ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

『肺がん遺伝子』発見=自治医科大学

2008年02月19日 | 癌、腫瘍
 ヘビースモーカーに多いタイプの肺がんの遺伝子を、自治医科大学の間野博行教授のグループが発見した。見つかったがん遺伝子は急速に増殖する悪性のものだが、治療薬の有力候補も見つかっている。間野教授らは、患者の喀痰(かくたん)から高感度にがん細胞を見つける診断方法もあわせて開発しており、早期の実用化が期待されている。 (引野肇)

 見つかったがん遺伝子「EML4-ALK」は、六十二歳の男性がん患者の組織から見つかった。これは、肺だけに特異的に発生するがん遺伝子で、これまでの解析方法では見つからない。間野教授らは、レトロウイルスを使って肺がん内の遺伝子を他の細胞・臓器でも発現させる方法を開発。このウイルスをマウスの皮膚から取った線維芽細胞に感染させたところ活発に増殖し、中央部がもっこりと盛り上がった。さらにこの細胞をマウスに移植すると、皮下に大きな腫瘍(しゅよう)を形成した。

 この試験方法を使えば、これまで発見が難しかった、臓器に特異的に発現する他のがん遺伝子も多数見つけ出すことができそうだ。間野教授は「私たちは現在、肺がんだけでなく他のさまざまながん腫についても、がん遺伝子を探す研究を進めている」という。

 自治医大関連病院の肺がん患者七十七人を調べたところ、五人からEML4-ALKが見つかった。「肺がんの7%から10%がこのタイプのがんではないか」と間野教授はみている。

 EML4-ALKを詳細に分析したところ、細胞外からの刺激を受けて細胞の増殖を指令する受容体型チロシンキナーゼの遺伝子「ALK」の半分と、まだ役割が分かっていない遺伝子「EML4」の半分が結合した「融合型のがん遺伝子」であることがわかった。

 ALKもEML4も正常な遺伝子だが、何かの拍子に両遺伝子の半分ずつが融合すると、本来、特定の外部刺激がある時だけ増殖の指令を出すALKが、常時休みなく指令を出すようになるらしい。同じような融合型のがん遺伝子として、ALKとNPMという遺伝子同士が融合し、悪性リンパ腫を起こす例がある。

 治療薬としてはまず、ALKの働きを止めるALK阻害剤が考えられる。試験管レベルでは、これが細胞のがん化を食い止めることが確認されている。マウスの実験では、体内のALKの働きを薬剤で止めても、生命に別条ないことが確認された。このタイプの肺がんは早期発見が難しく、有効な治療薬もほとんどないため、ALK阻害剤の実用化が期待されているのだ。

 治療薬以上に注目されるのが、診断方法だ。喀痰などにEML4-ALKがあるかどうかは、遺伝子を急速に増やすPCR(合成酵素連鎖反応)解析を使えば、簡単に分かる。間野教授は「喀痰一ccの中にがん細胞がたった十個しかなくても診断可能で、きわめて高感度な肺がん分子診断法となる。二〇〇九年までには診断サービスを開始したい」という。

[東京新聞 / 2008年02月19日]
http://www.tokyo-np.co.jp/article/technology/science/CK2008021902088727.html


最新の画像もっと見る