猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ジョン・F・ドノヴァンの死と生

2021-01-05 22:18:38 | 日記
2018年のカナダ・イギリス合作「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」。

ニューヨークで人気俳優のジョン・F・ドノヴァン(キット・ハリントン)が29歳
の若さでこの世を去る。自殺か事故か、あるいは事件か、謎に包まれた死の真相
について、鍵を握っていたのは11歳の少年ルパート・ターナー(ジェイコブ・ト
レンブレイ)だった。10年後、新進俳優として注目される存在となっていたルパ
ート(ベン・シュネッツァー)は、少年の頃ジョンと交わしていた100通以上の手
紙を1冊の本として出版。更には、著名なジャーナリスト・オードリー(タンディ
・ニュートン)の取材を受けて、全てを明らかにすると宣言する。

グザヴィエ・ドラン監督による初の英語作品。アメリカの人気俳優ジョン・F・
ドノヴァンが29歳の若さで謎の死を遂げ、大きく報道される。11歳の少年ルパ
ートもショックを受けた1人だった。彼はジョンの大ファンで、ジョンに憧れて
子役になっていたのだった。そしてルパートがジョンにファンレターを送ったと
ころ返事が来て、それから秘密の文通をする仲になっていた。華やかなスターの
光と影、苦悩が100通以上もの手紙から明かされていく。
ルパートは両親が離婚して、母親のサム(ナタリー・ポートマン)に連れられてア
メリカからイギリスに移り住んでいたが、その生活は平穏なものではなかった。
アメリカを離れたために子役の仕事もあまりなく、学校では孤立し、サムとの関
係も良くなかった。ルパートにとってはジョンとの文通が心の支えだった。ドラ
ン監督の映画では母と子の関係がよく描かれるが、ジョンもまたアルコール依存
症の母親を疎ましく思い、長く母親に会っていなかった。そしてジョンは自分の
セクシュアリティについても悩んでいた。これもドラン作品ではよく描かれるテ
ーマである。
物語はジョンのパート、少年時代のルパートのパート、青年期(現在)のルパート
のパートが交錯しながら進行していく。現在のルパートがジャーナリストのオー
ドリーにジョンとのことを話す形で少しずつジョンの人生が浮き彫りになってい
く。けれどもちょっとリアリティに欠ける感じはした。アメリカのスター俳優が
少年からのファンレターに返信したのはいいとして、そのまま文通を始めるだろ
うか。誰にも相談できない仕事や生活の悩みを、会ったこともない11歳の無名
の子役の少年に明け透けに語るだろうか。今までのドラン作品の中ではちょっと
説得力に弱い感じがした。
でもそれでも、ルパートが知るジョンの素顔は繊細で苦悩に満ちていて、痛まし
く感じられるものはある。ジョン役のキット・ハリントンと少年期のルパート役
のジェイコブ・トレンブレイの演技がとにかく素晴らしい。ルパートがジョンの
人生を引き継いだかのようなラストは感動的だった。ただドラン作品では初めて
の英語映画で、ナタリー・ポートマン、スーザン・サランドン、キャシー・ベイ
ツといったハリウッドの有名俳優たちが出演しているので、何だかアメリカ映画
みたいだった。今回英語作品に挑戦してみたらしいが、挑戦しなくていいのにと
思った。ドランの映画はやっぱりフランス語で観たい。


良かったらこちらもどうぞ。グザヴィエ・ドラン監督作品です。
胸騒ぎの恋人
Mommy マミー
わたしはロランス
たかが世界の終わり



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (映画マン)
2021-01-21 16:53:28
ルパートがジョンとの思い出を振り返る感じでストーリーが展開されていくんですね。
人間ドラマもしっかりと描かれたサスペンスでしょうか。最近はサスペンスにはまっているので、ちょうど良いですねぇ。
パイレーツオブカリビアンにも出ていたナタリー・ポートマンが出演するんですね。彼女の美しい演技にも注目したいところです。

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Unknown (杏子)
2021-01-21 21:29:45
>映画マンさん
コメントありがとうございます。サスペンスという感じではないと思います。やはり人間ドラマですね。
俳優たちの演技が本当に良かったです。
ルパートがジョンの人生を引き継いでいくことを思わせるラストシーンが、お気に入りです。
いい映画でした。
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