Cafe & Magazine 「旅遊亭」 of エセ男爵

志すは21世紀的ドンキホーテ?
はたまた車寅次郎先生を師に地球を迷走?
気儘な旅人の「三文オペラ」創作ノート

富士東山麓Auberge Blancheより、名画「ドクトルジバゴ」を想う・・・

2005-11-21 08:42:14 | つれずれ紀行
『エセ男爵の日誌(2004年11月12日)』
 (一流コンシェルジュ「日々・三文オペラ的日誌」より)

   「遊歩道のどんぐり林」

         (1)

 まわりの環境に慣れたせいか、ペース配分がうまくいき、夜はよく眠れる。このごろは六時すぎに目が覚める。早起きは、健康維持の基本である。このような環境への適合状況は、我輩にとって望ましい傾向である。
すでに晩秋、この季節この時間が日の出の時間である。場所は静岡県駿東郡小山町須走某丁目某番地、標高約八百メーターに位置する当館の南東に面する建物裏側の四階が寮になっており、富士山の真裏ではあるが我輩の部屋からの眺めはすばらしい。眼下のどんぐり林と杉林から始まり、遠く足柄山および箱根方面まで全く視界をさえぎる人口構築物がなく、ダイレクトに日の出が拝める。
しかしなぜか今朝は、朝はカーテンの外が心持ち暗く感じる。「今朝は雨か?」眠気が十分に覚めやらぬままベッド上を這い窓の方向に向かう。カーテンをおもいっきり開き、日の出の方向、つまり当館の東南方向の山々を遠望する。
「だめだ、今朝はまったく山が見えない」
夜は明けているものの、遠方の空は厚い雲に覆われ視界が悪くて全く見通せない。
「網戸越し窓越しでは仔細が分らない」
網戸を開け、さらにガラス窓を開き眼下の森林と遠方の山々を観察する。窓越しには見えなかったが、なんと、窓を開ければかなり強い雨が降っているではないか。地面はおろか窓の外には雨をさえぎるものが全くないので、雨音が全く聞き取れないのだ。
取るものも取敢えず、低血圧の状態で体をアイドリングさせながら頭脳に血液を送り、且つ目覚めながら緩々(ゆるゆる)とベッドを降りる。

こうして、おもむろに部屋の窓から箱根方面の山を眺めた後、いよいよ我輩の「朝の日課」が始まる。
まずは1Fのキッチンに降り、コーヒーメーカーにスイッチを入れる。
ここのコーヒー以外は、飲めなくなってしまった。
まちがいなく最高に美味しい。というより、この濃い口のコーヒーは、1ヶ月間で我輩の口にぴったり合った美味しさになった。
エスプレッソの濃いコーヒーがシューと蒸気音と共に「デミ・カップ」に注がれる。砂糖とミルクを多めに入れる。富士山麓の伏流水を研いだ当館にて製造するミネラルウオーターとともに、濃い味のコーヒーを、少しずつ飲むのがいい。
しかし朝一番で(おおよそ午前7時前後)キッチンに降りると、これがすぐ飲めない。まず、スイッチを入れて十分以上過たないと、メーカーの中の水温が十分に上がらない。強力に温度を上げておかないと、まともなイタリアンコーヒーが出来上がらない。従業員のワーキングタイムには、常時スイッチが入っており、いつ何時(なんどき)でも、相当おししいコーヒーが立てられるようになっている。付け加えておかねばならないが、ユメユメ従業員専用の飲物ではなく、お客様にご用意した当館のレストラン顧客に具する、上等の代物なのである。従業員が何倍飲んでもOK、問題にはならない。ちなみに、おそらく、たぶん我輩が一番たくさん愛飲していると思われる。そう、今日はまだ7時になっていない。7時乃至7時半にならないと、キッチンもレストランスタッフも誰も出てこない。誰から依頼されたわけでもないが、このところ、我輩がコーヒーメーカーのスイッチの「立ち上げ係?」の当番に着任しているらしい。
暖まるまで、とりあえず時間待ちの為に、いつもなら人気の無いパントリーでタバコを一服するのである。が、今朝はタバコを切らしている。コーヒーメーカーが暖まる間、客室専用エレベーターで3Fのタバコ自販機に出向いた。
タバコを買った後、またエレベーターのある踊場に戻りボタンを押し、少し待った。客室28室の当オーベルジュの客室エレベーターは一基しかなく、昇降速度はまことに遅い。
その間1分~1分30秒位かかるか。
エレベーターの踊場の北側、わずか3メーター程度のスペースにくり抜かれた窓枠がある。長方形で窓の上部が半円形、ヨーロッパ調のカーテン越に北側のパーキング場につながる遊歩道を覆いつくす樹林に目が向く。

当館の遊歩道といくつかの駐車場を覆う例のドングリ林が、スッカリ冬めいている。この一週間で既に鮮やかな黄色に変化していたが、今朝はその葉の数が明らかに減少し、林全体がそれぞれの幹から無数に伸び茂る枝葉で覆いつくされていたものが、今朝は幹や枝がむき出しになっているではないか。
これは今までに、確かに何所かで見ている。我輩の記憶にしっかりと残っている風景であった。
そんな記憶をたどる暇もなく、待っていたエレベーターが来た。そのまま乗った。エレベーターの中で記憶を辿っていたら、とっさに、いや、ようやく思い出した。
 
 <・・続く(合計2回)・・>

毎日一回、クリック応援を!(人気ブログランキング)