西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

百夜車

2010-02-27 | 長唄の歌詞を遊ぶ (c) y.saionji
4-「百夜車」

市村座の秋狂言に、金井三笑が書いたのが「百夜車」(1765・明和2年)。

小野小町に恋をした、深草少将の百日通いを題材にした曲で、
明日で満願という、九十九日目の小町詣でを描いたもの。

『さればにや少将は 百夜通えと夕月の
 傘に降る雪 積もる雪 恋の重荷と打ち担げ
 涙のつらら 解けやらぬ 君の心は浮世川
 渡りかねたる砂川や』

●というわけで、少将は小町に「百日通えば心を許しましょうぞ」と言われたのだ。
 日暮れて通う少将の、傘に積もる雪、ああ、これが恋の重さか…
 ぼろぼろと頬に落ちる涙は、冷たいつららとなり、解ける間もない。
 小町様、あなたの心には、深くて冷たい川が流れている。
 その川を、必死で渡ろうとしている私を哀れと思いませんか。
  
ちなみに、比叡おろしの吹きすさぶ雪の中、
やっとの思いで小町のもとにたどり着いた少将は、翌満願の日にむなしくも病に倒れ、
思いをとげることなく、みまかったのだとか。

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tea breaku ・海中百景
photo by 和尚