ちゃちゃ・ざ・わぁるど

日記と言うよりは”自分の中身”の記録です。
両親の闘病・介護顛末記、やめられないマンガのお話、創作小説などなど。

創作小説 SUNSET ORANGE CHAPTER2 PART.5

2014年06月09日 06時06分42秒 | 創作小品
などと一人悶々とする気持ちを持て余し気味になっているところで、数曲歌ってカラオケは途切れ、ユウさんはマイクを置いて
「さて・・・今度は君の話が聞きたいな。」
といきなり振って来た。
「オレばっかり喋って申し訳ない。ホントお喋りだろ、オレって。・・・君のことは少しだけみゆ希姉に聞いたんだけど、でも全然知らないんだよね。理系の院生なんだって? いわゆるリケジョだよね、何を専攻してるの?」
「あ、まあ・・・一応生命工学専攻です。」
「スッゲ!・・・て、よくわかんないで言ってるんだけど。サイエンティスト、科学者なワケね。」
「いやあ・・・それほどでも。まあ、まだ学生ですし。」
科学者だなんて・・・照れ照れ、テヘッなアタシ・・・。ヒトに、それもユウさんに言われるなんて、嬉しい~!!
「理論立てて仮説を立てて冷静に実験して実証する・・・とかいう感じかな? カッケエなあ~! いろいろ研究とかしてるんでしょ? どんなのやってんの?」
「ハイ、アタシの場合はマリンバイオテクノロジーって言って、海洋性生物を細胞単位で調べてヒトへの影響や有用性を検証する実験や研究を中心としてます。特に有用な有機化合物を海洋生物から生成できないかと言うのが一番のテーマで、よく知られているのは藻からバイオ燃料を生み出す研究なんてのがありますけど、アタシは二酸化炭素を効率的に処理する藻類を遺伝子操作で作れないかということに一番興味があって、そのためにメタゲノム解析っていうもので難培養微生物を解析してその塩基配列を・・・」
「あ、ごめん、もうその辺で。そっち方面へのオレの理解力はかなり低いんで、ややこしい話はまたの機会に噛み砕いたレベルからお願いします。」
ユウさんは苦笑いしながら熱弁しかけたアタシを制した。うう・・・調子こいちゃった・・・。
「す・・・すみません・・・つい・・・。」
「まあ、それはそれとして。・・・総司のカノジョだというのも聞いたけど?」
「へ・・・?! ち、違います!! もう・・・みゆ希さんにもそう言ったのに~・・・。アタシは総くんとは友達で、カノジョとかそんなんじゃないんです、全然!! 友達として心配してて・・・で、アイツもユウさんのファンだから気が合って・・・。あ・・・。」
と、アタシはようやく気付いた。
「そっか・・・。おばさんはきっとユウさんが自分の息子だってわかってたからずっと聞いてたんだ・・・。ユウさんが素性を隠してても、きっと気づいてたんですね、自分が産んだ子だって・・・。そして総くんも知らなくてもどこかで感じるところがあって、ユウさんの歌を聞くようになって・・・惹かれたんですね、きっと。お兄さんだとは知らなくても・・・。そうだ、ユウさん、『SUNSET ORANGE』って情景は砂漠地帯のイメージなんですか? 総くんがそういう風に聞こえるって言ってたんですけど。」
「へえ・・・。そうか・・・そう聞こえるか。君は?」
「アタシは最初夕焼けの海かなって単純に思って・・・でも総くんにそう言われてから聞くと、そっちのほうがしっくりくるなって思いました。さっきもそれでなんか感激して泣けちゃって・・・。」
「ふうん。なるほどね・・・。そうだな・・・どちらかといえば総司の勝ち、かな。確かに荒涼としたイメージではあるよ。砂漠じゃないけど。荒れ地だな。岩がゴロゴロしてる山道、草や木も容赦なく生えてて、でも密林じゃない。荒涼とした山を登るとき、正面から夕陽が差してくる。自分もオレンジに染まって風景の中に入ってる。そんな感じだよ。作ったオレ自身はね。でも、音楽は聞く人のイメージをなぞる。水が注がれたグラスの形になるように。だからどんな心象風景を描いてくれてもいいんだ。君の海も間違いではないさ。それが君の感じ方。でも、感じ方は変わるよね。総司が持ったイメージのことを聞いて君のイメージが修正されてその方がしっくりくるとしたら、それは君の中身がそういう風に変わったんだ。うーん、言うなれば総司色に君が染まったのかもね。」
