BOXING観戦日記

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WBA・WBO世界ライト級タイトルマッチ

2010-08-02 23:26:18 | Boxing
王者 ファン・マヌエル・マルケス VS 挑戦者 ファン・ディアス

マルケス 判定勝利

考察 ~マルケス~

打つアッパーが効果的で、見せるアッパーは有効で、打たないアッパーはフェイントとして機能した。
距離の違いから威力よりも微妙なタイミングを重視していたように映ったが、
リナレスのそれと異なり、能動的かつ引っかけのためのアッパーも織り交ぜられており、
キャリアに裏付けられた試合途中でのadjustabilityの高さも証明した。
以前まではキレで魅せるパンチにも重みがついたようにも感じられる。
フェザーもしくはSフェザーが今でもベスト階級だと思うが、
シャープさを保持したままパワーアップに成功したのだろう。
ウェルター級でのメイウェザー戦も無駄ではなかったということか。
ディフェンスは確かにジョー小泉の言うとおり衰えを見せているように思う。
ただし、これは意識の低下や歴戦のダメージによるものではなく加齢からくる視力の低下が原因ではなかろうか。
ボクシングはおそらく裸眼視力が0.5あれば何とかなると思う。
日本のプロは0.7が基準だったかな。
ここで言いたいのは目が悪くなった=パンチが見えないではなく、
前とは見え方が変わってきたというわずかに意識の端に上る程度の違和感があるのでは?ということ。
攻撃面に目を転じると、ワン・ツーのツーをクロスカウンターとして無数にヒットさせるなど、
相手のモーションの癖から呼吸の大小、心理状態までも読み切っているのではと思わせるカウンターも健在。
スタミナ配分も上手く、被弾までも計算に組み込んだ先行ポイント奪取だったのだろう。
打ち下ろしの右と死角からの左フックと合わせて、メキシコ三羽烏の最後の砦の技芸と技巧を存分に堪能した。

ライト級でパッキャオとのラバーマッチ(と敢えて云おう)が実現すれば
Fight of the decadeが実現するに違いない。
Sライト、ウェルターでは捻り潰される可能性が大である。
けれど、そもそもパッキャオはMarquez Trilogyには興味なさそうだしねぇ。
現実的には次はカチディスと激突ですかね。

考察 ~ディアス~

前回はアッパーで流れをせき止められ、アッパーでフィニッシュされた。
ならば今回はそのアッパー対策が重要になるが、その答えは?
ざっと思いつく解答はクロスアームブロック、もしくはピーカブースタイル、
スクエアスタンスからのL字ブロック、果ては奇策のサウスポーへのスイッチなどが考えられるが、
ディアス陣営の回答は「シューズ半分だけ距離を置く」だった。
その意図は悪くない。
アッパーカットは両刃の剣で、当たれば効果抜群、外れれば隙が大。
しかし相手の全体像さえ見えていればそう簡単に喰わない。
それゆえに半歩~一歩の間合いでかなりはずせるようになる。
その距離まで伸びてくるアッパーカットの名手はそうはいない。
過去のボクサーで言えばエデル・ジョフレ、現役で言えばスーパーな時のザブ・ジュダー。
(前者をリアルタイムで見ていたわけではないが… 動画サイト様々である)
弱点を修正するプランとして悪くはなかったが、自身の距離をも潰してしまう結果になり、
それ以上に負けが込んできた自身のキャリアから来るブレーキの影響もあったと思われる。
胴の太さを短所とせず、むしろその胴体を軸に回転の効いた連打を打ち込むスタイルはまさにBaby Bull。
だがボクシングにおいて優先度が高いのは手数よりも距離。
(手数と距離の重要性の関係は自身と相手双方のスタイルに因る)
そこを取り違えての再戦でリベンジならずは当然の帰結と言える。
とはいうもののファイトスタイルそのものが限界に近づいているとの見方もできる。
ジャブをトリプル以上のflurryで繰り出し、マルケスの右眼上にかなりヒットしたが、
相手の効き目はかなりの確率で左だろう(効き手が右であれば効き目は90%の確率で左)。
またその体格的な特徴からuprightからのジャブは体重が乗りきらず数で補ってもキラーパンチにはなりえない。
ボクサーのピークがどこに来るかは人種、階級、ファイトスタイル、メンタリティ、
トレーニング、戦績、遺伝的要素、未婚か既婚かなどで様々に異なってくる。
残念ながらディアスのピークは過ぎたと判断するしかない。

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