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日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ (中公新書)

2010年06月11日 15時15分07秒 | 書評 その他
民主党政権になって「政治主導」「脱官僚」の目的は
達成しつつあるのでしょうか?
事業仕分けのパフォーマンスは一見、
官僚政治に風穴を開けているようにもみえますが
現実の予算削減は目標に至っていません。

鳩山政権下の混乱を見ていると、
官僚にいいようにあしらわれているようにも見えます。

一体、日本の統治構造はどうなっているのかを
解明したのが本書です。
本書の初版は2007年7月なので、
まだ安倍内閣のときです。

政党政治家を内閣の主体と考えず、
省庁の代表者が集まって内閣を構成するという認識が、
戦後日本の独特な議院内閣制を生み出したと、
著者は指摘しそれを「官僚内閣制」と呼びます。

鳩山首相が沖縄県外への普天間基地移設を唱えたものの、
外務・防衛・沖縄担当の各大臣の動きが極端に鈍くなりました。
官房長官の実行力のなさ等さまざまな要因はあるにせよ、
政治主導とは言いながら、
肝心な政策実行の場面では
結局のところ各省庁の利害が優先される現状を
浮き彫りにさせました。

著者が主張する改革の方向性は
①責任者への権力の集中
②一般有権者による民主的統制
の両立にあるとされています。

①責任者への権力集中は、
首相に権限を集中させるという意味ですが
この点においては、かなり進んでいるようです。
もっとも、鳩山-小沢政権のように
運用面で二重権力構造になってしまうのは
首相の資質に問題があるかもしれません。

この点で、菅首相の場合には
権力の集中が一元化される予感を抱かせます。

②一般有権者による民主的統制とは
端的に選挙、とくに衆院総選挙のことを言うのですが、
世論と言う名の各種マスメディア調査による
内閣支持率によっても内閣が倒れたりするので、
近年、民主的統制が格段に取れている気がするのですが
どうでしょう?

大きく見ると、①②の方向性に向けて政治改革は
進んでいるように思うのですが、
おかげで「振り子」のように安定しない政権が
連続する事態を著者はどのように考えているんでしょうね?

長期政権を維持し最後まで人気のあった
小泉元首相が特異だったのか
小泉元首相の行政改革のツケを
その後の歴代の内閣が払わされているのか
そのあたりの事情は論者によって
大きく分かれるところです。



日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ (中公新書)
飯尾 潤
中央公論新社

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