莪朮(がじゅつ)
莪朮(がじゅつ)はヒマラヤ地方原産のショウガ科の多年草で、高さは約1m、夏季に淡黄~淡紅色の花を開く。古くは蓬莪茂と称されたが現在名は莪朮(がじゅつ)である。薬用となる部分は根茎である。中国では四川省、福建省、広東省が主な産地である。地上茎は郁金(うこん)と酷似している。中国では温郁金(おんうこん)と呼ばれることがある。
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莪朮(がじゅつ)の地上茎と花(本草綱目彩色薬図2003年版より)
学名 RHIZOMA CURCUMAE
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薬用部分の地下根茎の乾燥品 煎じ用薬剤 独自の芳香がある
莪朮の効能
莪朮の性味は苦、辛、温であり、帰経は肝、脾経である。婦人科系臓器は肝経に属するので特に婦人科疾患に多用される。
効能は行気破血といい、気の停滞から生じる血液の停滞(淤血)をすばやく除く。淤血を除く作用を中医学では祛淤(きょお)というが、破血はその中でも最も強い作用を指す。淤血が関与する腫瘤の軟化に効果がある。また、消積止痛といい、飲食停滞による胃部の痛み、悪心、嘔吐に効果がある。
三棱 (さんりょう)と莪朮は、帰経、効能もほぼ同じである。ただし、莪朮は温薬、三棱 は平薬である。古くから中医外科が同時に使用してきた中国の経緯がある。私が漢方を学んだ上海曙光病院では、姜黄(きょうおう)、莪朮(がじゅつ)三棱 (さんりょう)をセットにして使用される教授達が多かった。
近代薬理学が証明した莪朮の効能
莪朮の精油には芳香健胃作用があるので、消化異常による胃痛、腹痛、ガス停滞、腹部膨満感などに用いられる。莪朮の特異的な消化器への効能として、慢性胃炎、胃潰瘍を引き起こすヘリコバクター ピロリ菌を殺菌してしまうことも確認されている。健胃殺菌作用はシオネールの作用といわれる。その他、カンファー(強心作用)、抗炎症作用、抗蛋白分解酵素作用のアズレン、肝機能の改善と胆汁分泌促進作用を持つクルクミンなどや、血圧効果作用や抗癌効果も確認されている。
精油成分にテルペン類を多く含み、がん細胞に対する抑制作用がある。同時に、がん予防効果をもつクルクミンを含有する。クルクミンは郁金にも豊富に含まれる。免疫力をアップする効果も有し、抗腫瘍作用が期待できる。中国では「莪朮油葡萄糖注射液」などの「注射液」が、抗ウイルス治療やがん治療に用いられている。成分のエレメンに抗腫瘍活性があリ、がん細胞にアポトーシス(プログラム自然誘導細胞死)を起こすと報告されている。さらに莪朮には肝細胞障害を改善する作用がある。肝細胞傷害抑制作用はセスキテルペン類とクルクミンによるものと考えられている。
活血行気薬における莪朮の位置
気の流れが滞ることによって生じる淤血(おけつ)を除き、気をめぐらす作用を持つ薬剤を活血行気薬という。中医学理論では「旧血不去、新血不生(古い血が去らなければ、新しい血は生まれない)」といい、淤血を除くことを重視する。
この群に属する生薬は、川芎(せんきゅう) 延胡索(えんこさく 元胡 玄胡ともいう) 郁金(うこん)、姜黄(きょうおう)、莪朮(がじゅつ)、劉寄奴(りゅうきど)、三棱 (さんりょう)、乳香(にゅうこう)、没薬(もつやく)などである。寒熱温涼の四気で分類すれば、温薬は川芎、延胡索、姜黄、莪朮、乳香で、寒涼薬は郁金、その他の動物薬である土?虫、虻虫などである。平薬は三棱 没薬と動物薬の水蛭(みずひる)である。このうち特に淤血を除く作用の強い破血作用を持つものが、植物生薬では莪朮、劉寄奴であり、動物薬では土?虫(しゃちゅう)、虻虫(ぼうちゅう)、水蛭である。動物薬は、肝硬変や閉塞性動脈硬化症などに使用され一般的ではない。なんといっても婦人科領域で多用されるのは、川芎、莪朮、劉寄奴、延胡索、姜黄の温薬と平薬である三棱 、涼薬である郁金の涼薬である。このうち、腫瘍性疾患に多用されるのが、莪朮 三棱 郁金である。
漢方がん治療のポイント
1. 生薬には腫瘍細胞の増殖を抑えたり、直接殺生することができるものがあります。たとえば、白花蛇舌草、半枝蓮、半辺蓮、夏枯草、莪朮、三稜、蛇莓、山豆根、山慈姑、蒲公英、半辺蓮、穿心?、七叶一枝花、栝楼根、皂角刺、菱実、露蜂房、龍葵、天葵子、山帰来、石見穿、黄薬子など抗腫瘍活性が知られているものが多くあります。
このうち特に婦人科系腫瘍に多用されるのが、白花蛇舌草、半枝蓮、蛇莓、夏枯草、山慈姑、七叶一枝花、栝楼根、露蜂房、龍葵、石見穿、黄薬子などです。
2.免疫力増強作用の強い生薬(野山人参、霊芝、黄耆、茯苓、猪苓など)を併用する。
3.炎症を抑える生薬(黄連、黄柏などの清熱解毒薬)や気血の流れを良くする生薬(祛淤薬や理気薬)を併用する。特に、悪液質を改善する目的で、莪朮 三稜 丹参 田七人参などの祛淤薬や、木香 郁金などの理気薬を併用する。郁金は理気活血作用といい、理気剤であると同時に活血剤でもあります。威霊仙(いれいせん)などは腫瘍そのものを柔らかくさせる作用があります(軟堅散結作用)。
これらを組あわせることによって、がん細胞を攻める攻撃だけではなく、免疫力をアップさせ体を強化させることや、悪液質の改善などにより、「攻撃」一方の西洋抗がん剤による治療との併用も可能ですし、西洋抗がん剤の副作用を軽減できます。
莪朮や三棱などの祛淤(きょお)薬はがん悪液質を改善する
癌患者の死因は大別して以下の4つあります。
1.免疫力低下による感染症の併発(敗血症や肺炎など)(野山人参 霊芝 黄耆などの補気薬が免疫力アップに有効)
2.悪液質(莪朮 三棱 木香 郁金などの理血行気剤の他に人参などの補気剤も有効 後述)
3.臓器不全(肝不全、呼吸不全、腎不全など)(1、2が原因となる場合や、西洋抗がん剤の副作用で生じる場合もある)
4.出血(救急の輸血が間に合わないような出血)(腫瘍の直接的な血管への浸潤や、西洋抗がん剤の副作用である骨髄抑制による血小板減少などによる出血傾向が原因となる)
もちろん、これは「がん死」の場合であり、合併症としての脳血管障害や心筋梗塞後の心不全などは除外してあります。
がん患者の悪液質(カヘキシー)ってどんなことでしょうか?
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