昨秋見に行った「古代メキシコ・オルメカ文明展」の印象は心に深く沈澱したままです。
マヤの心に、どうやったら近づくことができるだろうかと思っていました。
そこで、マヤの口承文学「ポポル・ヴフ」を読んでみました。
「ポポル・ヴフ」について「古代マヤ文明」の著者マイケル・コウ氏は、著書の中で次のように語っています。
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(引用ここから)
「ポポル・ヴフ」に記されていた物語は、もともとの壮大な叙事詩の断片的な一部分にすぎない。
その叙事詩が完全な形で書かれた絵文書があったはずであり、それは古代エジプトの「死者の書」にも匹敵するものであったろう。
壺や皿には「ポポル・ヴフ」でおなじみの登場人物が頻繁に出てくる。
とうもろこしの神、怪鳥、猿人間の神、そしてなによりも主人公フナフプー、シュバランケーである。
フナフプーはその顔と体の皮膚に黒い斑点があることで、シュバランケーはジャガーの皮のきれはしを皮膚につけていることで、それと分かる。
「双子の英雄」は植民地時代に入っても高地マヤ人の間では「地下世界の神」とされていた。
「マヤ古典期後期」に製作された土器には、天地創造の始まりにおいて、二人が父親をよみがえらせている場面が描写されているし、「地下の国・シバルバー」の諸王を球技で打ち負かしている様子を描いているものも少なくない。
(引用ここまで)
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双子の神、地下世界、ジャガー神、、。
「ポポル・ヴフ」は4部に分かれていて、はじめの2部では民族の神話がにぎやかに活発に物語られます。
それから急に雰囲気が変わって、彼らの父祖の心情のこもった彼らの歴史が語り出されます。
その「第3部」を、抜粋して紹介させていただきたいと思います。
リンクは張っておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。
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(引用ここから)
●第1章
さてこれから、神々が人間をどのようにして創ろうとしたか、人間の肉を何で創ろうとしたかを書き始めるとしよう。
神々は、
「夜の明ける時がやってきた。
我らの仕事をなしとげよう。
我らを養い、我らの糧を用意する者達、すなわち優れた息子たち、礼儀正しい家来をこの世に出すべき時がやってきた。
地の表に人間が現れ出るようにしてやろう。」
と語った。
神々は暗黒の中で、夜の間に相集って相談し合った。
お互いに話を重ね、考えに考えを重ねた。
そしてようやく人間の肉にするものを考えだした。
それは頭上に太陽と月と星が現れ出るほんのちょっと前のことであった。
山猫、山犬、おおむ、カラスが、トウモロコシの黄色い穂と白い穂をもってきた。
これが新しく創造される人間の肉となり、また血となった。
神々はトウモロコシをこねて人間の腕や足を創った。
●第2章
最初に四人の男が創られた。
彼らはひとりでに作られたもので、母も父もいなかった。
創造主たちの奇跡により、呪術によって創り上げられたものに他ならなかった。
彼らは人間の格好をしていたから人間であったのである。
口をききお互いにものをしゃべりあい、ものを見、ものを聞くこともできた。
彼らは見渡せばたちまちはるか彼方までも見る事ができ、この世にあるすべての事を知ることができたのである。
彼らが目を見張れば、たちまち天球や丸い地表までも見渡すことができたのであった。
まことにその叡智は偉大であった。
彼らはこの世のすべてを知り尽くしてしまった。
天空と丸い地表の四隅、四点も調べてみた。
しかし、これを聞いた創造主たちは喜ばなかった。
「彼らの目の近くにあるものだけしか見えないように、彼らが地表のほんの少ししか見えないようにしてしまおう。」
創造主「天の心」は、彼らの眼にかすみを吹きかけたのであった。
すると彼らの目は鏡に息を吹きかけた時のように曇ってしまったのである。
彼らの眼にはヴェールがかけられ、近くにあるものだけしか見えなくなってしまった。
はっきりしたものだけしか見えなくなってしまったのである。
こうしてキチュー族の先祖である四人の男の叡智と知識は打ち砕かれてしまったが、我らの祖父、我らの父は創造主「天の心」、「地の心」によって、このようにして創造されたのであった。
(引用ここまで・続く)
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///様
コメントどうもありがとうございます。
ポポル・ヴフ、面白いですよね。
わたしも、一読して、これはいいと思いました。
ヒットラーの予言のことは知りませんでした。
ご紹介ありがとうございました。
予言とポポル・ヴフが関連があるということも知りませんでした。
予言書としての読み方もできるということなんですね?
たしかに、ポポル・ヴフには独特の世界がありますよね。
わたしは抽象絵画のような世界と感じますが、一種独特な、“弥勒”で言えば、「みろくの世」みたいな、不思議感がありますね。
その不思議感が、未来的な感じを感じさせてくれるのかもしれませんね。
最初に創られた人間の話や、神々が人間の脳機能を低下させた話など
宇宙と人間の関係性を抽象化して描写した物語としては最高のものでしょう
あの本のスゴイところは、これから先の人類の運命が描かれているところ?
三島由紀夫の解説もとても興味深いですね
ヒトラー予言に関する三島由紀夫の洞察と
何か関係しているのかも知れませんねー
http://inri.client.jp/hexagon/floorB1F_hss/b1fha400.html
聖徳太子の残した「未来記」や「未然記」の中に描かれた人類の未来と
「ポポル・ヴフ」の内容が符合しているところもあります