先日、親しくしている青年A君が僕にこう言った
「僕は、青年たるもの、その日その日を、面白おかしく
生きていればいいという考えではいけないと思うんです
僕は、この世から悲惨の二字、不幸をなくすという大理
想に生きます。苦労は自分を鍛える修行と思って、進ん
で買って出ます。何より、どんな人にも誠実に、そして
他人の不幸の上に自分の幸福を築くような、姑息で卑怯
で利己主義な生き方は絶対にしません」と…
目を輝かせて語るA君を、僕は口をアングリとしながら
見つめていた。あまりに感心し過ぎて、そんな顔になっ
てしまったのだ
日ごろ、「今時の若い奴らは」と舌打ちしていた僕は、
A君の神々しい決意に打たれた。頭を垂れ平伏す思いだ
った。A君のような青年たちがいれば、日本は、世界は
大丈夫だ。そんな風に思ったのだ
あまりに感動したので、A君のことを業界の仲間に語った
するとドップリと業界に染まった仲間は「そんな奴いねぇ
よ」と噴出した。彼にとっては、世の中には二種類の人間
しかいないのだった。すなわちそれは、悪人と腹黒い偽善
者だ。僕は彼の反応に少しばかり気落ちしたが、すぐに
「受けた?」と笑いに変えた
A君、ごめんね。君を空想上の人物にしてしまって。でも
君は確かに存在する現実の人間だ。そして、君の決意を現
実のものにしようとしている志高い青年だ。君の思いが、皆
の共通のものとなる世の中になるといいね。「そんな奴」
ばかりの世の中になるといいね。それは、まだまだ遠い先の
話のようだけど、そんな時代が少しでも早く来るように、僕
も協力するよ。だから、頑張ってね