日本クラリネット協会コンクール本選。
本選前のお昼休みには、1次・2次に参加した方々へワンポイントアドバイスを行いました。
平日にもかかわらず、多くの若いクラリネット奏者がアドバイスを求めて来てくれたこと、そして本選の演奏にも真剣に耳を傾けていた姿に、日本のクラリネットの未来の明るさを感じました。
でも全員じゃないよね?受験したなら今日も空いている筈だが。
本選に残った5人のモーツァルト。皆さん、今回の演奏のためにたくさん準備を重ねてきたことと思います。結果は1位なしの2位、3位、入選でしたが、この経験が次につながる大きな糧になることを願っています。
僕が学生の頃、山本正治先生に何度も教わったモーツァルト演奏の心得。
モーツァルトはスケールやアルペジオ等テクニックは途中から速くなったり好き勝手に吹かない事、テクニックを見せる事は揺るがない正確なtempoでしっかり吹けること。
モーツァルトのメロディーは色んなモーツァルトの作品をいっぱい聴いてそのスタイルを肌で感じる事。
その区別なしではオケは入れないぞ、と良く言われ鍛えていただきました。
今、若い学生のモーツァルトの演奏を聴いていると、全体的にとても速いです。でも、“Allegro”の本来のイタリア語の意味は「陽気な」「明るい」。単に「速く」や「急いで」ではありません。
これはドイツでも同じで、学生が速く吹いてしまうと、先生たちが「これはAllegroだ、Prestoじゃない」と注意します。
ドイツ留学中はメトロノームのテンポを体に染み込ませるように反復練習していました。寝ても覚めても、ひたすらそのテンポで練習した感じです。
確かに、速く吹いた方が息は楽。でも、モーツァルトの他の作品のAllegroのテンポを思い出すと、自然と問い直したくなります。
「他のモーツァルトの作品もたくさん聴きなさい」あのとき正治先生が言っていたその意味が、今になってより一層わかります。
審査員は皆オーケストラの現場で活躍している人達です。なので聴く耳は“オケのオーディション”の視点。ピアノ伴奏なら柔軟に合わせてくれても、何十人もいるオーケストラではそうはいきません。
モーツァルトのクラリネット協奏曲は、クラリネットのソロ曲であると同時に、オーケストラとアンサンブルする作品でもあります。バックの弦や管と一緒に音楽をつくる感覚が必要なのです。
世界中の名だたるオーケストラがモーツァルトの交響曲やピアノ協奏曲を好き勝手に速くしたり奇をてらうような演奏があるだろうか?
日本人のプレイヤーは国際的に見て個性が無さすぎる、みんな同じ演奏に聴こえる等、散々に言われているので何とか個性を出そうとそういう風に解釈してしまうのも仕方がない。
モーツァルト音楽の本質を理解し、楽譜(音符)の向こう側を覗けば個性(違う世界)が生まれてくるものだと思う。
果たして今日の演奏の中で、何人がプロオケのオーディションを通過できるだろうか?
いや、もしかしたらそもそもオケを望んでもないのかも、オケマンだけがクラリネットの生きる道でもないし...でも会場にこれだけのクラ吹きが聴いていたら緊張して舞い上がって暗譜も飛びそうだし、そりゃ速くもなるわなぁ〜自分が学生の頃もそうだったわ、と帰りの新幹線の中、演奏の一つひとつを思い返しながら、いろんなことを考えさせられた一日でした。