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「辺境」日本の世界史的な意味(6)現代のジャポニズム

2020年04月21日 | 相対主義の国・日本
そして現代の日本は、長い受容の歴史の結果、その豊かな蓄積の内側から次々と独自の文化を生み出すようになった。浮世絵に代表される江戸時代の豊かな庶民文化も、幕末から明治初期にかけてフランスなどヨーロッパに知られ、その流行はジャポニズムと呼ばれた。

それぞれの文化の背景にある宗教やイデオロギーに縛られずに、さまざまな要素を融合させてしまう柔軟さは、現代のポップカルチャーにもいかんなく発揮されている。それが、インターネットなどの情報革命によって江戸時代とは比較にならないほど広範に世界に影響を与え始めた。

現代のジャポニズム(マンガ・アニメに代表されるポップカルチャーなどの世界的な人気)は、中国文明だけではなく西欧文明やアメリカ文明の受容と蓄積が加わり、それが縄文時代以来の日本の伝統の中で練り直され、磨かれることによって豊かに開花したものといえよう。例を挙げればきりがないが、たとえば宮崎駿のアニメ作品のなかにどれだけ神道的な要素や古代中国的な要素や西欧的な要素が融合しているかを見ればよい。

今、世界は「普遍宗教」同士の深刻な対立を背景にした紛争やテロが後を絶たない。環境問題や経済の混乱の深刻化などにより、西欧近代の文明原理がかなり問題をはらむのではないかと疑われ始めもした。では日本は、それに替わる新たな「世界標準」を生み出すことが可能なのだろうか。これに対する私の答えは、上に述べたような「世界標準」という意味でなら「否」というものである。しかし、「世界標準」という言葉にこだわらずもっと柔軟な見方をすれば、必ずしも否と言えない。

逆説的なことだが、ひとつの「世界標準」にこだわらず、つまり絶対視せず、相対主義的な姿勢で自由に学び吸収しつづけたからこそ、そこから生まれた独自の文化が、今後の世界にとって新たなモデルになる可能性を秘めるようになったのではないか。

近年の日本人は、「世界標準」同士が張り合ったり、宗教同士が争い合ったりすることが、どれだけ悲惨な結果を生んできたか、そして今も生みつつあるかを、かなりよく知るようになった。そして自分たちのようにあまり原理原則にこだわらず、それぞれのいいところを自由に受け入れて、自分たちに合わせて作り替えていく行き方が、逆に豊かな結果をもたらすことをようやく知るようになった。そして、そういう日本のあり方や日本が発信する文化を、世界がクールと感じ始めたのではないか。

《引用・参考文献》
(1)「原型・古層・執拗低音―日本思想史方法論についての私の歩み」(『日本文化のかくれた形』加藤周一・木下順二・丸山真男・武田清子編、岩波書店、1991年所収)
(2)『日本辺境論』内田樹著、新潮新書、2009年
(3)『日本とは何か』堺屋太一著、講談社、1991年
(4)「日本文化の選択原理」小松左京著(『英語で話す「日本文化」』講談社インターナショナル、1997所収)
(5)『ユニークな日本人』グレゴリー・クラーク、竹村健一著、講談社現代新書、1979年
《関連図書》
日本人にとって聖なるものとは何か - 神と自然の古代学 (中公新書)
ユニークな日本人 (講談社現代新書 560)
日本の曖昧力 (PHP新書)
日本人の人生観 (講談社学術文庫 278)
古代日本列島の謎 (講談社+α文庫)
縄文の思考 (ちくま新書)
人類は「宗教」に勝てるか―一神教文明の終焉 (NHKブックス)
山の霊力 (講談社選書メチエ)
日本人はなぜ日本を愛せないのか (新潮選書)
森林の思考・砂漠の思考 (NHKブックス 312)
母性社会日本の病理 (講談社+α文庫)
日本人とユダヤ人 (角川文庫ソフィア)
アーロン収容所 (中公文庫)
肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見 (中公文庫)
日本人の価値観―「生命本位」の再発見
ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)
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