年末の高座の定番。芝浜です。
もともと腕のいい魚屋の勝は酒が大好き。
ちょっとしたきっかけで天秤棒担いで仕事に行くのが面倒になって
そのままズルズルと休みっぱなし。
女房にドヤされ、嫌々芝の浜の魚市場に行くが
女房は間違えて一刻早く起こしていて市場は空いていない。
雑魚場(魚市場)があった場所
誰もいない芝の浜で顔なんぞ洗って煙管をふかしてるってぇと
波に洗われる革財布を見つける。
中を見てみると大金が入っている。
こりゃ酒が呑めるってんで仕入れもせず飛んで帰るが
女房は「見つかったら死罪」だという。
かまわず酒を買ってこさせてどんちゃん騒ぎをする勝。
酒が回って勝が寝入った隙に女房は大家さんに相談に行く。
大家さん曰く、全部夢って事にしちまえ。
酔いが覚めて起きた勝は財布を探すが
そんなものは知らない、どうせあんたの夢でしょと女房に言われ
結局それを信じ込んで前日と同じように芝へ出かける。
もともと腕のいい勝。
こんな夢を見るようじゃいけねぇってんで酒断ちして仕事に精を出し
通りに店を構えて何人かの人を使うようにまでなった。
三年のちの大晦日、女房からことの顛末を聞かされ
女房が奉行所に届け出た財布と金は、持ち主不明で下げ渡ってきていて
それを怒られる覚悟で勝にみせるが
勝は身上潰すどころか死罪になりかねない状況からも助けてくれ
その上店を構えて裕福にしてくれたと女房に感謝する。
もう酒だって飲んでいいんだよと女房に言われ
3年ぶりにお猪口の酒を口にしようとするが
「やめておこう。また夢になるといけねぇ」
美穂鹿嶋神社には橘右近揮毫による「芝濱囃子の碑」が建てられている
芝の浜は現在の浜松町から田町に至るJRの線路がほぼ海岸線となっていて
明治時代に東海道線が開業したころも
鉄道は波打ち際を走っていた。
爾来140年あまりで東京港はどんどん埋め立てられ
すっかり芝の街は内陸になってしまった。
(画面右側はかつて海であった)