「仙谷由人」に 『疑惑の金』 の動かぬ証拠 「週刊新潮」H23. 8/4号
(『文殊菩薩』(ブログ版))より
「週刊新潮」
「週刊新潮」平成23年7月28日(木)発売 新潮社
仙谷由人に『疑惑の金』
の動かぬ証拠
個人口座に業界団体から振り込み!不可解な訂正の証拠
弁護士で法相も経験した仙谷曲人官房副長官(65)。法律のプロである彼の個人口座に、とある業界団体から現金が振り込まれていた。
この金は、政治資金規正法で禁止されている政治家個人への献金に相当するのではないか──。「疑惑の金」の動かぬ証拠をお見せする。
ロシアでは、「悪人、極悪人、超悪人」の中から、〝比較的マシ〟な候補者を選ぶのが選挙であると認識されているという。
現在の民主党にも、ものの見事に当てはまる〝卓見〟と言えよう。
前総理の鳩山由紀夫氏は〝故人献金〟、現総理の管直人氏と次期総理候補の前原誠司氏はともに外国人からの違法献金が発覚。いずれ劣らぬ「悪」である。
そして今度は、菅降ろし、ポスト菅、大連立と、現下の政局を一手に牛耳ろうとしている〝新キングメーカー〟こと仙谷由人・官房副長官に、「疑惑の金」の存在が判明したのだ。さながら民主党は、「政治とカネ」の巣窟。これでは、〝マシ〟な人間を見つけることすらままならないではないか……。
では早速、仙谷氏の「疑感の金」の全容を紹介することにしよう。
2010年4月20日、三菱東京UFJ銀行の赤坂支店(東京都港区)にて、ある一件の現金の振り込みが行われていた。
振り込み主は、不動産業者の業界団体である(社団法人全日本不動産協会)(以降、全日)。振り込み先は、りそな銀行赤坂支店の普通口座で、金額は20万円。そして、口座の名義はこうなっていた。
〈センゴク ヨシト〉
当時、鳴り物入りで新設された民主党政権の目玉ポスト、国家戦略相の要職に就いていた仙谷氏の個人口座である(上の写真参照)。
また、手元にもう1枚の紙が存在する。彼の個人口座に20万円が振り込まれたのと全く同じ日に作られ、(振替伝票)と印字されたこの用紙は、いわば全日の出金伝票。そこには、こんな文字が並んでいる。
〈特別事業費〉
〈大臣就任祝金〉
〈現金 200000〉
(仙谷由人〉
要は、全日は露骨にも大臣就任祝金として、仙谷氏に20万円を支出したことを表している。
さすがに、大臣就任祝金ではあまりにも〝大胆〟過ぎると思ったのか、この文字は二重線で消され、〈法務相談費用〉と訂正されている(左頁の写真参照)。しかし、税理士の田中卓也氏が、「責任者の確認を経た後での訂正手続きであれば明らかに不自然です。税務調査の対象となった場合、〝これは何なんだ?〟と、怪しまれるのではないでしょうか」
と訝れば、法人の政治献金を研究する専修大学法科大学院の山田創一教授は、
「なぜ訂正する必要があったのか。本当は大臣就任祝金であったことが明々白々で、言い逃れできないでしょう」
さらに、全日の関係者もこう証言する。
「当初の支出時は、間違いなく大臣就任祝金でした。
後になって名目が〝改竄〟されたんです」
つまり、実態としては大臣就任祝金だったと疑われても仕方のない金を、仙谷氏は受け取っていたわけだ。
何だかキナ臭い気配を漂わせる金が、こともあろうに閣僚と公益性を帯びた社団法人との間で動いた経緯を、先の関係者が説明する。
「全日は1952年に設立された業界最古の全国組織で、会員である不動産業者の情報交換や、不動産に関する知識の一般社会への普及などを目的とした(公益法人の中の)社団法人。2010年4月の仙谷さんに対する振り込みの背景の一つには、08年に新公益法人制度がスタートしたことにあると思われます」
新たに始まった新公益法人制度では、2013年11月30日までに、従来の公益法人は一般社団・財団法人か公益社団・財団法人かに移行申請し、内閣府等の認可を受けることになる。無論、「公益」と名が付く後者のほうが税制面等で優遇される。
