ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

「タミフル」脳への移動、追跡に成功、世界初=放射線医学総合研究所

2007年12月12日 | 医療技術
 放射線医学総合研究所(千葉市)は11日、インフルエンザ治療薬「タミフル」が体内に吸収された後、脳などにどのように移動するかを連続的に観察できる方法を開発したと発表した。

 タミフルの生体内の動きを追跡できたのは世界で初めて。実験にはラットを使った。

 タミフルを服用した若者や幼児の異常行動が報告されている。人間に応用できれば、因果関係の有無を解明する有力な手段になると期待される。

 放医研は、タミフルの分子に放射性物質を付けた薬剤を開発。この薬剤をラット5匹に与え、陽電子放射断層撮影(PET)装置で観察したところ、体内のタミフルの動きをとらえることができた。脳には、20分後に投与量の0・15%が入りこむこともわかった。

 従来は、大量のタミフルを与えたラットを解剖して調べていた。PETは感度が高く、通常の服用量で生きたまま調べられるため、より正確な分析ができるという。

[読売新聞 / 2007年12月11日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071211i514.htm

【タミフルが脳に達する仕組み解明…国内2研究グループ】 [読売新聞 2007年10月31日]

万能細胞、肝臓や胃の細胞からも、山中教授ら成功=京都大学

2007年12月11日 | 再生医療
 皮膚の細胞からだけでなく、肝臓や胃の粘膜の細胞からiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作ることに、京都大再生医科学研究所の山中伸弥教授と大学院生の青井貴之さんらがマウスを使って成功した。11日、横浜市で開かれた日本分子生物学会で発表した。同研究室が手法を開発したiPS細胞は、これまで皮膚や骨髄系の細胞からしか作製されていなかった。

 青井さんらは、大人のマウスの肝臓や胃の粘膜の細胞に四つの遺伝子を導入してiPS細胞を作製。さまざまな組織の細胞への分化能力が、受精卵から作る万能細胞の代表格である胚(はい)性幹細胞(ES細胞)と同等であることを確認した。さらに、全身が肝臓や胃の粘膜由来のiPS細胞からできたマウスも誕生し、体内でも全身の細胞に分化できることが裏付けられた。

[朝日新聞 / 2007年12月11日]
http://www.asahi.com/science/update/1211/TKY200712110365.html

木の抗菌物質を作る酵素解明=京都大学

2007年12月11日 | 蛋白質
 スギやヒノキなど針葉樹の色のついた心材に蓄積している抗菌成分ヒノキレジノールを作る酵素を、京都大生存圏研究所の梅澤俊明教授(樹木代謝機能化学)らのグループが突き止めた。

 立体構造が違うヒノキレジノールを作り分けることもでき、これまで知られていなかった植物の機構の一端が明らかになった。米国科学アカデミー紀要で11日、発表する。

 ヒノキレジノールはスギなどのほか、化学式は同じだが立体構造の違う幾何異性体のヒノキレジノールがアスパラガスにもある。梅澤教授はアスパラガスからヒノキレジノールを作る酵素を構成する2種類のタンパク質(α、β)を発見し、タンパク質を作る遺伝子を特定した。遺伝子を働かせて耐久性の高い木材にしたり、逆に働きを抑えることで心材の色を抑えたりすることが期待できるという。

 この酵素はαとβが結びついたペアの構造で働いているが、αかβどちらか1種類だけのペアだとスギなどと同じ構造のヒノキレジノールを作ることも分かった。「タンパク質の組み合わせを変えるだけで幾何異性体ができるのはこれまで知られていない現象。それぞれが特定の幾何異性体だけを作っている理由は分からないが、興味深い機構だ」(梅澤教授)という。

[京都新聞電子版 / 2007年12月11日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007121100100&genre=G1&area=K10

鏡の中:左右逆転の謎 古くはプラトンを悩ませ 今も熱い論争(毎日新聞コラム)

2007年12月09日 | 心のしくみ
◇物理で説明か、心理かかわるか

 鏡の前で右手を上げると、鏡の中の私は左手を上げているように見える。なぜ鏡の中では左右が反対なのか。この問いかけは、古くはギリシャの哲学者、プラトンが考えたと言われるほど長い歴史を持つ。現在も認知心理学と物理学の両分野で、国際的な議論が続いている。今年11月、「鏡像問題に決着をつけた」とする認知心理学者の論文が発表されると、物理学者が批判するなど熱い論争が続く。鏡像の謎に迫った。【関東晋慈】

