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医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

糖尿病合併症:「笑い」に腎症への進行抑える効果=国際科学振興財団

2007年12月03日 | 心のしくみ
腎臓の働きが悪くなる糖尿病合併症の腎症への進行を笑いが抑える可能性があると、国際科学振興財団バイオ研究所(茨城県つくば市)の研究チームが3日、発表した。

 チームは、健常者16人、腎症のない糖尿病患者12人、腎症の糖尿病患者11人の計39人に、吉本興業の協力を得て「ザ・ぼんち」の漫才を40分間観賞してもらい、前後で血液を検査した。

 糖尿病患者は、たんぱく質のプロレニンの血中濃度が高くなることが知られており、腎臓の細胞にある受容体とプロレニンが結合すると腎症が進行する。血中濃度を比べたところ、観賞前では健常者の平均が1リットル当たり32.5ナノ(ナノは10億分の1)グラム、腎症のない患者が同93.4ナノグラム、腎症患者が同196.6ナノグラムだったが、観賞後には、腎症のない患者は同60.4ナノグラムに減り、統計的な差が認められた。腎症患者も同166.7ナノグラムと減る傾向があった。

 また、腎臓以外の血液中にあるプロレニンと結合する受容体の遺伝子の活動を笑いの前後で比べた結果、健常者はほとんど変わらなかったが、糖尿病患者は遺伝子の働きが約1.5倍、活発になった。同研究所の林隆志主任研究員は「笑いで遺伝子が活発になり、血中の余分なプロレニンが受容体と結びつき濃度が下がるのではないか。笑いが糖尿病合併症への進行を抑制することを示唆している」と話す。【石塚孝志】

[毎日新聞 / 2007年12月03日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20071204k0000m040089000c.html

米ぬかで「かゆみ」抑制、抗アレルギー実証=東京大学、東京海洋大学

2007年12月03日 | 食品・栄養
 米ぬかに含まれる成分に、アトピー性皮膚炎などのアレルギーを引き起こす「IgE抗体」にくっつき、炎症作用などを抑える働きがあることを東京大の尾崎博教授、東京海洋大の潮(うしお)秀樹准教授らが突き止めた。天然成分に由来する新しい抗アレルギー薬につながると期待される。

 研究チームは、米ぬか成分のうち、紫外線吸収、抗酸化作用などが報告されていたγ(ガンマ)―オリザノールに注目。研究チームは、この成分が腸などの炎症を抑えることを確認。アレルギーにも効果があるか動物や細胞での実験で調べた。

 その結果、米ぬか成分は、IgE抗体と結びつき、抗アレルギー作用もあることを発見した。アレルギーは、免疫細胞が作るIgE抗体と抗原が、肥満細胞に作用してヒスタミンなどの「かゆみ物質」を血中に放出して、炎症やかゆみを起こす症状。米ぬか成分がIgE抗体と結びつくことで、かゆみ物質の放出が70~80%抑制された。これまでの抗アレルギー薬の抑制効果を上回っているという。さらに、米ぬか成分が肥満細胞以外の免疫の働きを弱め、炎症を抑えることも突き止めた。

 東大と東京海洋大は特許を取得。化粧品などを販売する「ナチュラルサイエンス」と契約を結び、米ぬか成分入りの保湿オイル「バリアオイルAD」を20日に発売する。年間90万トンが廃棄される米ぬかの有効活用としても注目される。

[読売新聞 / 2007年12月03日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071203i106.htm

花粉症やぜんそくに朗報、発症関与の新たんぱく質発見=理化学研究所

2007年12月03日 | 免疫
 花粉症やぜんそくなどのアレルギー疾患の発症に関与する新たなたんぱく質を、理化学研究所の研究チームが発見し、3日の米科学誌「ネイチャー・イミュノロジー」(電子版)に発表した。

 日本人の約3割は何らかのアレルギーに悩まされているとされ、このたんぱく質を制御することで、新たな治療法の開発が期待される。

 アレルギーの症状は、体に入った異物(抗原)に刺激された特定の細胞から「ヒスタミン」という物質が分泌されて起きる。ヒスタミンは、細胞内のカルシウムが多くなると分泌されることが知られているが、カルシウム量がどのような仕組みで制御されているのか、よくわかっていなかった。

 研究チームが発見したのは「STIM1」というたんぱく質。遺伝子操作でSTIM1がないマウスを作り、その細胞を抗原で刺激すると、カルシウムの量が抑えられ、ヒスタミンの分泌量も著しく低下した。

 研究チームは、このたんぱく質が抗原の刺激で細胞表面近くに移動し、外からカルシウムを取り込む関門のような小器官を開く働きをしていると突き止めた。

 一方で、STIM1がないマウスはすぐに死亡し、細胞の生存に重要な役割を果たしていることもわかった。理研の黒崎知博グループディレクターは「新たな治療法の開発には、カルシウムの役割をより細かく突き止める必要がある」と話している。

[読売新聞 / 2007年12月03日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071203i401.htm