Cafe & Magazine 「旅遊亭」 of エセ男爵

志すは21世紀的ドンキホーテ?
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気儘な旅人の「三文オペラ」創作ノート

連載小説「フォワイエ・ポウ」(18回)「開店」そして、結果は。。。

2006-04-07 03:40:35 | 連載長編小説『フォワイエ・ポウ』
       !?!?!・・・
 連載小説フォワイエ・ポウも、いよいよ3章・・・

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「・・・」
ここまで、
寺元マスターと木村がカウンター越しで話していた。そんな時、サンチョパンザに2組目の来客があった。来客は、なじみの客である。そして今夜は7人、、、。
(上記、17回の終りから・・・)


客の人数を見て、さらに客の内容を判断した瞬間に、
(しめた!今日はこれで出来上がった!もう今夜はこれで、大丈夫・・・)
寺元は、頭の中でつぶやいていた。
寺元の予定していた今夜の損益分岐点を越えた安堵感と達成感が、瞬時に寺元の頭をよぎった。
サンチョパンザは、規模的にはB級店ではあるが、寺元の夜の商売のフィールドは、ナイトクラブ・ビジネスである。一人当たり客単価の高いナイトクラブのビジネスは、勝負が早い。サンチョパンザの規模であれば、一晩で10名の客が入れば、文句なし、一日あたり12万円の利益ラインに完全に乗ってしまう。とにかくテーブルに座っただけで、最低1万円以上は支払わなくてはならないのが、ナイトクラブに出向いてくる客の支払いの目安である。逆に、店側としては少なくとも一人当たり平均1万5千円を請求ラインの目安としている。中を取っても、12,500円。これがナイトクラブの客単価である。
寺元は、一瞬にして気合が入った。
寺元と木村栄は、同時に声を発した。
「いらっしゃいませ!」
カウンター越しに喋り続けていた寺元と木村栄の休憩モードは、突然仕事モードに切り替わった。お客を迎え入れる挨拶をした瞬間、2人の顔は夜の営業の顔に変化していた。
とりもなおさず、2人の会話はここで中断した。

フォワイエ・ポウには、3組目の客が入っていた。
9時過ぎなってようやく、本田の弟・譲治が、仲間と一緒に顔を出していた。
同じ会社の部下を3人引き連れて来店し、奥のボックス席を占領した。すでに、会社の近くの居酒屋でアルコールの下地ができていた。五時半から課内会議があったらしく、事務所近所のいつもの居酒屋で、会議に参加した主だった連中で、食事しながら反省会をしたらしい。今尚、その仕事の延長線上の会話が飛び交っていたが、この場で一番先輩の譲治一人が喋っている。同行した部下は、いかにも静かでおとなしい。
にわかに本田は忙しくなった。
ボックス客のサービスでカウンターを離れる回数の多くなった本田と、ゆっくり会話を楽しむ時間が取れなくなった浜田と大塚は、あらためて本田に挨拶し、浜田が会計を済ませた。
「マスター、たいへんご馳走さまでした。もっともっとマスターのお話お聞きしたいのですが、今日は引き上げます。またお伺いしますので、どうぞ宜しくお願いします」
「ありがとうございます。またいらしてください、おやすみなさい」
ドアーに向かう2人の足取りは、いかにも軽やかだった。
「おやすみなさい、マスター」
店のドアーの手前で立止まった浜田は、振り返りながら、
「今夜は仕事のこと忘れて2人ともぐっすり眠れます・・・」
・・・
本田は微笑みながら会釈し、2人を送り出した。

初対面の客を送り出した本田は、なぜか清々しい気分になっていた。

時計はすでに午後11時を回っていた。
約1時間、仕事の話ばかりが続いた譲治の仲間も、ようやく腰を上げようとしていた。11時45分終発の、山陽本線JRの電車に間に合わせなくては自宅に帰宅できない部下が参加していたようであり、フォワイエ・ポウに付き合った譲治の仲間全員が、その時間に合わせて店を出た。

