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喫茶 輪

コーヒーカップの耳

「現代川柳」

2018-09-24 14:40:10 | 文学
「現代川柳」63号(2018年9月)をお贈りいただいた。
事務局で企画・事業・校正担当をしておられる中野友廣さんから。

時実新子さんがお亡くなりになったあと、お弟子さんたちがその遺志を継いだかたちでの川柳誌。
隔月でもう63号だから、新子さんがお亡くなりになって間もなくから発行されている。
100ページ近い立派な本です。
読ませていただくと、新子さんの匂いがあふれている。
新子さん亡くなって10年にもなるのに、みなさん熱心なことです。
お贈りくださった中野友廣さんが今号に発表しておられる5句を紹介しましょう。

  相談にのってほしいと神が呼ぶ
  二人で降りて一人旅立つ無人駅
  乗り換え駅で聴いたよ亡父のハーモニカ
  父を探して泣いて歩いたことがある
  忘却の中へは消えぬ八月忌

現代川柳は、ちょっと難かしいですね。
でも、言葉をそぎ落として余韻をふくらまし、読む者に想像を許す作品となっていますね。
それぞれの句に作者自身の個人的想いはあるのでしょうが、受け取り方は読者に任せると。
作者と読者と二人で作り上げるといってもいいような。
中野さんの今回の句にはそんなことを考えさせられました。
ただ、新子さんの句は、作者の血が滴るような作品も多かったような気がします。
それでも発表されてしまえばもう、その解釈は読者の自由ではあるのでしょうけれども。

本号の中で印象深かったのは次の句。
同人の小林康浩さんが「群舞を読む」で評論しておられる、谷本錦泉さんの、
「この国の総理大臣さんなのね」です。

小林さんはこう評しておられる。
《この時事吟はすごい。「 」のせりふのみで一句を成す。今年、原爆忌の平和祈念式典において総理大臣は、被爆国の代表者としてとても不甲斐ない、無感情且つ無味乾燥な式辞を朗読した。それを聞いた多くの国民、そして外国人までが、この、錦泉さんの句の言葉を漏らしたに違いない。そしてこの句は、女性の言葉である。多くの、特に女性を失望させた現実を、総理大臣さんには真面目に考えていただきたい。久々に胸のすく時事吟に出会った。》
わたしも小林さんに同感です。

この本、一冊で大分楽しませてもらえます。



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「半どん」170号

2018-07-28 15:01:20 | 文学
兵庫県芸術文化団体「半どんの会」から、文化雑誌『半どん』170号が届いた。



奥付にある発行日は6月30日となっているから、何かの事情で遅れたのだろう。
先の大雨災害が関係あるのかもしれない。

この号に、俳人の増田まさみさんが拙著『触媒のうた』を取り上げて下さっている。
ありがたいことです。
実に心のこもった評だが、内容はユニーク、というか個性的です。
どちらかといえば、一方面から光を当てての論評。
あれもこれもではなく、焦点を絞っての評なので、読む方はインパクトを受けるだろう。
さすがに俳句をやる人の視点だと感心しました。

←二段階クリックで。



この雑誌には兵庫県の色んなジャンルの芸術家が作品を発表していて、
わたしの知る人も多いのだが、現代詩を一篇紹介しましょう。
渡辺信雄さんの「摩耶」です。

←二段階クリックで。

わたしは勝手にこの詩を、二人の詩人への追悼詩だと思っている。
”傾斜の急な坂道を 駆け降りてきた”のは、T・Tさんではないだろうか?
また”白髪の老人”はI・Sさんではないだろうか?
最期の(西日が眩しすぎるじゃないか)が印象的です。
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「六甲」7月号

2018-07-03 16:20:27 | 文学
短歌誌『六甲』7月号が届いた。



巻頭のページ。
←クリック。 

石原智秋さんの作品が面白い。
わたしのような門外漢にもよく解る。

そしてベテランのお二人。

牧野秀子さんと田岡弘子さんです。
牧野さんの、「公園のベンチに数ある傷跡は座りし人らの記憶のような」が印象的です。
そして田岡さんの「為すことのありつつ何も成せざりし一日短し一生短し」が身につまされます。

今号の「湯気の向こうから」は「こころ屈したときは」と題して書かせていただきました。





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稲垣足穂のこと

2018-05-30 14:33:14 | 文学
もう三日も前の新聞記事です。
←二段階クリックで。
日曜日の神戸新聞「本」欄。
日曜日は朝早くからバスツアーに出かけたので新聞をちゃんと読めていませんでした。
この記事、稲垣足穂のことをフランス文学者で作家の鈴木創士さんが書いておられる。
「足穂の天文学への憧憬」と題して。
で、わたし「オッ」と思ったのでした。
というのも、半年ほど前の拙ブログに、それに関連する記事をアップしたのでした。
「『星の學者』稲垣足穂」と題して。
そして、『KOBECCO』3月号にも「星の學者」と題してエッセイを書かせていただいています。
『星の學者』は、足穂の詩作品とは趣が大いに違い、いたってまともな本でした。
詩作品には大きな飛躍がありますけどね。
この本は天文学のことが正統的に書いてあります。
で、新聞記事だが、『星の學者』のことには触れておられない。
当然ご存知なのだろうけど、ちょっと気になります。
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「瓦版 なまず」

