姫路の森本穫さんからお送り頂いた『文芸日女道』642号の「畦道」(藤代美沙子)という短編小説が良かった。
作者、藤代さんのほかの作品も読んでみたくなり、その作品集を入手した。
『麻衣子の小指』(2011年・北星社刊)。
帯文を森本穫さんが書いておられる。
《人間の哀しさ、切なさを描いた、珠玉の作品集》
「作風は、一貫して、揺るがない。私たち読者は、藤代作品を読みながら、私たちの生きているこの世界が、結局は人間と人間との情愛によって成り立っており、それ以外の要素は所詮、どうでもよいことなのだと思い知らされる。」
短編が18作収められている。今は他に読まねばならない本が何冊もあるので全部は読めないが、冒頭の「腕」だけを読んでみた。
これは多分私小説だと思うが、わたしの人生の一部とも重なって思えて、身につまされるところがあった。
人の心の綾が静かな筆致で描かれていて感動するしかない。
あとの作品も読みたいが、今は辛抱。
因みに、巻末に解説があり、三人が書いておられる。
あら、そのお三人ともわたしの知った人。驚きました。
森本穫さん、高橋夏男さん、そして市川宏三さん。
市川さんはすでにお亡くなりになっているが、その昔、拙著、詩集
『コーヒーカップの耳』を絶賛してくださった人。
そのお便りは今も所蔵しているが、便せん何枚もに詳しく感想を書いてくださっていて感激したのだった。
高橋夏男さんは、言わずと知れた加古川の詩人であり評伝作家。「輪」へも何度かご来店いただいたことがある人。
ということで、この『麻衣子の小指』はわたしにとって縁の深い本なのだ。
ただし、作者の藤代さんのことは全く知りません。