客を送り出した本田は、奥のボックス席とカウンター席のグラス類その他、さっそく、かたずけに取り掛かった。
わずか10名足らずの客の後始末に、そんなに時間はかからない。最期に残ったグラスを拭き終わったら、思わず、時計に目が向いた。
12時半が少し回っていた。
すでに空っぽになった店の中で、本日の売り上げの計算を始めた。
2度、計算した。
客数は、女性2名に男性2名、譲治たち5名。合計9名の来客数である。今夜の総売上金額は2万9千5百円であった。もちろんこの合計金額には、木村栄が差し出した1万円が含まれている。
結果、客単価は3千2百77円77銭・・・
と、なっていた。
本田は、もう一度確かめた。
(総売上はどうか?)
(1日あたりの最低目標である3万円には、わずかに届いていない・・・)
(あと1人、今からでも、もう1人の客が来れば、目標に届く・・・)
と、呟いたが、その実、
(もう終わりだ。今日は、これでよしとしよう!)
すでに、本田の神経は磨り減っていた。オープンした初日の売上げとして、良かったのか悪かったのか、それを判断する基準は、残念ながら本田には全く無かった。
午前1時の閉店を、決めていた。時計はすでに、12時55分を回っていた。
「この時間になって、そう、今から客が来てくれても、困る。もうホトホト疲れ果てた・・・」
久しぶりに独り言を言った本田は、手元の冷蔵庫からビールを1本取り出し、おもむろに栓を空けた。
(本田君、ごくろうさま!おつかれさま!)
もう一人の自分自身に、本田はねぎらいの言葉をかけた。
「カンパイ・・・」
まるで一人芝居だった。
ビールグラスに口を付けながら、ようやく表の看板のスイッチを切ったのは、午前1時6分だった。

           (3章・完)

*掲載済み「小説フォワイエ・ポウ」をご覧になりたい方、4月12日記事から、お入り下さい、、、。

<・・次回4章に続く(4月12日水曜日・掲載予定)・・>

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<画像説明>
撮影場所:バリ島・レギャン通り、バリ風「レストラン&バー」
撮影日:2004年7月
備考:キッチンバー代わりに、朝・昼・夜・深夜を問わず2日に一回、必ず顔を出す「行きつけ」の店。
(ゆめゆめ接待には使えないですぞ)

ちなみに、
・American Breakfast= about300.-
・Lunch= abt.350.-/ 500.-・・・
・Dinner= abt.450.- / 700.-・・・
・Bintan Beer= ? maybe 160.-
・Traditional Bali-Style Dishies, Australian Foods, Sea Foods, etc.
* 表示価格は、いずれも日本円換算(正直、正確には覚えていない!全部アバウトですが、決して外れてはいない? まあ、まるで学生食堂並み?あるいは、それ以下のPRICEですから、うれしい、、、)

オーナーは豪州人女性。スタッフ全員、バリ人。
朝は9時半から開店、深夜1時までノンストップで営業。我輩の「隠れ家」から徒歩で3分。レギャン通りに面した便利の良い場所にある。


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8 Comments

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常連さん (tono)
2006-04-07 08:26:00
浜田さんと大塚さんの二人は、「常連」になるのでしょうか。



博多の街には、所謂「中州」だけでなく、至る所に「屋台」が有ります。

繁華街はともかく、少し外れた所は、やはり「常連さん」が支えています。

店と客では有りますが、有る意味「店のおやじ」と「シンパ」みたいになっています。



先日、知り合いの屋台が営業を辞めました。

何十年も続いていました。

最後の日、狭い屋台は「常連さん」の祝い酒と花束で足の踏み場もない状態です。

最後は、若い娘もいい年のおっさんも涙涙・・・



全くジャンルが違いますが、

「フォワイエ・ポウ」はどんな客層が集まり、

マスター本田さんに、「シンパ」が現れるんでしょうか。

楽しみです。

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tonoさん・・ (エセ男爵)
2006-04-07 09:48:07
コメントありがとうございます。

「常連さん」~=「シンパ」・・・

この類いの店、そういう顧客によって支えられている超零細事業体なのです。当時、そういうお店が街中にあったのです。しかし、あれから約20年余りたった今日現在、少しずつ少しずつ「そんなお店」が目減りしているようです。

屋台!