「当然、全日も公益社団法人への移行を考えています。しかし、全日は決して誉められた過去がある団体ではない。そこで、民主党の有力政治家である仙谷さんの後ろ盾を強固なものにして、スムーズに公益社団法人に移行させてほしいなどと考えたんですよ」(同)
カネに関する過去の報道
この関係者が指摘するように、確かに全日に関しては、例えばこんな新開記事が掲載されたことがある。
〈不動産業者でつくる社団法人全日本不動産協会の都本部が、昨年6月の同協会の理事長選で当選した川口貢(東京都)本部長の選挙対策費を、都本部の管理費から支出していたことが18日分かった)(2006年5月19日付朝日新開)
理事長の座を手に入れるために開いた懇親会等の(計400万円を超え〉(同)る費用を、会員の〝共有財産〟である管理費で賄っていたというのだ。そして、入国の「公益法人の設立許可及び指導監督基準の運用指針」は、会議費や人件費などの管理費を「法人の運営に必要な基礎的経費」と限定している。このため、
一部会員が「指針に反し、事前に了承してもいない」などと批判)(同)
つまり理事長選の票集めのために、候補者(現理事長)により会費が〝私的流用〟されたのでは、との疑感を持たれた過去があるのだ。
新しい公益社団法人を目指す全日にとっては、捲き続ける〝脛の傷〟の一つと言えよう。仙谷氏の〝力添え〟を求めたくなる心情も分からなくはない。
ちなみに20万円という金額の〝算定基準〟は、「特別事業費は、20万円程度であれば限られた幹部だけの承認で出金を決められる。そのため、とりあえず20万円となった。いわば〝機密費〟 のように処理できる金額だったというわけです」(前出の関係者)
では、どうして仙谷氏が全日の〝機密費〟の対象に選ばれたのか。
全日の会員が明かす。
「以前、仙谷さんは地元の全日徳島県本部の法律顧問を務めていて、徳島県本部長だった人物と呪懇。彼と川口理事長らが一緒になって、仙谷さんの議員会館の部屋を訪ねていったこともあるそうです」
さらに、徳島県のさる不動産業者によれば、「一昨年、徳島県本部で内紛が起きた際、結果的に本部長側に有利に働く意見書が仙谷さん名で提出されたこともある」
こうした緑から、新しい公益社団法人への移行を目論む全日の〝守護神〟として、仙谷氏に白羽の矢が立ったというのだ。
しかし、民主党きっての政策通として鳴らし、政治資金の処理等の法的要素を含む分野についても、当然の如く「(弁護士である)私のようなプロ」(2010年7月16日の記者会見での発言)と自任する仙谷氏が、不可解としか言いようのない全日の特別事業費を、果たして軽々に受け取ったりするものだろうか。この謎を解く鍵は、彼のカネに関する過去の報道にあった。
「業務は行っていない」
〈仙谷氏が入閣後、弁護士所得計上/大臣規範に抵触か〉(2010年6月30日付朝日新聞)
〈仙谷氏政治資金、長男側に/ビル賃料、補填か/計320万円、事務所・人件費名目で〉(同年8月29日付朝日新聞)
〈政治資金でたばこ/仙谷氏後援会「備品費」と計上〉(11年1月17日付産経新聞)
等々、〝意外〟にも彼はカネの問題を度々指摘されてきた議員なのだ。とりわけ最初の朝日新聞の報道は、今回の疑惑にも絡む極めて重要な意味を学んでいる。
この間題は、既に仙谷氏が閣僚(行政刷新相)となっていた09年に、弁護士業で得た事業所得として、80万6746円を計上していたことに端を発する。
大臣規範では、やむを得ない場合を除いて閣僚の兼業は禁止されており、当時の仙谷行政刷新相が弁護士として事業所得を得ることも当然、原則認められていなかった。そこで彼は、「(弁護士)事務所の維持費が掛かるため数社から必要最低限のものを支払ってもらった。在任中に(法律相談などの)業務は行っていない」
と述べ、顧問料は受け取ったものの、具体的な弁護士活動はしていないのだから大臣規範には抵触しないと弁明したのだ。
