・ローウェルス。リヒャルト・シュトラウスの「カプリッチョ」がものすごく面白かったので、期待して出かけた。第1幕と第2幕は比較的おとなしく、今回はこんなものかと思ったら、魔の炎の音楽で仕掛けがあった。フリッカの憎悪を一身に受けるブリュンヒルデ、他のワルキューレたちはフリッカの側につき、一人孤立するブリュンヒルデ――と見えた――。

 細かい点はいろいろある。でも、何もしない演出よりよっぽどいい。
(2013.9.14.神奈川県民ホール)
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