2018-05-19 15:48:54 | 文学
古いファイルを触っていたら、こんなのが出てきました。
「瓦版 なまず」(2006年10月7日・通巻20号)。
季村敏夫さんが発行する冊子だが、これは宮崎翁から送られたもの。だからわたしはその時、宮崎翁の記事だけを読んだのだと思う。
この度、寄稿者名を見て、「ああ、そうだったのか」と今更に思った。
杉山平一、林哲夫、安水稔和、そしてその当時は存じ上げなかった、扉野良人さんの名が。
ということで読ませていただきました。
杉山先生の探偵小説に関する話、興味深いものがありました。
林さんについても、そのころはお名前だけを知る程度の人でしたが、「久保田さんの笑顔」は感動的でした。
そして、扉野さんの「街の律動を捉えて 編集グループ(SURE)のこと」というのもしみじみと良かった。
わたしの古いファイルには思わぬものが入っているので油断がならない。
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長吉の奥様の述懐。

2018-05-18 22:35:10 | 文学
今日の夕刊、随想欄。

車谷長吉さんの奥様、高橋順子さんの随想です。神戸新聞社さん、高橋順子さん、記事拝借お許しを。

この中の次の言葉に注目。
《モデルにした人たちの心に血を流させた、と述懐していたが、…》
前回の随想にもこれと同じようなことを書いておられたが。
そして終わりに、
《忌み嫌われる一方で敬愛される車谷文学であるが、読みつがれていくことを私は祈っている。》
とある。
もしかしたら、モデルとしてひどいことを書かれた人は、その小説のことを
「読まれたくない」と思っておられるかもしれないのでは?とわたしは思ってしまうのだが…。
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「六甲」2018年5月号

2018-05-08 09:25:10 | 文学
短歌誌「六甲」5月号の巻頭歌。

今号のトップは石原智秋さん。
なんと庶民的な歌でしょうか!
だれでも作れそう。
身近に感じられて楽しいです。
でもいざとなればそうではないんでしょうね。

「湯気の向こうから」は「竹有上下節」です。
ついでにお読み頂ければ幸いです。
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車谷長吉のお詫びの仕方。

2018-05-01 16:31:03 | 文学
今日の神戸新聞夕刊の随想欄に車谷長吉さんの奥様、高橋順子さんが「お遍路」と題して書いておられます。
神戸新聞さん、記事拝借させて下さいね。



この中のこの言葉に「ほほう?」と思いました。

《車谷は小説のモデルにした人たちを傷つけたそのお詫びをしたいと言って、ついてきてくれたのである。》

わたしのある知人も、彼と同級生ということで知らぬ間にモデルにされていたということをお聞きしたことがある。

その人とわかる書き方だったのだと。しかもひどい登場のさせ方で書かれていたとのことだった。

しかもしかも、わたし今日、探し物をしていて、車谷のその本『鹽壺の匙』を触ったところだった。

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『こころ』の、このページ

2018-04-27 17:27:42 | 文学
先日来読んできた『こころ』(夏目漱石)ですが、読み終えました。


もう50年ぶりぐらいになるのでしょうか、この小説を読むのは。
正直言って、昔に読んだときは精読してはいませんでした。
恥ずかしいことですが、全く内容を覚えてはいないのです。

実は、あるページを探して読んでいました。このページです。

←二段階クリックで。
ある人からの教示で、へ~っ?と思ったことがあったのです。
夏目漱石はやはりスゴイ作家だということの証明のような場面。
《この間の晩と同じくらい開いています。けれどもこの間のように、Kの黒い姿はそこには立っていません。》
小説の終わりの方の場面ですが、この場面を発見して、わたしも”漱石はスゴイ“と思いました。
この一行について漱石は小説の中で、何一つ説明してません。それがスゴイ。
ここで種明かしするのは遠慮しておきましょう。
とは言っても、漱石に詳しい人にとっては周知の事実なのでしょう。
わたしが浅学なだけ?お恥ずかしい。
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大下宇陀児

2018-04-05 11:15:31 | 文学
sumusさんのブログを見ていたら大下宇陀児について書かれていた。
なかなか面白そうな作家さんなんですね。
宇陀児ならわたし、直筆ハガキを所持しています。

昭和29年4月8日、落合・長崎の消印。
「山河不崩 〇〇不忘」
〇〇のところがわたしにはわかりません。

sumusさん紹介の本、気になります。しかし200部限定ということですが、ちょっとお値段が。

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フランスから!

