西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

156-田舎神子

2010-02-10 | 時系列的長唄の見方(c)y.saionji
杵屋六左衛門(9代目)―6「田舎神子」


『やんもしろや 色廓(いろざと)通い
 弾くや三味線の 見世清掻の
 たがい違いの床の内(清掻は互い違いに弾くもの)
 水も汲んだり 手鍋も提げましょか
 しんぞ嬉しかろぞいの
 世界の色もこうかいな(世の中の恋もこうかしら)
 心浮かれて面白や』

振り袖の上に巫女の服、千早(ちはや)を着けた”巫女もどき”の
少々げびた、ケレンな踊りはこれで終り、
七変化ゆえに次なる「人麿」役に着替えないといけないので、
急いで引っ込む。
だから変化物の終盤はたいてい、「急ぎ行く」とか「走り行く」とか
この曲のように「失せにけり」とかで、プツンと終る。

『恋には千早故郷を(千早振るを捩っている)
 急ぐと見えしが忽ちに 
 形は消えて失せにけり』

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tea breaku・海中百景
photo by 和尚