似たような名称であるが効能はまったく異なる。直前のブログで益胃湯について簡記した。
出典と組成
益胃湯(温病条弁)呉鞠通(1798年)清代
組成 沙参 麦門冬 生地黄 玉竹 氷砂糖
赤は温薬、青は涼寒薬、緑は平薬である。
益胃湯からさかのぼること約600年前
昇陽益胃湯(脾胃論)李東垣(1180―1251)中国時代区分では金元時代になる。
組成は:黄蓍 人参 半夏 炙甘草 羌活 独活 防風 白芍 茯苓 澤瀉 柴胡 黄連 生姜 大棗 である。
やたらに組成生薬が多いのである。まず益胃湯にあるような養陰剤の配合はない。
あえて言うならば白芍一薬(養血斂陰、柔肝止痛、平抑肝陽)が陰を保つ意味がある。東垣翁の生前に著作が刊行された記録はなく、いずれも没後に弟子の羅天益によって世に現われたものが大半であることからして、東垣翁が創生した各種の方剤の正確な成立年代は不明といわざるをえない。東垣翁の功績を世に知らしめた「傷寒会要」「医学発明」「用薬法象」「東垣試効方」「脈訣指掌病式図説」「内外傷弁惑論」「脾胃論」「蘭室秘蔵」などの著書中の方剤で現代でも良く用いられているものを私なりに順に調べていくとする。昇陽益胃湯の理解に役にたつからである。 東垣翁の処方は十数味を越えるものが多く、一般に多味と評されている。臨床実際として病に臨み処方を組もうとすれば、症状に応じ、あれもこれもと薬味が増える傾向が生まれたのであろう。しかし、生脈飲は3味、当帰補血湯は2味である。
朱砂安神丸(医学発明):朱砂 当帰 生地黄 黄連 炙甘草
復元活血湯(医学発明):柴胡 栝萋根 当帰 紅花 甘草 穿山甲 大黄 桃仁
普済消毒飲(東垣試効方):黄芩 黄連 陳皮 生甘草 玄参 柴胡 桔梗 連翹
板藍根 馬勃 牛蒡子 薄荷 白僵蚕 升麻
ここまでの方剤には昇陽益胃湯と共通する薬剤の組み合わせはない。
生脈飲(内外傷弁惑論):人参 麦門冬 五味子
ここで人参が出現してくる。
羌活勝湿湯(内外傷弁惑論):羌活 独活 防風 藁本 川芎 蔓?子 甘草
最初の3薬の組み合わせ 羌活 独活 防風が昇陽益胃湯で出現してくる。
羌活勝湿湯(内外傷弁惑論)については過去ブログhttp://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20080630
を参照してください。
当帰補血湯(内外傷弁惑論):黄耆 当帰
「当帰補血湯」は黄耆と当帰が5:1で組み合わされている。分量比率の妥当性が近年科学的に実証されている。