苦しい言い訳に聞こえるが、ここで大事なのは「在任中に業務は行っていない」と明言している点だ。
であるならば、全日からの20万円の振り込みも法務相談費用の名目ではあり得ないと、仙谷氏自ら認めていることになる。言わずもがな、法務相談費用の受領とは原則禁じられている兼業、すなわち弁護士業の報酬としか考えられないからである。
畢寛(ひっきょう)、仙谷氏が全日からもらった金は、やはり大臣就任祝金に他ならなかったことになりはしないか。
「いや、あれは法務相談費用でも大臣就任祝金でもなく、通常の政治献金だった」
仮に仙谷氏がこう主張しようとしても、
「政治家個人の口座に企業・団体から金銭が振り込まれた場合、企業・団体からの寄付は支部を含む政党(例えば仙谷氏が支部長を務める民主党徳島県第1区総支部)と、政治資金団体(政党本部が一つだけ届け出ることができる献金の受け皿)に限るという政治資金規正法の規定の違反にあたり、寄付の授受の両当事者ともに1年以下の禁錮、もしくは50万円以下の罰金が科される可能性があります。なお、祝金という名目であったとしても、政治資金規正法で規定されている政治家への金銭の供与、すなわち寄付にあたることが想定されます」(総務省政治資金課)
また、全日からの20万円は、仙谷氏の個人口座から、団体献金の受け取りが法律上認められている民主党徳島県第1区総支部の口座に移して献金処理したと強弁しようとしたところで、「全ての国会議員が同じ手法を使うことによって言い逃れが可能となり、政党と政治資金団体以外への企業・団体献金を禁じた政治資金規正法に反します」(前出の山田教授)
それ以前に、全日の監督官庁である国交省の不動産業課によれば、「全日は監査を行っておりますが、全日から政治献金しているとの報告はなく、そうした事実もないと認識しております」
とどのつまり、個人口座を経由して政党支部に献金を迂回させたとの言い訳も通用しないのである。
そろそろ結論に入ろう。大臣就任祝金だろうが、法務相談費用だろうが、はたまた政治献金であろうが、仙谷氏が受け取った20万円は、どう言い繕おうにも政治資金規正法違反ないし大臣規範に抵触するとの疑惑を拭い去ることはできないのである。
そもそも政治資金規正法は、1994年の改正時点で、資金管理団体等を除いて、政治家本人への個人・企業・団体からの一切の献金を禁じた。
99年には前記したように政党と政治資金団体にしか企業・団体は献金してはならないと法改正され、時を経るごとに企業・団体献金の規制は強化されている。
ましてや、民主党は政権交代を果たした09年のマニフェストで、企業・団体献金の全面禁止を謳ってもいる。
にも拘らず、法令遵守を旨とする弁護士で、「私のようなプロ」と豪語していた仙谷氏は、到底あるまじき、不可解な「疑惑の金」を受領していたと言わざるを得まい。
「2億円でもいいですよ」
さて、当事者たちはどう答えるか。
まず全日の川口理事長は、当初は「知らない」の一点張り。ところが後に、一転して20万円を仙谷氏の個人口座に振り込んだことは認めつつ、
「週刊誌に書くんだったら2000万円くらいに書いといてくれねえかな。大臣にたった20万円じゃ恥ずかしいじゃねえか。2億円でもいいですよ」
こう開き直り、
「仙谷さんと近しい藤野(茂樹)副理事長が窓口だから。詳しいことは私には分からない」
と、責任を押し付ける有様。そこで、藤野副理事長に問い質すと、
「20万円は祝金ではありませんよ。確か大臣になってからは、そういうふうなものは法律かなんかでできないと聞いておりましたから、そんな処理はしていないと思いますがね」
語るに落ちたとはこのことではないか。これでは、彼が当初、大臣就任祝金を想定していたことを自認したに等しい。この彼の説明は、振替伝票の〝改窺〟の経緯と、ほとんど軌を一にするのだから。それでも、頑なに大臣就任祝金であったとは認めず、