 ◇実証実験で論文

 東京大の高野陽太郎教授(認知心理学)らは11月、英国の心理学専門誌に実証実験に基づく鏡像問題の論文を発表した。102人の学生が協力。この分野では過去にない仮説検証実験だった。

 論文で分析した二つの主な実験は、自分自身と文字を鏡に映し、左右、上下に逆転しているかどうかを問う内容だ。

 まず、自分の姿については、「逆転している」と答えた学生は67人(65・7%)、「逆転していない」と答えた学生は34人(33・3%)だった。高野教授は「3割以上もの人が鏡に映る自分が逆転しないと感じている。鏡像問題は逆転していることが問題の前提だったが、歴史の中で初めて示した事実」と話す。

 この現象を説明するのが視点の転換という。鏡の中の自分の視点から、判断した人は逆転して見え、置き換えなかった人は逆転しないという。

 文字の逆転の実験では、最初にアルファベットの「F」を鏡に映した。102人全員が左右逆転していると答えた。次に、ロシア語のアルファベットであるキリル文字の「ユ」で実験した。52人のうちロシア語を学んだことがない学生45人では、「逆転」と「逆転していない」が同数の16人(35・6%)、「分からない」も13人(28・9%)とばらつきが出た。一方、ロシア語を学んだことがある学生7人は全員が逆転していると答えた。これは、記憶の文字と鏡像が逆になることで生じた結果だという。

 高野教授は逆転する理由について、(1)鏡に映った人の視点から左右を判断する(2)記憶と逆に見える--という二つを挙げている。「理由が複数あるという点が、他の研究者の理論と大きく違うところ」と話し、「鏡像問題は、人間にとって、どう見えるかという問題だ」と主張する。

 ◇問題の起源は

 鏡像問題は「なぜ左右が逆になるのか」という疑問から始まった。だが設問自体があいまいだったことと、物理的説明と視覚による認知という心理的要素の混在で、明快な仮説はごく近年まで提唱されなかった。

 例えば、ノーベル物理学賞を受賞した米国のファインマン(1918~88)は大学生時代に鏡像問題を考えたことが伝記に残っている。日本の朝永振一郎は随筆の中で、ファインマンによく似た説明として「鏡の後ろに回って立つ自分を想定して比較してみる」などと記しているが、最後は「何かもっと一刀両断、ずばりとした説明があるのか、読者諸兄に教えていただきたい」と結論には至っていない。

 国際的には英国や米国、ニュージーランドの心理、物理、さらに哲学者がさまざまな仮説を提唱している。文字を鏡に映すために、ぐるりと回して鏡に向ける時に左右が反対になるとする「回転説」や、逆転している方向を「左右」と見なすのが習わしだという「言語習慣説」まである。

 ◇批判論を準備中

 鏡像問題について国際的に論文発表をしているのは高野教授らのグループのほかに、物理学の分野で多幡達夫・大阪府立大名誉教授(放射線物理学)のグループがある。多幡名誉教授は「鏡像の左右逆転、非逆転の根本的な理由に、心理は本質的なかかわりを持たない」と訴える。物理的要因が心理的プロセスに先立つ原理だという立場で、高野教授の理論を批判する論文を準備中だ。

 多幡名誉教授によると、非対称なものの鏡像は実物と比べ、上下・前後・左右の三つの軸のうち一つの軸が逆になる。鏡に人を映した場合、人の体が外見上ほぼ左右対称なため、上下・前後の軸を決めた後に左右が決まることになる。鏡像を、実物とは違う鏡像固有の座標系で考えると、左右が逆転する。多幡名誉教授は「逆転が起きないのは、実物と鏡像で同じ座標系を使っているから。例えば、右手を上げた場合、鏡像も右側の手を上げている」と説明する。

 多幡名誉教授は「鏡像問題は、物理的に説明できるという考え方と心理がかかわっているという考え方が争ってきた。物理的理解をしっかり踏まえた上で、心理的研究をさらに進めるならば、今後の鏡像問題研究はますます興味深くなると思う」と話している。

[毎日新聞 / 2007年12月09日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20071209ddm016040025000c.html

子どもの歯で再生医療 学内に研究拠点=名古屋大学

2007年12月07日 | 再生医療
 名古屋大は6日、乳歯から骨や神経など様々な細胞に分化する能力を持つ「幹細胞」を取り出し、再生医療に役立てる研究をするため、学内に「乳歯幹細胞研究バンク」を設立したと発表した。

