後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔105〕「学校教育における政治的中立性についての実態調査」(自民党)はまさに学校教育密告サイトですね。

2016年08月15日 | 学校教育
 今年の7月初旬に、自民党文部科学部会から下掲の「学校教育における政治的中立性についての実態調査」が自民党のサイトに登場しました。これはまさに学校教育密告サイトです。

●学校教育における政治的中立性についての実態調査(自由民主党)
 党文部科学部会では学校教育における政治的中立性の徹底的な確保等を求める提言を取りまとめ、不偏不党の教育を求めているところですが、教育現場の中には「教育の政治的中立はありえない」、あるいは「子供たちを戦場に送るな」と主張し中立性を逸脱した教育を行う先生方がいることも事実です。
 学校現場における主権者教育が重要な意味を持つ中、偏向した教育が行われることで、生徒の多面的多角的な視点を失わせてしまう恐れがあり、高校等で行われる模擬投票等で意図的に政治色の強い偏向教育を行うことで、特定のイデオロギーに染まった結論が導き出されることをわが党は危惧しております。
 そこで、この度、学校教育における政治的中立性についての実態調査を実施することにいたしました。皆さまのご協力をお願いします。

 このサイトについては当然のことですが、ネットでかなり批判されて、7月18日終了ということになったそうです。そのあたりの顛末を朝日新聞は次のように伝えています。

●自民、「政治的中立を逸脱」した教師の事例をネット募集(朝日新聞、2016年7月9日) 
 自民党が党公式ホームページ(HP)で、教育現場での「政治的中立を逸脱するような不適切な事例」を募るネットアンケートを始めた。18、19歳に選挙権が拡大されたことを受け、「主権者教育が重要な意味を持つ中、偏向した教育が行われることで、生徒の多面的多角的な視点を失わせてしまう恐れ」があることを調査理由に挙げている。ネット上では「この調査こそ教育への政治的介入」と批判の声も出ている。
 自民党HPは、調査の呼びかけで「教育現場の中には『教育の政治的中立はありえない』と主張し中立性を逸脱した教育を行う先生方がいることも事実」と断定。「高校等で行われる模擬投票等で意図的に政治色の強い偏向教育を行うことで、特定のイデオロギーに染まった結論が導き出される」などと主張し、「不適切な事例」をアンケート形式で情報提供するよう呼びかけている。
 HPには当初、教育現場で「子供たちを戦場に送るな」と主張する教員がいるとする表現があり、その後、「安保関連法は廃止にすべきだ」と訴える教員がいるとの表現に変えられたが、いずれも削除された。
 同党の木原稔文部科学部会長は7日、この取り組みについて「18歳の高校生が特定のイデオロギーに染まった結論に導かれることを危惧してます」とツイッターで説明している。

●「木原みのる氏」のツイッター
 残念ながら教育現場に中立性を逸脱した先生がいます。18歳の高校生が特定のイデオロギーに染まった結論に導かれる事を危惧してます。そこで、学校教育における政治的中立性についての実態調査を実施します。皆さまのご協力をお願いいたします。

 ちなみに木原氏はあの日本会議国会議員懇談会のメンバーです。ウイキィペディアでは次のように書かれています。

*木原 稔(きはら みのる、1969年(昭和44年)8月12日 - )は、日本の政治家。自由民主党所属の衆議院議員(3期)、財務副大臣、創生「日本」事務局長。過去に、自民党文部科学部会長、自民党青年局長、防衛大臣政務官(第2次安倍内閣)。熊本県熊本市出身。(ウイキィペディア)

 そしてあろうことか、馳文科相はこれに理解を示したというから開いた口がふさがりません。

●教育の「政治的中立」調査 馳文科相が自民に理解(朝日新聞、2016年7月12日)  
 自民党が党公式ホームページ(HP)で、学校での「政治的中立を逸脱するような不適切な事例」の情報提供を呼びかけていることについて、馳浩文部科学相は12日、閣議後の記者会見で「党として、たぶん実態がどういうものか分からず、(把握するには)どうしたものか、と考えた中の一案だ」と理解を示した。
 馳文科相は「教育現場では政治的中立性を守ってほしい」とし、「例えば『給付型奨学金についてどの政党がどう主張しているか、なぜ今求められるのか』を考えるのなら中立性に配慮したことになるが、いい悪いとまで述べることは、私はよした方がいいと思っている」と語った。
 自民党は6月、HP上に投稿フォームをつくり、「中立性を逸脱した教育を行う先生方がいる」と断定。投稿者の氏名や連絡先、職業とともに、「不適切事例」について「いつ、どこで、だれが、何を、どのように」を明らかにして記入するよう求めている。

 しかし、ここ1年の間に教育だけに限ってみても、政府筋から様々な右翼的な物言いが発せられてきています。国立大学の卒業式など行事に国旗・国歌を位置づけること、教員の政治的中立「違反に罰則」、さらに「岐阜大学で、卒業式などに君が代を歌わないのは恥ずかしい」馳発言など、枚挙にいとまがありません。そういえば、森元首相の教育勅語は良いことが書いてある、「オリンピックで選手が国歌を歌わないのはみっともない」発言など、言ったものがちの風潮が出てきているのでしょう。日本国憲法の精神をないがしろにする発言は見過ごすわけにはいきません。
もう少し詳しく知りたい場合は、下記のブログを開いてください。

〔29〕今回からは陳情ではなく請願です。「国旗・国歌に関する国立大学への要請に反対する請願」
〔42〕9月議会には“教員の政治的中立「違反に罰則」に反対決議を求める請願"します。
〔76〕 馳文科相「恥ずかしい」発言はとても恥ずかしいですね。

自民「政治的中立調査」のその後については、朝日新聞が丁寧にフォローしています。

●自民「政治的中立調査」、警察に一部提供 部会長が意向(朝日新聞、2016年8月2日) 自民党がホームページ(HP)で実施した「学校教育における政治的中立性についての実態調査」について、木原稔・党文部科学部会長は1日、投稿された情報のうち明らかに法令違反と思われるものなど一部を警察当局に提供する考えを示した。いじめや体罰など政治的中立と関係のない通報があったといい、こうした情報も対象という。
 部会後、報道陣の取材に答えた。木原氏によると調査実施後、部会内のプロジェクトチーム(PT)で非公開で議論。投稿の内容は公表せず、今後の議論に向けた参考とする方針を確認した。木原氏は「SOSを発していたり、明らかな法令違反だったりして、無視できないものがある。例えばいじめや体罰で、しかるべきところに報告する」と話した。
 これまで公職選挙法違反と判断されるものは文部科学省に情報提供するとしていたが、「公選法違反は警察が扱う問題」と、捜査当局への提供を示唆した。
 PTは学校での政治的中立性を確保するための最終提言を出す予定。木原氏は「(調査結果の)中身はボリュームがあり、全部処理し切れていない」とし、時期は明言しなかった。