防衛局は、７月24日（金）の夕刻、辺野古新基地建設事業に関する実施設計の事前協議書を沖縄県に提出した。一昨年12月の埋立承認の際に県が付した留意事項「工事の実施設計につき事前に県と協議を行うこと」に基づいたものだ。まだ、ボーリング調査は終わっていないが、調査を終えた部分から先行して協議に入ろうというのだ。防衛局は「８月14日を期限に県からの質問を受け付ける」というような横柄さで、協議が不調に終われば工事に入る構えを示している。
今回の協議書提出は、知事が埋立承認を取り消そうとしても、それを無効として本体工事に着手するぞという脅しをかけているのだ。マスコミも「県との事前協議が整えば、すでにボーリング調査が終わった浅瀬部分から工事に着手する構えだ」と指摘している（琉球新報 2015.7.25）。しかし、この指摘は正しくない。防衛局は、今回の事前協議を終えても埋立本体工事に着手することはできない。
ただ、気になるのは知事の対応の遅れだ。７月16日に第３者委員会の報告書が出されたが、知事はすぐに埋立承認取消を明言せず、１ケ月ほどかけて報告書の内容を「精査」するとしている。その後、防衛局への聴聞の手続に１ケ月ほどが必要となる。２ケ月先に埋立承認を取消しても、手遅れになってしまう恐れもある。マスコミからも「翁長知事は菅官房長官との『対話』が緒についたことを念頭に、政府との決定的な対立には否定的な考えを示している」という指摘もあがっているが（沖縄タイムス 2015.7.25）、このままでは防衛局の脅しに対応できない。知事は新たな事態となったのだから、ただちに埋立承認の取消を決断しなければならない。
以下、今回の事前協議が不調になっても、防衛局はこれらの護岸工事に入れないことを説明する。
１．今回、協議対象とされた護岸工事を始めるには「設計概要変更申請」の知事承認が必要
上の図面の赤書部分が、今回、防衛局が事前協議の対象とした護岸工の箇所だ。辺野古側のK-1～K-7護岸、そして大浦湾のK-9護岸、また中仕切護岸N-2～N-5の12種類の護岸工だ。しかし、埋立承認願書、昨年９月の設計概要変更図書に明記されていた工程表では、まず、大浦湾のA護岸が最初に着工される。その後、大浦湾のK-9、C-1護岸、辺野古側のK-4、K-8護岸の工事に入る。K-7護岸は２年次ケ７月目から着工、その他、K-2、K-3、K-5、K-6もかなり遅れて着工ということになっている。また、護岸の工事に入るまでに、工事用仮設道路、海上ヤード、中仕切岸壁などを着工するとされている。
防衛局は、12種類の護岸工事について事前協議に入ったというが、事前協議が不調に終わってこれらの護岸工事に入ろうとしても、そのためには上記工程表の大幅な変更になることから、まず「設計概要変更申請」を県に提出し、知事の承認を得なければならない。
（なお、防衛局はすでに埋立本体工事８件（総額約600億円）につき業者との契約を終えている。しかしこれらの契約は全て大浦湾での埋立本体工事であり、辺野古側の工事契約はまだ締結されていない。防衛局がこれらの12種類の護岸工事について工事に入ろうとしても、10種類の護岸工事については、入札・契約のために相当の時間を要し、すぐには着工できない。）
２．辺野古側の護岸工事に入るためには、まず、工事用仮設道路を完成させる必要。しかも文化財調査の壁
また、辺野古側のK-1～K-7等の護岸工事の進入路として、工事用仮設道路A、B、また追加で承認された工事用仮設道路③などをまず完成させることが必要である（上図参照）。これらについても、県との実施設計の協議を行わなければならない。
ところがこれらの工事用仮設道路の造成箇所は、名護市によって恩原遺跡などの文化財調査が予定されている。文化財保護法で調査完了前の工事着手は禁じられており、調査が終わるまで防衛局は工事用仮設道路の工事には入れない。
（なお、工事用仮設道路Aは、国道329号線の辺野古バス停の信号付近からシュワブ基地のフェンス沿いに造成されるが、辺野古の集落に沿った道路であることから大型工事車両の頻繁な通過による住環境の悪化が危惧される。）
以上、説明してきたように、今回の12種類の護岸工事については、県との協議が不調に終わったとしても防衛局は工事に着手することはできない。防衛局はそれを承知で実施設計の協議に入っているのである。知事が毅然と対応すれば、防衛局の脅しは全く通用しない。
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