長崎駅

2005年10月15日 | 
長崎駅と函館駅は、とても似ている。
行き止まりのホーム。そして、そのホームからは、階段を使わずに改札へ行ける。
ホームの左には列車の車庫。そしてその奥は岸壁。駅前には路面電車。
なによりも、どちらの街も坂が多い。
ただ、1つだけ、この街には人類の悲劇があった。
かつて、この街は燃え尽きた。
何もかもが光に包み込まれ、燃え尽きた。
長崎。ナガサキ。NAGASAKI。
おそらく100年は、草木も生えないだろうといわれた。
しかし今、この街は生きている。
そして、すべての人類に、訴えかけている。
この街が永遠に、最後の被爆の地であるように。

すこし訛ったアナウンスが、列車の到着を告げる。
荷物を抱え、降りてくる人々は、皆、一様に疲れた顔をしているが、
そこに陰はない。
帰ってきたという安堵感。
終着駅の表情である。
おそらく、彼らがこの改札口を入るときに流した涙と、
今、この改札口を出るときに流す涙は、違うのだろう。
そこは、故郷なのだ。すべてを包み込んでくれる、故郷なのだ。
ホームの、その向こうで何があったのかなんて、関係はない。
帰ってきたのだ。
終着駅には、そんな優しさがある。

夕方になると、東へと旅立つ人が、この改札を通り抜ける。
心に、たくさんの希望や夢を抱えて。
そして、この街の祈りを抱えて。
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