2018-03-20 11:36:12 | 文学
2年前の拙ブログにコメントが入り、その資料を詳しく見たいとのこと。
これまでも、拙ブログにはちょこちょこ資料入手依頼が入り、遠くは北海道や九州などへコピーを郵送したこともありました。ところが今回はなんと海外からでした。これは初めてのことでした。メールアドレスを知らせて下さったので、スキャンして画像をお送りすることに。
アドレス末尾が「FR」でした。ということはフランスですね。へ~?フランスから!
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訂正記事が

2018-02-15 14:56:14 | 文学
昨日の随想欄の疑問の件ですが、
きょうの夕刊に訂正記事が出ました。

「島帰る、とは春の季語」というのに悩まされて、穿った読み方もしたのですが、
誤記、あるいは誤植だったということであれば、な~んだ、という感じ。
でも「鳥帰る」だったとしても少しは政治的な匂いがしますね。
「本籍は基地の中なり 鳥帰る」
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教えてください。

2018-02-14 17:48:56 | 文学
俳句をやっておられる方、教えてください。
今日の神戸新聞夕刊の随想欄です。
←クリック。

この中に 「本籍は基地の中なり 島帰る」百合子
という俳句が紹介されています。
わたしはこの句、ちょっと意味深やなあと思ったのですが。
しかし、そのあとに、
「島帰る、とは春の季語」と。
その説明、
「越冬した鳥が北方へ帰っていく風景。」とあります。
あら、素っ気ない。
そうか、単に基地の島で生まれた鳥が北へ行く風景なのか。
いやしかし、文の後半を読めば、やはり政治の匂いを感じてもいいのかと思ったり。
わたしの穿ちすぎなのでしょうか?
 なんか変なんですが。
コメント (2)
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「六甲」もう少し

2018-02-05 08:18:00 | 文学
昨日紹介した「六甲」2月号からもう少し。

巻頭のページです。

なんとも庶民的でいいですねえ。
岡田笑子さんの巻頭の歌、「古新聞たたみ重ねて片膝に押さへて括る世界のニュース」
思わずニンマリしてしまいます。

石原智秋さんの「縁石に足を取られてふらつきぬ大丈夫ですかと学生の声」
わたしのことかと思わせられます。

仲井清澄さんの「リハビリと妻の肩揉む左手は痺れておりてリズムは狂う」
これ家内に読んでやりました。すると、「お父さんみたい」と。
そう、わたしも家内の肩を揉んでやる時があるのですが、「もう手が痺れてきた」と早々にやめてしまうのです。
ただ、仲井さんのは次のページにこんなのがあります。
「毎日を麻痺ある足で散歩する発病三年悩みの続く」
仲井さん、どうかお大事に。

他の何人かの歌も紹介しましょう。

中西浩さん 「仏壇に般若心経妻唱ふ我も並びて口動かすのみ」
ほほえましい情景。氏の歌もう一首。「血圧を測れば高き朝もあり二度目測れば少し下がれる」
なんとも実感があります。

勝山蓉さん 「小鳥たちにと三つ残した柿の実を二羽の鴉が交互に食べる」
これは「木守り柿」のことですね。

奥田充子さん 「そのことを思ひ出すのよと話されしお顔のさりげなさ美しかりき」
前後の歌から判断して、亡き師の葬儀での歌であるらしい。

岩本倭子さん 「一ねんせいにひらがなのへんじかいてみた元気のかんじよめるだろうか」
お孫さんのこと。共感します。

松本智行さん 「並んでる玩具の全てほしいけどトミカのくるま一台を決める」
童心ですねえ。しかしこんな歌が。「このごろは肥って来たと言われおり七十キロでメーター止まれ」

ほかにもいっぱいおもしろいのがありますが、今号はこれで…。
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「六甲」2018年2月号

2018-02-04 09:28:42 | 文学
戦前から続く短歌誌「六甲」2月号です。
いい表紙ですね。吉見敏治さんの絵です。このほど吉見さんの震災記録画が4点、兵庫県立美術館に収蔵されたとのことです。

牧野秀子さんの作品。
  冬の池に白き花花ひらきしと見れば白鷺ゆらりと歩む
 清々しい情景描写。いかにも牧野さんの短歌です。

志方弘子さんの作品。
  何するも億劫になり茫と居り池に舞う銀杏の葉を拾うさえ
 情景に合わせての心情吐露の歌でしょうか。

田岡弘子さんの作品。
  塀越えて散れる桜のもみぢ葉のアート眺めて今日の散歩す
  加えきし齢のほどと思ふべく満身創痍いえ慢心創痍

 自らを客観視して、ユーモアがあります。

上記、お三人の歌がわたしはいつも気になります。

鈴木漠さんの「翻訳詩逍遥」(27)は、わたしには少々難しいですけど、読めば勉強になります。

そして「湯気の向こうから」
「しんとろり」と題して書かせていただきました。
文中の砕花翁の色紙(マッチのラベル)はこれです。



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