博多の屋台、長崎の屋台、、。

出張の時、数回行った記憶があります。

わが街には「屋台営業」が何故か、許可されない市の条例が出来ており、ふがいない事であり、不本意に思います。当局に言わせると「衛生管理」に問題あり。と、云いますが、私が思うに「ヤクザとの関連」があるのではないかと思います。夜の街の「在るべき情緒」がなくなり、残念です。

もう一度「屋台復活」を叫ぶ声があるのですが、元気がない・・・

こういうお店が「閉店する時」、状況、目に浮かびます。お客の皆さん、それぞれに思い出があるのですねえ~

だから、涙、涙、、、。

この情景、この場面、巷の三文オペラ劇場で例えれば、「屋台の大将」の男冥利に尽きる名場面です。が、いかんせん、商売とは正比例しないところが「現在の現状?」なのだと思います。

話戻り、

Bar「フォワイエ・ポウ」の、シンパ・・・

さて、どんな「シンパ」が集うのか?!

シンパの織成す「人間模様」を描きたいと思います。

宜しくお願いします。
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やっぱり (刀舟)
2006-04-07 15:48:17
開店初日は疲れるでしょう。

特に新しい業種であり、

1人で全てを行わなければいけない。

傍に、頼ることが出来る人間がいるわけでもない。

どう考えても疲れそうです。



人間的な魅力の高い本田さん。

その長所をこの職種でうまく活かせると良いですね。
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Unknown (TS@捻くれ者)
2006-04-07 22:19:00
客単価。

サンチョパンザでもフォワイエ・ポウでも出てきましたね。

これにより本田さんが後々テーブルチャージ料をいただく事になるのですね。



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Unknown (kachan)
2006-04-08 00:16:03
一人でお店を切り盛りしている本田さん

大変でしょうね。私の友人もお店をもっているんですが、それは大変らしいです。学生時代には想像もできなかったのですが、お客さんとのコミニュケーションが楽しいらしい…。



ところで写真のお店ステキですね!

バリ島なんですか?

エセさまは、いろんな所に

行かれているのですね。



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刀舟さん・・ (エセ男爵)
2006-04-08 10:35:19
一人でやっていける店かどうか?

未だ、本田には見極めがつきません。

人を雇うかどうか?

人を雇えば、即刻人件費が出てしまいます。

人件費を如何にして絞り込むか?が、この業種の損益分岐点に、大きく作用するわけです。

結局、大学生を雇って店を進めて行く羽目になるのですが、、、。
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TS@捻くれ者さん・・ (エセ男爵)
2006-04-08 10:49:50
コメントありがとうございます。

客単価を定める事の重要性、また解っていないのです。

自分の店のカテゴリーとクオリティーを定めきれずにいる本田マスター。

ホステスを雇って商売する、いわゆる社交業のカテゴリーである「サンチョパンザ」と比較は、不可能です。サンチョパンザの場合、客単価は高くなり、その分、ホステスの人件費をまかなわなければならない。

そこに、

寺元マスターと本田マスターの根本的な違いがあるのです。

寺元はわかっているのですが、この時点の本田マスターにはわからない。

この後、本田マスターは少しずつ、店のシステムを構築していくのです。そこにテーブルチャージの問題が出てくるのですが、この問題を乗り越える為には、店の「付加価値」が必要。違法ですが、昔は酒屋さんの店先に小さなカウンターがあり、これを「立ちキュー」と称してました。

ここでは、仕事の終わった安サラリーマンや労働者諸君が酒屋で酒を買い、「一合升一杯!幾ら?」と、酒屋の価格で酒代のみ払えばその場で飲ませてくれるシステムがありました。酒屋は店先を貸すが、小売の酒代しか取らない。付加価値なしで店先を貸していました。今はもう、なくなっているはずです。

飲食の世界、いかに付加価値を取って商売するか?

だから「水商売」なのです。

面白いですねえ・・・

なんだか、儲かりそうですねえ・・

かといって、簡単に素人が「水商売」に参入しても、なかなか簡単には巧くはいかない。

そこが、水商売の水商売たる所以です。

このあたり、TSさんも良くご存知かと?
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kachanさん・・ (エセ男爵)
2006-04-08 10:56:29
コメントありがとうございます。

歳を取るごとに、人間(特に男性)は、大きく変化していきます。人生も上下に大きく変動します。人によって様々だとおもうのですが、そこが人間の面白いところだと思うのです。

バリ島・・・

面白いお店があります。

でもって、私の商売は「車寅次郎」と同業?

全国津々浦々のみならず、地球津々浦々を放浪するヤクザな男、不逞の輩なのです・・・

ブログを通してご覧頂くと、おおよそ正体を見破られますが・・・
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