◆『日本の「世界商品」力 (集英社新書) 』
世界が、日本のサブカルチャーに魅せられ、日本が想像する以上にクールジャパン現象が広がっている。アニメ、マンガ、ゲームや映画だけでなく、商品のデザインのセンスのよさ、さらに歌舞伎などの伝統文化の華麗さ、優雅さにも関心が強まっている。クールという言葉を広く、上品、上等といった視点で見ると、日本には上質、上等な文化的産業や、商品がきわめて多い。
日本の産業、企業がめざす次のターゲットは、世界中の中流層の人々にマッチしたクール製品を提供することにあるのではないか。著者・嶌信彦は、それらがこれからの日本経済の成長エンジンとなる可能性があるとし、成長戦略としてのプレゼンテーションを、本書で試みている。
おりしも7月15日付けのニュースで国内で食品最大手のキリンホールディングスと2位のサントリーホールディングスが経営統合の交渉を始めたというニュースが流れた。 「世帯の可処分所得が年50万~350万円くらいのアジアの中間層は、ここ20年で6倍以上に膨らみ、9億人規模と言われる。縮小する国内市場に引きこもらず、高成長のこの新市場を「わが市場」ととらえて活路を開かねば、日本企業の飛躍はあり得ない。 典型的な内需型ビジネスだった飲料業界の両雄がその先駆けとなれば、日本にとって心強いモデルになる。」(同日、朝日新聞社説) 増大しつつアジアの中間層はまさに本書が提示する狙いと同じである。
世界が、日本のサブカルチャーに魅せられ、日本が想像する以上にクールジャパン現象が広がっている。アニメ、マンガ、ゲームや映画だけでなく、商品のデザインのセンスのよさ、さらに歌舞伎などの伝統文化の華麗さ、優雅さにも関心が強まっている。クールという言葉を広く、上品、上等といった視点で見ると、日本には上質、上等な文化的産業や、商品がきわめて多い。
日本の産業、企業がめざす次のターゲットは、世界中の中流層の人々にマッチしたクール製品を提供することにあるのではないか。著者・嶌信彦は、それらがこれからの日本経済の成長エンジンとなる可能性があるとし、成長戦略としてのプレゼンテーションを、本書で試みている。
おりしも7月15日付けのニュースで国内で食品最大手のキリンホールディングスと2位のサントリーホールディングスが経営統合の交渉を始めたというニュースが流れた。 「世帯の可処分所得が年50万~350万円くらいのアジアの中間層は、ここ20年で6倍以上に膨らみ、9億人規模と言われる。縮小する国内市場に引きこもらず、高成長のこの新市場を「わが市場」ととらえて活路を開かねば、日本企業の飛躍はあり得ない。 典型的な内需型ビジネスだった飲料業界の両雄がその先駆けとなれば、日本にとって心強いモデルになる。」(同日、朝日新聞社説) 増大しつつアジアの中間層はまさに本書が提示する狙いと同じである。
本書の最初の5章までは、クールジャパン現象を主なジャンル毎に、その歴史的な経緯から現代の興隆まで適確に概観しており、それぞれの分野のクールジャパン現象への入門的な読み物としても価値がある。
たとえは第2章の「世界に誇る日本の美」は、200年前のフランスでのジャポニズムと呼ばれる日本ブームから始まり、現代の最先端の日本発のファッションにまで言及される。つづいて第3章「世界を席巻する日本のコンテンツ」では、手塚アニメのアメリカ進出から、日本アニメ輸出の歴史、アニメからマンガへの広がり、和製ホラーから村上春樹までが語られる。同様に第4章では和食文化と農業製品が、第5章では日本の伝統技術分野でのクールジャパン現象が語られる。
第6章以下では、それらのクールジャパン現象が、「世界商品」戦略にとってどれだけ可能性があるかが、やはり分野ごとに語られる。しかしそれは可能性に留まる場合が多く、これだけ世界に注目されているのに、それらが戦略的な企画として世界に発信される力が弱い。著者の提案をひとつだけ挙げれば、クールジャパンの諸要素を個別に売り込むのではなく、大きなショー、展示、イベントとして世界へプレゼンテーションを行うという構想だ。様々なクールジャパンを束ね、日本発の国際的イベントとしていくつも発信する。たとえば、日本の代表的な祭りをいくつか東京などに集めて二日間ほどの祭中心イベントを行えば、それがクールジャパンの総合的な一大発信力になるだろう。
世界のクールジャパン現象を受身でいい気持になっているだけではなく、いくつもの分野を束ねてイベント化するなど、みずから打ち出していく構想力もって世界に発信する姿勢が今、問われている。