 乳歯は同大付属病院など6病院から提供を受け、数年で1万個程度の幹細胞を収集、研究データを集めて臨床応用を目指す。同大によると、大学などの公的機関に乳歯の幹細胞バンクを設置するのは世界初。

 バンクを設立したのは、医学系研究科の上田実教授らのグループ。提供された乳歯や親知らずから、幹細胞を採取して培養。超低温で保存して研究する。幹細胞を使った再生医療では、骨髄や臍帯血(さいたいけつ)があるが、乳歯の幹細胞はこれらに比べて、細胞の増殖能力が高く、採取が簡単なことから、実用化に期待が集まりそうだ。

 上田教授らは子犬の歯から取り出した幹細胞で親犬のあごの骨を再生できることをすでに確認しており、近親者の再生医療に使える可能性もあるという。上田教授らは犬の実験例を重ねて研究成果を発表したうえで、厚生労働省や学内の倫理委員会の審査を経て、人の臨床実験を実施したいとしている。上田教授は「これまで捨てられていた歯が有効活用できるうえ、受精卵からつくられる胚(はい)性幹細胞(ES細胞)に比べ、倫理的な問題も少ない。将来的には、孫の乳歯で祖父母の骨粗しょう症による骨折や傷跡などを治療できる可能性がある」と話している。

[読売新聞 / 2007年12月07日]
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20071207-OYT8T00085.htm

iPS細胞:米研究チーム、マウスで貧血症治療に成功

2007年12月07日 | 再生医療
 貧血症のマウスの皮膚細胞から作った万能細胞「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を使い、貧血症を治療することに、米国の研究チームが成功した。6日の米科学誌「サイエンス」電子版に発表した。iPS細胞を使い、動物の病気の治療に成功したのは世界で初めて。すでに京都大などのチームがヒトの皮膚細胞からiPS細胞を作ることに成功しており、再生医療の実現へまた一歩前進したといえる。

 米マサチューセッツ工科大などの研究チームは、遺伝性の重度の貧血「鎌(かま)状赤血球貧血症」のマウスの尾から皮膚細胞を採取。京都大のチームと同じ四つの遺伝子を導入して、さまざまな細胞に分化する能力のあるiPS細胞を作った。四つの遺伝子のうち一つはがん遺伝子だったが、ウイルスを使って特殊な酵素をiPS細胞に導入し、この遺伝子を取り除いた。

 次に、iPS細胞の中にある貧血の原因遺伝子を健康な遺伝子に組み換え、赤血球や白血球など血液のさまざまな細胞を作り出す元となる造血幹細胞に分化させた。

 この造血幹細胞を、細胞を採取したマウス3匹の尾の静脈に注射したところ、体内で健康な血液を作り始め、約3カ月後には血液中の成分が大幅にで改善した。

 研究チームは「さまざまな細胞に分化できる能力を持たせるための遺伝子の導入や、iPS細胞になってからの遺伝子組み換えなどは、がんを含む副作用を引き起こす可能性がある。ヒトに応用するには、これらの問題を解決し、安全な方法を開発する必要がある」としている。

 ヒトiPS細胞の作成に成功した山中伸弥・京都大教授は「iPS細胞を患者自身の細胞から作り、遺伝子の異常を修復し、必要な細胞を分化させ、同じ患者に戻して治療するという、理想とする治療が実現できることを、マウスを使って示した重要な研究だ」と話している。【須田桃子】

[毎日新聞 / 2007年12月07日]
http://mainichi.jp/select/world/america/news/20071207k0000m040175000c.html

【人間の皮膚から万能細胞、再生医療へ前進=京都大学】 (11月20日)
http://blog.goo.ne.jp/cinogi/e/39f4bab4f70c921788dedb822692eb25

子どものせき止め、はちみつが効果=ペンシルバニア州立大学

2007年12月05日 | 食品・栄養
 子どものせき止めには市販薬より、はちみつを飲ませる民間療法の方が安全で効果的――。米ペンシルベニア州立大の研究チームが4日、医学誌にこうした調査結果を発表した。

 同大は風邪を引いた2~18歳の子ども100人以上を対象に調査。ソバはちみつ、せき止め薬、ダミーの服用剤の3種類を就寝前に服用してもらい、効果を見た。

 その結果、はちみつを飲用後、せきの頻度が減ったとの回答が最も多かった。はちみつに含有する抗酸化物質がせき止めにつながった可能性がある。ただ、1歳未満の乳児はボツリヌス中毒の恐れがあるため、はちみつを控えた方がいいという。