「へ? え? え? え?」
総くんの色に染まった? イヤイヤイヤイヤ!! それって・・・それって・・・。ユウさんはテーブルに肘をついて頬杖ついてニヤ~っと笑ってこう言った。
「白状しなさいよ。涼香ちゃんは総司が好きなんでしょ?」
「えええええ――――――――――――――!!」
ううう・・・ホント、こればっか・・・・。
「そそそ・・・そんなんじゃないですってば!! ホントに・・・友達ですから!」
「いやあ、オレとしちゃ君みたいな可愛くてしっかり者で優しいカノジョがいてくたら安心なんだけどな、不肖の兄貴として。そうだ、いっそ嫁さんになってやってよ。」
「そ・・・そんなあ・・・。」
と、アタシは切り返して
「ユウさんこそ自分のこと考えてください! 自分で言ってたじゃないですか、未練たらしいと思うんならみゆ希さんばっか見てないでもっと周りを見て! きっと近くに他にいい人絶対いますよ!」
「おわっ!! 痛ってェなあ~!! 君も言うねえ・・・。てか、ファンだったら『いつまでも独身でいてください』って言わない? フツー・・・。」
「だ・・・だって・・・。」
アタシってば・・・何言ってんだろ・・・。
「ははは・・・。ま、いーや。でもさ、弟があんな状況じゃオレも不安なわけよ、何もできんけど・・・やっぱ兄貴なわけだしね。・・・何で兄貴が先に生まれるか知ってるか? それは後で生まれる弟や妹たちを守るためなんだぜ。」
アタシは思わずのけぞった・・・だってそれ・・・。
「・・・・それ、BLEACHの黒崎一護(いちご)が言ってましたよね・・・。」
「あれえ、知ってた?! やっべ、ソッコーでばれた。」
「好きなんですか? BLEACH・・・。」
「ていうかあ、ガキの頃からジャンプはオレの愛読書よ。それより、マジでアイツとのこと話してよ。オレはみゆ希姉からは事故で歩けなくなったってことくらいしか聞いてないんだ。その時名前聞いてさ・・・もしかしたら弟かもって思ったから、だから招待する気になったんだけどさ。やっぱ二人に会いたかったし。だから直接知ってる君から聞きたいな。気分は一護と同じよ。卍解(ばんかい)どころか・・・できねーことばっかだけどな。」
 ユウさんはふっとため息をついた。考えてみれば、この人は大きな苦悩を抱えているんだ。それでもなお弟である総くんと産みの母であるおばさんを思いやっている。だからアタシは話さなくちゃならないと思った。ユウさんだってアタシに自分の秘密をこれだけ話してくれたんだから・・・。重荷? 確かにね・・・。でも、アタシはそれをわかってて聞いたんだもの。アタシも抱えるつもりだよ。(ちなみに卍解ってのはいわば必殺技ていうか秘奥義みたいなもんって思ってください・・・と、どーでもいい解説。)
 アタシは総くんのことで知っていること全部話した。もちろん夢のことも。夢破れたことも。そして・・・アタシのお節介のことも・・・。ユウさんはじっとそれを聞いてくれた。そして・・・
「女の子怒鳴りつけるなんてサイテーだな!アイツ・・・。折角心配してくれてんのに!」
と、おばさんと(タブン)同じことを言った・・・。
「でも、あれはアタシがいけなかったんです。勝手に考えて勝手に恩着せがましく押し付けようとして・・・。」
「まあでも・・・そのおかげで君がみゆ希姉に話して、オレに繋がったわけだから怪我の功名だね。怪我した君には申し訳なかったけど。」
「ああ・・・そっかあ・・・。そう言われればアタシも怒鳴られた甲斐があるってことなんですね・・・。でもちょっとフクザツ・・・。」
「ふふふ・・・それは運命なのだよ。」
と、またジャンプ周辺で聞いたような言い回し・・・。黒子のバスケの緑間だ・・・。いえ、いいです・・・。


・・・TO BE CONTINUED.
コメント
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