「仙谷さんが大臣に就任する前に、彼には全日としていろいろと法律の相談に乗ってもらっていて、それでまとめて昨年の4月に法務相談費用をお支払いしたんです。いつ、どんな相談をしたのかは覚えていません」(同)
前述の通り、仙谷氏は国家戦略相に就任する前に、09年9月の政権交代時より行政刷新相として入閣している。藤野氏の説明が事実だとすれば、全日が仙谷氏に法務相談していたのは同年9月以前のはずで、それから10年4月20日に振り込むまで、どういうわけか少なくとも8カ月は掛かっている。こうした〝後払い〟が罷り通るのであれば、「閣僚に対して事実上の〝闇献金〟をしておきながら、それが発覚した際に、〝実は大臣就任前にお世話になった先生への労働対価でした〟との逃げ口上が許され、不明朗な献金が幾らでも可能になってしまいます」(前出の山田教授)
加えて、「ならば、なぜ最初から法務相談費用と書かずに大臣就任祝金としたのか。やはり、そもそもは祝金だったのではとの疑いを持たれても仕方ないでしょう」(「政泊とカネ」に詳しい日大法学部の岩井奉信教授)
元東京地検特捜部副部長で弁護士の若狭勝氏も、「09年9月以前の法務相談費用を、わざわざ年度が変わり、決算時期を跨ぐことになる10年4月に振り込むことは不自然であり、疑われる行為を避けようという政治資金規正法の趣旨にそぐわない」
そして、肝腎のもう一方の当事者である仙谷氏は、本誌の取材申し込みを無視。個人口座は〝開放〟しているのに、説明責任の口は堅く閉ざしたのだった。
仙谷氏が次期総理候補として推す〝子分〟の前原誠司代議士は、3月6日、外国人から年間5万円の違法献金を受け取っていた責任を取り、外相の任を辞している。20万円の「疑惑の金」を受け取っていた〝親分〟である仙谷氏の身の処し方も、自ずと決まってこよう。
これ以上、民主党を「悪」の吹き溜まりにしたくないのであれば、辞する選択肢は何も官房副長官の〝任〟だけとは限らない──。
p-27 2011.8.4
「週刊新潮」平成23年7月28日(木)発売 新潮社
仙谷由人に『疑惑の金』
の動かぬ証拠
個人口座に業界団体から振り込み!不可解な訂正の証拠
弁護士で法相も経験した仙谷曲人官房副長官(65)。法律のプロである彼の個人口座に、とある業界団体から現金が振り込まれていた。
この金は、政治資金規正法で禁止されている政治家個人への献金に相当するのではないか──。「疑惑の金」の動かぬ証拠をお見せする。
ロシアでは、「悪人、極悪人、超悪人」の中から、〝比較的マシ〟な候補者を選ぶのが選挙であると認識されているという。
現在の民主党にも、ものの見事に当てはまる〝卓見〟と言えよう。
前総理の鳩山由紀夫氏は〝故人献金〟、現総理の管直人氏と次期総理候補の前原誠司氏はともに外国人からの違法献金が発覚。いずれ劣らぬ「悪」である。
そして今度は、菅降ろし、ポスト菅、大連立と、現下の政局を一手に牛耳ろうとしている〝新キングメーカー〟こと仙谷由人・官房副長官に、「疑惑の金」の存在が判明したのだ。さながら民主党は、「政治とカネ」の巣窟。これでは、〝マシ〟な人間を見つけることすらままならないではないか……。
では早速、仙谷氏の「疑感の金」の全容を紹介することにしよう。
2010年4月20日、三菱東京UFJ銀行の赤坂支店(東京都港区)にて、ある一件の現金の振り込みが行われていた。
振り込み主は、不動産業者の業界団体である(社団法人全日本不動産協会)(以降、全日)。振り込み先は、りそな銀行赤坂支店の普通口座で、金額は20万円。そして、口座の名義はこうなっていた。
〈センゴク ヨシト〉
当時、鳴り物入りで新設された民主党政権の目玉ポスト、国家戦略相の要職に就いていた仙谷氏の個人口座である(上の写真参照)。