 食品医薬品局は最近、風邪薬には副作用の恐れがあるとして、6歳未満に風邪薬を与えないよう勧告している。(時事)

[朝日新聞 / 20071205]
http://www.asahi.com/science/update/1205/JJT200712050004.html

チンパンジーの子、瞬間記憶力は大学生もかなわない?=京都大学霊長類研究所

2007年12月04日 | 心のしくみ
 チンパンジーの子どもには、ものを見て瞬間的に形や位置を記憶する能力が生まれつき備わっており、大人のチンパンジーや大人のヒトの記憶力を超えているようだ。京都大霊長類研究所の松沢哲郎所長や教務補佐員の井上紗奈さんらの研究で解明された。4日発行の米科学誌「カレントバイオロジー」に掲載された。

 同研究所で00年に生まれた3組の子どもと母親で調べた。子どもが4歳(ヒトでいえば6歳)になると、数字の1から9までの形と順番を、コンピューター画面上で教え始めた。画面上の数字を、順番を間違えずに全部触ることができれば、ごほうびのリンゴを食べられる。母親にも同じことを教えてある。

 その上で、問題をさらに難しくした。画面上に現れた数字を、すぐに白い四角形で置き換えて隠す。記憶を頼りに元の数字の順番どおりに四角形を触ることができれば正解だ。チンパンジーの子どものアユムは0.7秒見るだけで九つの数字の位置をほぼ正確に記憶できた。大学生にも試したが、同じ時間ではだれもできなかった。

 そこで、チンパンジーの3組の母子(大人の平均年齢28歳、子ども5.5歳)と、9人の大学生(平均年齢19歳)の記憶力を比べるために、数字を5個に減らし、数字が見える時間を0.65秒、0.45秒、0.21秒とだんだん短くして実験した。すると、大学生では、0.65秒見せた時の正答率は8割だったが、時間が短くなるにつれて正答率が下がり、0.21秒では4割となった。チンパンジーの大人も正答率が5割から2割へ下がり、同じ傾向だった。

 しかし、チンパンジーの子どもは、時間を短くしても正答率がほぼ8割のままだった。また、この記憶は少なくとも10秒は続いていることが実験から明らかになった。

 松沢所長は「瞬間的にものを見てそのまま記憶する能力がチンパンジーの子どもには備わっている。ヒトでもそういう子どもが、まれにいるという。ヒトの子どもとも比べて、この能力のメカニズムを明らかにしたい」と話している。

[朝日新聞 / 2007年12月04日]
http://www.asahi.com/science/update/1204/OSK200712040012.html

糖尿病合併症:「笑い」に腎症への進行抑える効果=国際科学振興財団

2007年12月03日 | 心のしくみ
腎臓の働きが悪くなる糖尿病合併症の腎症への進行を笑いが抑える可能性があると、国際科学振興財団バイオ研究所(茨城県つくば市)の研究チームが3日、発表した。

 チームは、健常者16人、腎症のない糖尿病患者12人、腎症の糖尿病患者11人の計39人に、吉本興業の協力を得て「ザ・ぼんち」の漫才を40分間観賞してもらい、前後で血液を検査した。

 糖尿病患者は、たんぱく質のプロレニンの血中濃度が高くなることが知られており、腎臓の細胞にある受容体とプロレニンが結合すると腎症が進行する。血中濃度を比べたところ、観賞前では健常者の平均が1リットル当たり32.5ナノ(ナノは10億分の1)グラム、腎症のない患者が同93.4ナノグラム、腎症患者が同196.6ナノグラムだったが、観賞後には、腎症のない患者は同60.4ナノグラムに減り、統計的な差が認められた。腎症患者も同166.7ナノグラムと減る傾向があった。

 また、腎臓以外の血液中にあるプロレニンと結合する受容体の遺伝子の活動を笑いの前後で比べた結果、健常者はほとんど変わらなかったが、糖尿病患者は遺伝子の働きが約1.5倍、活発になった。同研究所の林隆志主任研究員は「笑いで遺伝子が活発になり、血中の余分なプロレニンが受容体と結びつき濃度が下がるのではないか。笑いが糖尿病合併症への進行を抑制することを示唆している」と話す。【石塚孝志】

[毎日新聞 / 2007年12月03日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20071204k0000m040089000c.html

