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医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

川崎病に関連遺伝子 発症しやすい配列解明=理化学研究所

2007年12月17日 | 遺伝子
 子どもに発熱や発疹などの症状が出る川崎病にかかわる遺伝子を、理化学研究所などのチームが突き止めた。遺伝子のタイプによっては2倍近く発症しやすく、心臓の冠動脈に瘤(こぶ)ができる合併症や治療効果とも関係するという。川崎病が報告されてから40年たつが原因はわかっておらず、原因解明や治療法の選択に役立つと期待されている。

 理研遺伝子多型センターの尾内善広・上級研究員らが米カリフォルニア大サンディエゴ校と共同で研究。論文は17日(日本時間)付米科学誌ネイチャージェネティクス電子版で発表された。

 川崎病との関連がわかったのは「ITPKC」という遺伝子だ。尾内さんらは、兄弟姉妹で発症した患者78組の協力で、関連遺伝子がありそうな場所を10カ所見つけた。さらに患者と患者以外の人を比較し、米国人患者のデータも解析した。

 この遺伝子には、遺伝暗号を記す塩基の並び方が1カ所変わったタイプがある。このタイプの人は川崎病を1.89倍発症しやすく、合併症も2.05倍起きやすかった。合併症を防ぐために投与する薬、ガンマグロブリンの効果が不十分な人にも多かった。

 この遺伝子は、免疫を担うT細胞を活性化する物質インターロイキン2の増加を抑制し、過剰な免疫反応を抑えることもわかった。川崎病の発症直後はインターロイキン2の濃度が高く、合併症の患者はさらに高いという報告もある。遺伝子の塩基配列の違いが関係しているとみられる。

[朝日新聞 / 2007年12月17日]
http://www.asahi.com/health/news/TKY200712160153.html

乳がん転移促すたんぱく質特定=大阪バイオサイエンス研究所

2007年12月17日 | 創薬
 乳がんの転移を促すたんぱく質を、大阪バイオサイエンス研究所の佐邊寿孝(さべ・ひさたか)研究部長らのグループが新たに特定した。佐邊さんらは06年にも、乳がんの転移を促す別のたんぱく質を特定し、発表している。いずれも副作用がより少ない治療薬の開発につながるという。16日付の英科学誌ネイチャー・セル・バイオロジー(電子版)に掲載される。

 乳腺で増殖した乳がん細胞は、悪性化すると乳腺の壁を壊して浸潤し、血管やリンパ管を通って肺など全身に転移するとされる。

 佐邊さんらが悪性の乳がん細胞を調べたところ、正常な細胞ではほとんどないGEP100というたんぱく質が増えていることが分かった。

 シャーレで培養した悪性の乳がん細胞で、GEP100の生成を抑制し、顕微鏡で観察したところ、通常に比べて浸潤能力が低下した。また、GEP100ができないようにした悪性乳がん細胞とGEP100をもつがん細胞を別々のマウスに注入したところ、どちらも増殖したが、生成を抑えた細胞は肺への転移があまりみられなかった。

 佐邊さんは「これらのたんぱく質は、大人ではがん細胞の浸潤や転移のみにかかわっているとみられる。そのため、このたんぱく質の働きを抑える薬は、体内の他の働きを阻害することがなく、副作用が出にくいと考えられる」と話している。

[朝日新聞 / 2007年12月17日]
http://www.asahi.com/science/update/1216/OSK200712160039.html

アスパラガス酵素が2タイプの抗菌成分合成を発見=京都大学

2007年12月17日 | 生きもの色々
 京都大学生存圏研究所などの研究グループは、アスパラガスの酵素が1種類で2タイプの抗菌成分を合成できる能力を備えていることを突き止めた。一般的に生体内では異なるタイプの合成は別々の酵素が担う。1つで複数の成分を作り分ける仕組みが詳しく分かれば、より複雑で効き目の高い医薬品の開発などにつながりそうだ。
 この酵素はヒノキレジノールと呼ぶ抗菌成分をつくる。幹や茎が腐るのを防ぐのに役立てている。ヒノキレジノールには「コ」の字型と、「Z」字型の2種類がある。アスパラガスは「コ」しか作らないとされていたが、酵素を構成するたんぱく質分子の1つを取り除いたところ、「Z」を作れるようになった。

 酵素を形づくる「部品たんぱく質」を組み替えることで、酵素としての基本機能を保ちながらも別タイプの成分を合成できる可能性を示した。

[日経産業新聞(Nikkei NET) / 2007年12月17日]
http://health.nikkei.co.jp/news/top/index.cfm?i=2007121601338h1