かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠374(中欧)

2017年12月26日 | 短歌一首鑑賞
  馬場あき子の外国詠52(2012年5月実施)
     【中欧を行く ドナウ川のほとり】『世紀』(2001年刊)P100~
     参加者:I・K、崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:鈴木良明
      司会と記録:鹿取未放

374 ドナウ川八橋の中の自由橋に自由社会の自殺増ゆると

         (レポート)
 上流(北端)の鉄道橋を除く、「八橋」のことだろう。自由橋を巡る際に、ガイドの説明の中にこの言葉があったのかもしれない。自由とはすばらしいものだと普通思っているが、サルトルは逆に、「実は人間はみんな自由であることに不安を感じ、そこから逃れようとしているのだ」という。それだけが自殺の増える要因とは思わないが、そのような一面もあるだろう。さらに皮肉なのは、「自由橋」での自殺者が多いということだ。世界遺産に登録されていないこの橋は、さほど目立たない橋、改称した共産主義政権に対する民衆の鬱屈した思いの顕れか。(鈴木)


      (当日発言)
★人間は自由でありすぎると不安を感じて戦争中よりかえって自殺する人が増えるらしい。
   (鈴木)
★人間の不思議を感じる。ああしなさい、こうしなさいと言われる方が楽だ。(崎尾)
★鈴木さんのレポートにもるようにサルトルは「人間は自由という鎖に繋がれている」というよう なことを言っていますよね。フェレンツ・ヨーゼフは王様の名なので、共産主義政権下ではまず いから「自由橋」に改称されたのでしょうね。(鹿取)
★もともとハンガリーは第二次大戦中日独伊側だったが、戦後ソ連に占領され、共産主義に組み  込まれていた。今はユーロ圏の一員。89年にソ連から解放されて、共産主義から自由主義に  変わった。(鈴木)


     (まとめ)
 自由橋は第二次世界大戦時に、他の橋と同様に破壊されたが、最も早く修復されて、オリジナルの装飾が復元された。緑に塗られ、ハンガリー国王の紋章や伝説の鳥トゥルルを戴く美しい橋だそうだが、レポートにもあるようにどうした訳かこの橋だけ世界遺産には登録されていない。歌は、自由橋の自、自由社会の自、自殺の自と頭韻を踏み、濁音のあまり心地の良くない不思議な韻律を作っている。その韻律からは苦い諧謔の味がしている。(鹿取)



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