また、手元にもう1枚の紙が存在する。彼の個人口座に20万円が振り込まれたのと全く同じ日に作られ、(振替伝票)と印字されたこの用紙は、いわば全日の出金伝票。そこには、こんな文字が並んでいる。
〈特別事業費〉
〈大臣就任祝金〉
〈現金 200000〉
(仙谷由人〉
要は、全日は露骨にも大臣就任祝金として、仙谷氏に20万円を支出したことを表している。
さすがに、大臣就任祝金ではあまりにも〝大胆〟過ぎると思ったのか、この文字は二重線で消され、〈法務相談費用〉と訂正されている(左頁の写真参照)。しかし、税理士の田中卓也氏が、「責任者の確認を経た後での訂正手続きであれば明らかに不自然です。税務調査の対象となった場合、〝これは何なんだ?〟と、怪しまれるのではないでしょうか」
と訝れば、法人の政治献金を研究する専修大学法科大学院の山田創一教授は、
「なぜ訂正する必要があったのか。本当は大臣就任祝金であったことが明々白々で、言い逃れできないでしょう」
さらに、全日の関係者もこう証言する。
「当初の支出時は、間違いなく大臣就任祝金でした。
後になって名目が〝改竄〟されたんです」
つまり、実態としては大臣就任祝金だったと疑われても仕方のない金を、仙谷氏は受け取っていたわけだ。
何だかキナ臭い気配を漂わせる金が、こともあろうに閣僚と公益性を帯びた社団法人との間で動いた経緯を、先の関係者が説明する。
「全日は1952年に設立された業界最古の全国組織で、会員である不動産業者の情報交換や、不動産に関する知識の一般社会への普及などを目的とした(公益法人の中の)社団法人。2010年4月の仙谷さんに対する振り込みの背景の一つには、08年に新公益法人制度がスタートしたことにあると思われます」
新たに始まった新公益法人制度では、2013年11月30日までに、従来の公益法人は一般社団・財団法人か公益社団・財団法人かに移行申請し、内閣府等の認可を受けることになる。無論、「公益」と名が付く後者のほうが税制面等で優遇される。
「当然、全日も公益社団法人への移行を考えています。しかし、全日は決して誉められた過去がある団体ではない。そこで、民主党の有力政治家である仙谷さんの後ろ盾を強固なものにして、スムーズに公益社団法人に移行させてほしいなどと考えたんですよ」(同)
カネに関する過去の報道
この関係者が指摘するように、確かに全日に関しては、例えばこんな新開記事が掲載されたことがある。
〈不動産業者でつくる社団法人全日本不動産協会の都本部が、昨年6月の同協会の理事長選で当選した川口貢(東京都)本部長の選挙対策費を、都本部の管理費から支出していたことが18日分かった)(2006年5月19日付朝日新開)
理事長の座を手に入れるために開いた懇親会等の(計400万円を超え〉(同)る費用を、会員の〝共有財産〟である管理費で賄っていたというのだ。そして、入国の「公益法人の設立許可及び指導監督基準の運用指針」は、会議費や人件費などの管理費を「法人の運営に必要な基礎的経費」と限定している。このため、
一部会員が「指針に反し、事前に了承してもいない」などと批判)(同)
つまり理事長選の票集めのために、候補者(現理事長)により会費が〝私的流用〟されたのでは、との疑感を持たれた過去があるのだ。
新しい公益社団法人を目指す全日にとっては、捲き続ける〝脛の傷〟の一つと言えよう。仙谷氏の〝力添え〟を求めたくなる心情も分からなくはない。
ちなみに20万円という金額の〝算定基準〟は、「特別事業費は、20万円程度であれば限られた幹部だけの承認で出金を決められる。そのため、とりあえず20万円となった。いわば〝機密費〟 のように処理できる金額だったというわけです」(前出の関係者)
では、どうして仙谷氏が全日の〝機密費〟の対象に選ばれたのか。
全日の会員が明かす。
「以前、仙谷さんは地元の全日徳島県本部の法律顧問を務めていて、徳島県本部長だった人物と呪懇。彼と川口理事長らが一緒になって、仙谷さんの議員会館の部屋を訪ねていったこともあるそうです」