米ぬかで「かゆみ」抑制、抗アレルギー実証=東京大学、東京海洋大学

2007年12月03日 | 食品・栄養
 米ぬかに含まれる成分に、アトピー性皮膚炎などのアレルギーを引き起こす「IgE抗体」にくっつき、炎症作用などを抑える働きがあることを東京大の尾崎博教授、東京海洋大の潮(うしお)秀樹准教授らが突き止めた。天然成分に由来する新しい抗アレルギー薬につながると期待される。

 研究チームは、米ぬか成分のうち、紫外線吸収、抗酸化作用などが報告されていたγ(ガンマ)―オリザノールに注目。研究チームは、この成分が腸などの炎症を抑えることを確認。アレルギーにも効果があるか動物や細胞での実験で調べた。

 その結果、米ぬか成分は、IgE抗体と結びつき、抗アレルギー作用もあることを発見した。アレルギーは、免疫細胞が作るIgE抗体と抗原が、肥満細胞に作用してヒスタミンなどの「かゆみ物質」を血中に放出して、炎症やかゆみを起こす症状。米ぬか成分がIgE抗体と結びつくことで、かゆみ物質の放出が70~80%抑制された。これまでの抗アレルギー薬の抑制効果を上回っているという。さらに、米ぬか成分が肥満細胞以外の免疫の働きを弱め、炎症を抑えることも突き止めた。

 東大と東京海洋大は特許を取得。化粧品などを販売する「ナチュラルサイエンス」と契約を結び、米ぬか成分入りの保湿オイル「バリアオイルAD」を20日に発売する。年間90万トンが廃棄される米ぬかの有効活用としても注目される。

[読売新聞 / 2007年12月03日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071203i106.htm

花粉症やぜんそくに朗報、発症関与の新たんぱく質発見=理化学研究所

2007年12月03日 | 免疫
 花粉症やぜんそくなどのアレルギー疾患の発症に関与する新たなたんぱく質を、理化学研究所の研究チームが発見し、3日の米科学誌「ネイチャー・イミュノロジー」(電子版)に発表した。

 日本人の約3割は何らかのアレルギーに悩まされているとされ、このたんぱく質を制御することで、新たな治療法の開発が期待される。

 アレルギーの症状は、体に入った異物(抗原)に刺激された特定の細胞から「ヒスタミン」という物質が分泌されて起きる。ヒスタミンは、細胞内のカルシウムが多くなると分泌されることが知られているが、カルシウム量がどのような仕組みで制御されているのか、よくわかっていなかった。

 研究チームが発見したのは「STIM1」というたんぱく質。遺伝子操作でSTIM1がないマウスを作り、その細胞を抗原で刺激すると、カルシウムの量が抑えられ、ヒスタミンの分泌量も著しく低下した。

 研究チームは、このたんぱく質が抗原の刺激で細胞表面近くに移動し、外からカルシウムを取り込む関門のような小器官を開く働きをしていると突き止めた。

 一方で、STIM1がないマウスはすぐに死亡し、細胞の生存に重要な役割を果たしていることもわかった。理研の黒崎知博グループディレクターは「新たな治療法の開発には、カルシウムの役割をより細かく突き止める必要がある」と話している。

[読売新聞 / 2007年12月03日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071203i401.htm

がん遺伝子なしで万能細胞作製、応用に一歩=京都大学

2007年12月01日 | 再生医療
 体の細胞から万能細胞(iPS細胞)をつくる際に使う「がん関連遺伝子」なしでも万能細胞をつくることに、京都大・再生医科学研究所の山中伸弥教授らが成功した。この万能細胞をもとに生まれたマウスを育ててもがんにならないことを確認。同じ方法で人の万能細胞もつくったという。同グループは先月、世界で初めての人のiPS細胞づくりを公表したばかりだが、臨床応用に向け課題といわれた安全性の問題を一つ解消したことになる。1日発行の米科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー(電子版)に発表する。

 山中教授らは、皮膚の細胞に四つの遺伝子を組み込み、万能細胞をつくる手法を確立した。ただ、がん発生にかかわるとされる遺伝子c―Mycを含んでいた。この手法でつくった万能細胞をもとに生まれたマウスでは2割に腫瘍(しゅよう)ができた。

 今回、c―Mycを除いた残りの3遺伝子だけを皮膚細胞に入れる実験を実施。培養条件を見直し、新しい万能細胞をつくった。この万能細胞を使って生まれたマウス26匹を100日間育てたが、1匹もがんにならなかった。一方、c―Mycを含む場合では、37匹中6匹にがんができた。

