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細胞内に存在する転移ブロッカー・デコリン

2008-09-12 | 乳癌
細胞内物質decorin(デコリン)Wiki)が、乳癌の転移を抑制することが試験管内、動物実験で認められたとトーマスジェファーソン大学から報告された。デコリンは、軟骨機能に重要な役割を果たすプロテオグリカンに属し、構造やサイズは多岐にわたり、全身に存在するタンパク質である。また、デコリンは結合組織にみられ、増殖因子やコラーゲンと相互に作用しながら細胞増殖を制御する。1990年代後半、ジェファーソン大学医学部病理学、細胞学教授Iozzo医師によりデコリンが腫瘍細胞増殖を抑制すると発見されたが、その作用は、進行の速い乳癌に認められるEGFR(上皮細胞増殖因子)とErbB2(HER2)の両方を抑制するものであった。(*ラパチニブと同じ)さらに、デコリンはp21という腫瘍細胞増殖を止めることの可能なタンパク質の産生を生じさせる。
肺転移した進行の速い乳癌マウスに高度に精製したデコリンを2週間に3回注射した。対照群には治療はしなかった。4週後、デコリン群と治療無群の原発腫瘍の大きさは同じであったが、デコリン群の転移は消えていた。追加試験では、デコリン群の原発腫瘍は70%縮小し、かつ転移巣は認められなかった。「われわれの結果はデコリンが複数の癌の治療に用いられる可能性をもつことを示している。まだ沢山の研究を経なければならないが、この毒性のない生物学的物質(体内の物質)
をもって転移を阻止することの可能性を示している。
この研究は国立衛生研究所(NIH)の支援による。
“Decorin Prevents Metastatic Spreading of Breast Cancer.” Oncogene, Feb. 2005; 24:1104-1110.
【コメントより】非常に興味深い研究である。結合組織タンパクが転移を防ぐなど誰が考えられただろうか。・・・デコリンは細胞表面のEGF受容体に結合し、腫瘍細胞の表面を粘着質にして、原発巣の腫瘍が剥がれるのを防ぐとみられる。・・
原文記事


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