さらに、徳島県のさる不動産業者によれば、「一昨年、徳島県本部で内紛が起きた際、結果的に本部長側に有利に働く意見書が仙谷さん名で提出されたこともある」
こうした緑から、新しい公益社団法人への移行を目論む全日の〝守護神〟として、仙谷氏に白羽の矢が立ったというのだ。
しかし、民主党きっての政策通として鳴らし、政治資金の処理等の法的要素を含む分野についても、当然の如く「(弁護士である)私のようなプロ」(2010年7月16日の記者会見での発言)と自任する仙谷氏が、不可解としか言いようのない全日の特別事業費を、果たして軽々に受け取ったりするものだろうか。この謎を解く鍵は、彼のカネに関する過去の報道にあった。
「業務は行っていない」
〈仙谷氏が入閣後、弁護士所得計上/大臣規範に抵触か〉(2010年6月30日付朝日新聞)
〈仙谷氏政治資金、長男側に/ビル賃料、補填か/計320万円、事務所・人件費名目で〉(同年8月29日付朝日新聞)
〈政治資金でたばこ/仙谷氏後援会「備品費」と計上〉(11年1月17日付産経新聞)
等々、〝意外〟にも彼はカネの問題を度々指摘されてきた議員なのだ。とりわけ最初の朝日新聞の報道は、今回の疑惑にも絡む極めて重要な意味を学んでいる。
この間題は、既に仙谷氏が閣僚(行政刷新相)となっていた09年に、弁護士業で得た事業所得として、80万6746円を計上していたことに端を発する。
大臣規範では、やむを得ない場合を除いて閣僚の兼業は禁止されており、当時の仙谷行政刷新相が弁護士として事業所得を得ることも当然、原則認められていなかった。そこで彼は、「(弁護士)事務所の維持費が掛かるため数社から必要最低限のものを支払ってもらった。在任中に(法律相談などの)業務は行っていない」
と述べ、顧問料は受け取ったものの、具体的な弁護士活動はしていないのだから大臣規範には抵触しないと弁明したのだ。
苦しい言い訳に聞こえるが、ここで大事なのは「在任中に業務は行っていない」と明言している点だ。
であるならば、全日からの20万円の振り込みも法務相談費用の名目ではあり得ないと、仙谷氏自ら認めていることになる。言わずもがな、法務相談費用の受領とは原則禁じられている兼業、すなわち弁護士業の報酬としか考えられないからである。
畢寛(ひっきょう)、仙谷氏が全日からもらった金は、やはり大臣就任祝金に他ならなかったことになりはしないか。
「いや、あれは法務相談費用でも大臣就任祝金でもなく、通常の政治献金だった」
仮に仙谷氏がこう主張しようとしても、
「政治家個人の口座に企業・団体から金銭が振り込まれた場合、企業・団体からの寄付は支部を含む政党(例えば仙谷氏が支部長を務める民主党徳島県第1区総支部)と、政治資金団体(政党本部が一つだけ届け出ることができる献金の受け皿)に限るという政治資金規正法の規定の違反にあたり、寄付の授受の両当事者ともに1年以下の禁錮、もしくは50万円以下の罰金が科される可能性があります。なお、祝金という名目であったとしても、政治資金規正法で規定されている政治家への金銭の供与、すなわち寄付にあたることが想定されます」(総務省政治資金課)
また、全日からの20万円は、仙谷氏の個人口座から、団体献金の受け取りが法律上認められている民主党徳島県第1区総支部の口座に移して献金処理したと強弁しようとしたところで、「全ての国会議員が同じ手法を使うことによって言い逃れが可能となり、政党と政治資金団体以外への企業・団体献金を禁じた政治資金規正法に反します」(前出の山田教授)
それ以前に、全日の監督官庁である国交省の不動産業課によれば、「全日は監査を行っておりますが、全日から政治献金しているとの報告はなく、そうした事実もないと認識しております」
とどのつまり、個人口座を経由して政党支部に献金を迂回させたとの言い訳も通用しないのである。
