初心者のクラシック

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弦楽五重奏曲第4番

2008年11月28日 | モーツァルト
たまには、クラシック音楽を聴いてみてはいかがですか?

今日はモーツァルト:弦楽五重奏曲第4番です。

“弦楽五重奏”と言うと一般的にはあんまり耳慣れない編成ですが、ヴァイオリン2台、ヴィオラ1台、チェロ1台のいわゆる“弦楽四重奏”にヴィオラをもう1台加えた編成が一般的な“弦楽五重奏”と言われています。

そして今回の弦楽五重奏も編成としてはスタンダードなものになっています。この第4番は、作品番号からしても「弦楽五重奏第3番」とほぼ同じ時期に作曲されていますが、「第3番」がとても明るくハツラツとしているのに対して、やや暗く悲しい響きのある作品です。しかし、後半(第4楽章)に入るとモーツァルトの持前の明るさが際立つ作品になっていますから、最後までじっくりと味わえる一曲だと思います。


 第1楽章:物哀しいヴァイオリンの響きが寒々しく響くと、小刻みなリズムは震える
 ようにも感じてしまいます。
 淡々と響くリズムに、つれないメロディが何故か悲しく響いてきます。時折その後を
 追うチェロのフレーズもどこか寂しく響きます。
 ヴァイオリンの響きが徐々に高くなるにつれて、どうにも息苦しく迫るものを感じます。
 そして、その後に低音からじんわりと響くチェロも一層その雰囲気を深くしていきます。
 たまに明るく響くフレーズも全体の雰囲気のせいか、どうもその切なさだけを浮き彫り
 にさせるだけのように虚しく感じてしまいます。
 後を引くように未練を感じるような、どうにも切ない曲調が続き、最後も拭いきれない
 不安を抱えながらそれを、なんとかして振り切るような

 第2楽章:もどかしいフレーズのヴァイオリンの響きに、その他の弦楽器がザックリと
 刻んでいきます。
 断ち切れぬ想いを何度も振り返るようなヴァイオリンのメロディはが、とても切なく
 か細い音色に聴こえてきます。
 しかし、中盤ではようやくその想いを振りきったように、少し穏やかな表情に変わる
 ヴァイオリンは、とても温かくやわらかな響きを聴かせてくれます。
 ヴィオラ・チェロも穏やかなハーモニーでそれを包み、ゆっくりと落ち着いた響きで
 ゆったりと聴かせてくれますが、
 やはり最初のフレーズに戻り、悩ましげな表情が現れると、とても複雑な心境を
 感じさせられてしまいます。

 第3楽章:悩んだ末に疲れ果てたように、ひっそりと、じわじわ聴かせる弦楽器。
 体の力が抜けて、ぐったりと倒れ込んでしまうようなフレーズに、
 ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロがそれぞれ、ゆるやかに響いていきます。
 うっすらと灯る明かりの中で静かに目をつむって、瞑想でもするように静かな
 メロディが流れます。
 しかし、目をつむっても悲しい想いは消えず、どうしても切ない気持だけが浮かび
 あがってくるようです。
 そして、その消せない想いがよぎるまま、ふっと、やわらかなメロディが流れると
 何故か目頭に熱いものがこみ上げてくるように、それまこらえていたものが頬を
 伝って流れだしていくように、静かに響いていきます。
 そしてそのまま、ゆっくりとそれまでの出来事を思い出すように続いていきます。
 悲しい思い出を、どうにか笑って話せるように考えを巡らせているかのようです。
 どうにか明るい考えにしようと必死に努力しているようなフレーズが続き
 希望を見つけるようにやさしいメロディを響かせ、最後はどうにかゆっくりと
 落ち着いて穏やかに終わります。 
 
 第4楽章:ポツンと低く呟くようなチェロの※ピチカートは、深々と静かに降り積もる
 雪のようにも感じます。全体的に低い伴奏の中に、ひとつだけ高く響くヴァイオリンの
 メロディが悲壮感たっぷりに空を見上げるように響くと、そのえも言われぬ悲しみが
 伝わってくるようです。
 そして、しばらくすると、急に曲調が変わりヴァイオリンは跳ねるように明るい
 メロディに変わります。
 それまでの暗く思い悩んでいた事がまるで嘘だったかのように明るいメロディが
 はしゃぐように舞いあがっているようです。
 伴奏もいつの間にか明るい雰囲気に変わり、白銀の世界には明るい太陽が照りつけて
 その積もった雪をキラキラと輝かせるように明るく楽しいリズムにまるでスキップ
 でもしているかのように、ゆかいにはしゃぎます。
 伸びやかなリズムに変わると、とても晴れやかなフレーズが楽しく響いてゆきます。
 それまでの暗く沈んでいた時間を取り戻そうとするかのように明るく、華やかな
 音色が広がっていきます。


モーツァルトにしては珍しく短調の作品で、始まりも悲しく叫ぶような悲痛な曲に感じてしまいますが、聴きどころは第3楽章で突然、緊張感が切れたかのように温かくじんわりと響きを聴かせるところが、なんとも味のある一曲になっていると思います。
第4楽章ではまた暗さが戻ったのかと思いきや、明るくはちきれんばかりの曲調がなんとも変化に富んだ作品ですが、その前後の変わり目や前半と後半の対照的な内容が、これまたグッとくる曲の内容なのかもしれません。

≪この曲のCD≫
モ-ツァルト/弦楽五重奏曲全集 III
ウィーン弦楽五重奏団
カメラータ・トウキョウ

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一応アマゾンではコレしか探せませんでしたが、実際に持っている録音は
グリラー弦楽四重奏団とVlaウィリアム・プリムローズの演奏で聴きました。


【コレってどんな曲】
喜:☆★★★★
怒:☆☆☆★★
哀:☆☆☆☆★
楽:☆☆★★★

≪おすすめシチュエーション≫
じんわりと聴ける一曲です。


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