Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ザルツブルク:軍人たち

2012年09月07日 | 音楽
 旅の記録の続きを。バイロイトの後、ザルツブルクに移動した。ザルツブルクは久しぶりだ(調べてみたら7年ぶりだった。)。駅がすっかりきれいになっていた。近代的で明るい駅だ。構内にはスーパーマーケットもあった。水と果物を買ってホテルへ。

 夜はツィンマーマンのオペラ「軍人たち」を観た。ぜひこれを観たかった。新国立劇場の「軍人たち」を観て以来、このオペラはもっとも大事なオペラの一つになった。だからこそ、新国立劇場のイメージで固定したくなかった。他の演出も観ておきたかった。

 今回の演出はアルヴィス・ヘルマニスAlvis Hermanis。まったく知らない演出家だが、面白かった。新国立劇場はウィリー・デッカーの演出で、マリーを誘惑するデポルト男爵や、マリーに息子と手を切らせる伯爵夫人は、それなりに貴族らしく描かれていた。今回の演出では、デポルト男爵も一介の兵士として、伯爵夫人も質素な身なりの老婦人として描かれていた。

 この演出から浮かび上がるメッセージは、集団としての軍人たちの、粗野で、ぎらぎらと欲望をむき出しにした実相と、その周辺にいる人々の苦しみ(マリーの場合は堕落)だった。全体はこれらの人々の織りなす群像劇になっていた。

 会場はフェルゼンライトシューレ。もともと横長の舞台だが、さらに舞台前面と奥の岩壁とのあいだに透明な板を立て、板とピットのあいだの細長いスペースでドラマを進行させた。舞台転換なし。一つのセットで終始した。きわめて演劇的な発想を感じさせる演出だった。

 メッツマッハー指揮のウィーン・フィル(コンサートマスターはキュッヒルさん)は、気迫のこもった、渾身の演奏だった。ウィーン・フィルといえども現代に生きるオーケストラであることを示した。多数の打楽器とジャズ・コンボは、ピットに入りきらず、舞台の両袖に配置していた。またピットの左隅には補助指揮者がいて、必要に応じて歌手にキューを出していた。

 歌手ではマリー役のラウラ・アイキンが、渾身の歌唱と、体当たりの演技だった。マリーの父ヴェーゼナー役はアルフレド・ムフだった。さすがの声の深さと貫録だ。こういうヴェテラン歌手が一人入ると舞台が引き締まると思った。

 終演後、外に出たら、雨が降っていた。それもかなり強い雨だった。しばらく軒先で雨宿りをしていたが、やみそうもないので、濡れて帰った。
(2012.8.28.フェルゼンライトシューレ)
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