そろそろ結論に入ろう。大臣就任祝金だろうが、法務相談費用だろうが、はたまた政治献金であろうが、仙谷氏が受け取った20万円は、どう言い繕おうにも政治資金規正法違反ないし大臣規範に抵触するとの疑惑を拭い去ることはできないのである。
そもそも政治資金規正法は、1994年の改正時点で、資金管理団体等を除いて、政治家本人への個人・企業・団体からの一切の献金を禁じた。
99年には前記したように政党と政治資金団体にしか企業・団体は献金してはならないと法改正され、時を経るごとに企業・団体献金の規制は強化されている。
ましてや、民主党は政権交代を果たした09年のマニフェストで、企業・団体献金の全面禁止を謳ってもいる。
にも拘らず、法令遵守を旨とする弁護士で、「私のようなプロ」と豪語していた仙谷氏は、到底あるまじき、不可解な「疑惑の金」を受領していたと言わざるを得まい。
「2億円でもいいですよ」
さて、当事者たちはどう答えるか。
まず全日の川口理事長は、当初は「知らない」の一点張り。ところが後に、一転して20万円を仙谷氏の個人口座に振り込んだことは認めつつ、
「週刊誌に書くんだったら2000万円くらいに書いといてくれねえかな。大臣にたった20万円じゃ恥ずかしいじゃねえか。2億円でもいいですよ」
こう開き直り、
「仙谷さんと近しい藤野(茂樹)副理事長が窓口だから。詳しいことは私には分からない」
と、責任を押し付ける有様。そこで、藤野副理事長に問い質すと、
「20万円は祝金ではありませんよ。確か大臣になってからは、そういうふうなものは法律かなんかでできないと聞いておりましたから、そんな処理はしていないと思いますがね」
語るに落ちたとはこのことではないか。これでは、彼が当初、大臣就任祝金を想定していたことを自認したに等しい。この彼の説明は、振替伝票の〝改窺〟の経緯と、ほとんど軌を一にするのだから。それでも、頑なに大臣就任祝金であったとは認めず、
「仙谷さんが大臣に就任する前に、彼には全日としていろいろと法律の相談に乗ってもらっていて、それでまとめて昨年の4月に法務相談費用をお支払いしたんです。いつ、どんな相談をしたのかは覚えていません」(同)
前述の通り、仙谷氏は国家戦略相に就任する前に、09年9月の政権交代時より行政刷新相として入閣している。藤野氏の説明が事実だとすれば、全日が仙谷氏に法務相談していたのは同年9月以前のはずで、それから10年4月20日に振り込むまで、どういうわけか少なくとも8カ月は掛かっている。こうした〝後払い〟が罷り通るのであれば、「閣僚に対して事実上の〝闇献金〟をしておきながら、それが発覚した際に、〝実は大臣就任前にお世話になった先生への労働対価でした〟との逃げ口上が許され、不明朗な献金が幾らでも可能になってしまいます」(前出の山田教授)
加えて、「ならば、なぜ最初から法務相談費用と書かずに大臣就任祝金としたのか。やはり、そもそもは祝金だったのではとの疑いを持たれても仕方ないでしょう」(「政泊とカネ」に詳しい日大法学部の岩井奉信教授)
元東京地検特捜部副部長で弁護士の若狭勝氏も、「09年9月以前の法務相談費用を、わざわざ年度が変わり、決算時期を跨ぐことになる10年4月に振り込むことは不自然であり、疑われる行為を避けようという政治資金規正法の趣旨にそぐわない」
そして、肝腎のもう一方の当事者である仙谷氏は、本誌の取材申し込みを無視。個人口座は〝開放〟しているのに、説明責任の口は堅く閉ざしたのだった。
仙谷氏が次期総理候補として推す〝子分〟の前原誠司代議士は、3月6日、外国人から年間5万円の違法献金を受け取っていた責任を取り、外相の任を辞している。20万円の「疑惑の金」を受け取っていた〝親分〟である仙谷氏の身の処し方も、自ずと決まってこよう。
これ以上、民主党を「悪」の吹き溜まりにしたくないのであれば、辞する選択肢は何も官房副長官の〝任〟だけとは限らない──。