猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

天国への300マイル

2018-10-09 20:59:05 | 日記
1989年のポーランド・デンマーク・フランス合作映画「天国への300マイル」。

1985年。ポーランドの田舎町に住む14歳のイェンドルク(ラファウ・ジモフスキ)と
11歳のグジェゴシュ(ヴォイチフ・クラタ)の一家の暮らしは、思想的な理由で学校
を追われた父を抱えて、非常に苦しかった。西側で働いて仕送りしようと考えた兄
弟は密かに国外脱出を計画する。イェンドルクの同級生の少女・エルカ(カマ・コヴ
ァレスカ)も加えての決行の日。しかしトラックにはグジェゴシュしか乗れず、オー
トバイを盗んで後を追った2人は事故を起こして病院に運ばれる。重傷のエルカを残
して抜け出したイェンドルクは警官の目を盗んでグジェゴシュと合流、トレーラー
の荷台の下に隠れて、ついにデンマークに辿り着く。

実話を基にした感動作。社会主義の国において民主主義思想を持った兄弟の父親が
仕事を失い、苦しい生活をしている一家。兄弟は両親の姿に胸を痛め、自分たちが
西側の国に行って働き仕送りしようと、亡命を企てる。14歳と11歳、まだ幼い兄弟
だから考えたことなのだろう。兄イェンドルクのクラスメイトの少女・エルカはイ
ェンドルクの父親を尊敬していて、自分も一緒に行くと言う。3人の命がけの逃避行
が始まる。
映画は終始暗く重たい。映像も粗削りな感じで、それがハリウッド映画とは違う素
朴さやもの悲しさを醸し出している。子供だから思いついた無謀な計画だが、彼ら
はやり遂げるのだ。兄の友人の少女は途中でケガをしたため同行できなくなってし
まったが、兄弟は何とかデンマークに辿り着く。しかし当然ながらその後も大きな
問題が発生することになる。少女はといえばその後矯正院に入れられてしまう。そ
ういう時代だったのだ。
兄弟の両親の誇り高い態度も感動的である。その選択を出すのにどれだけ悩み抜い
たことだろう。ラストもとてもいい。私はこの兄弟が今どうしているのか気になる
が、彼らのしたことは間違いではなかったのだと信じたい。とても好きなタイプの
映画である。




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2 コメント

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Unknown (Kamoko)
2018-10-10 13:49:52
民主主義国家に生まれた私が、社会主義国家をただ批判することはできないと思うのですが、基本的に、社会主義国家からは逃亡者が出るんですよね…民主主義国家から社会主義国家に逃げ出す人は稀です。
それを考えれば、やっぱり民主主義、資本主義の方が良いんじゃないかと思いますが…
社会主義を主張する人の基本は「みんな平等に分け合うこと」ですよね。その考えは悪くはないんですよね。
だけど、結局は富は独占され、平民は貧困にあえぐことに。
理想と現実はなかなか一致しないものですね。。
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Unknown (杏子)
2018-10-11 00:41:36
>Kamokoさん
コメントありがとうございます。そうですね、社会主義、共産主義の考え方は決して間違ってはいないんですよね。「平等に」ということ。でも独裁体制に走ってしまうことがありますよね。
そして民主主義はいいことのようだけれど貧富の差が生じてしまう。難しい問題ですね。
返信する

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