 ただ、今回の手法でも安全性の問題が解決されたわけではない。山中教授は「皮膚の細胞に遺伝子を送り込むのにウイルスを使うので、がんを引き起こす可能性は残っている」と話している。

[朝日新聞 / 2007年12月01日]
http://www.asahi.com/science/update/1130/OSK200711300290.html

大豆に動脈硬化防止効果、とりわけ女性に顕著=厚生労働省、国立がんセンター

2007年12月01日 | 食品・栄養
 大豆をたくさん食べる女性は、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞になりにくいことが、厚生労働省研究班(班長=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)の調査でわかった。

 閉経後の女性で特に顕著で、大豆に含まれるイソフラボンという物質が、女性ホルモンと同様、脳梗塞などの原因となる動脈硬化を防ぐ効果を持つらしい。

 研究班は、40~59歳の男女約4万人を、1990年から13年間追跡。大豆を食べた回数、みそ汁を何杯飲んだかを記録してもらい、イソフラボンの推定摂取量を計算。多い順に5グループに分けて分析した。

 その結果、最もたくさん摂取した女性のグループの脳梗塞や心筋梗塞になる危険性は、最も少ないグループに比べて0・39倍と低いことがわかった。閉経後の女性に限ると、危険性は0・25倍とさらに下がった。

[読売新聞 / 2007年12月01日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071201i306.htm



【大豆好き女性 脳梗塞・心筋梗塞減る 厚労省研究班調査】

 豆腐や納豆、みそなど大豆製品をよく食べる女性は、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞になりにくいことが、厚生労働省研究班の大規模追跡調査で分かった。閉経後の女性に特に効果がある。大豆に含まれる複数成分の効果に加え、一緒に野菜や海藻などを食べる献立になりやすいためらしい。27日発行の米医学誌「サーキュレーション」に掲載された。

 研究班は、40~59歳で心臓病やがんにかかっていない男女計4万462人(男女比1対1)を対象に、90~02年の13年間、健康状態を追跡した。そのデータを基に、大豆製品を1日に食べる量別に5群に分けて、脳梗塞と心筋梗塞の発症率との関係を分析した。

 その結果、一番よく食べる群の女性は、脳梗塞や心筋梗塞になる危険性が、一番食べない群の女性に比べ0.39倍と低かった。さらに、女性の半数を占める閉経後の人に対象を絞ると、危険性が0.25倍と大幅に低くなった。男性では、食べる人も食べない人も差がなかった。

 一番よく食べる群が1日に食べる大豆製品の量は、納豆を1パックまたは豆腐3分の1丁程度。

 大豆は、女性ホルモンと似た働きをするイソフラボンを多く含む。ビタミンEなども豊富だ。分析した国立循環器病センター(大阪府吹田市)の小久保喜弘医長は「単体の成分ではなく、複数の成分が効いているとみられる。また、みそ汁には、野菜などいろんな具材を入れるなど、大豆製品を食べる時の食習慣が総合的に好影響を与えている」とみている。

[朝日新聞 / 2007年11月29日]
http://www.asahi.com/health/news/OSK200711290046.html

老化の“司令官”発見、マウスの肌若返りに成功=スタンフォード大学

2007年12月01日 | 遺伝子組替マウス
 【ワシントン=増満浩志】米スタンフォード大などの研究チームが、体の様々な組織を老化させる“司令官”としての役割を担っているたんぱく質を発見、マウスの皮膚の一部でそのたんぱく質の働きを抑えたところ、肌の若返りに成功した。

 15日付の専門誌「ジーンズ・アンド・ディベロップメント」に発表する。

 同大のホワード・チャン助教授らは、人間などの細胞内で遺伝子の働きを調節しているたんぱく質の中から、高齢になると各組織で活発化するものを探し、免疫の調節などにかかわる「NFカッパB」に着目。ある薬品に触れた時だけ、細胞内でNFカッパBが働かなくなるよう、遺伝子を操作したマウスを作製した。

 約1歳半のマウスの右半身の皮膚にこの薬品を2週間塗り続けた結果、年齢に応じて変わる様々な遺伝子の働き方が、生後1か月のマウスとほぼ同じになった。細胞の増殖も活発になり、表皮の層の厚さは生後1か月未満の水準に若返った。薬品を塗らなかった左半身には変化がなかった。

 NFカッパBは生命の維持に必要なため、その働きを止め続けることはできないが、研究グループは「病気やけがをした時、一時的に働きを抑えれば、回復を早められるのではないか」と期待している。

[読売新聞 / 2007年12月01日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071201i407.htm