170108 公共事業をちょっと考える 生産性改革と品確法の改正は期待できるか
今朝は起きると地面が湿っていました。雨かなどうかなと思い外に出ると、細雨です。私には慈雨となりました。昨日の草刈はやはりあちこちに筋肉痛がでて、あまり作業をしたくない気分。この程度の雨はなんでもないのですが、気持ちが乗らないときはエスケープが一番です。
とはいえ昨年末までに仕上げておくはずだった会計処理ができていなかったので、午前中は数字とにらめっこ。その後は恒例のNHK囲碁対局の観戦です。今日は山下敬吾九段と羽根九段で、予想違わず序盤から猛烈な闘いで、訳が分からない私には、どうやって生きを図るのかさっぱり分からないけど、面白いのです。この棋譜を碁盤に並べるのも一興ですが、結局、分からないので、ただ眺めるだけです。
で、今日は何をテーマに何を書こうかと考えています。新年に入り、新聞を見ても、どうも興味がわかない記事ばかりというと、懸命に世界中で秒単位未満で起こっている多種多様な事象から懸命に記事になる題材を探し、あるいは長期間にわたって調査して書き上げた物もあるでしょうから、こういう風に関心を呼ばないといわれるとがっかりするかもしれません。ま、人それぞれですから、興味関心は十人十色ですので、誰かが関心を持てばいいのでしょう。
数日前のウェブサイトの記事で、<仕事のミスをなくす。「絶対に忘れない」テクニック>というのがちょっと興味を引きました。認知症一歩手前の身としては、忘れないテクニックというのは、よくある宣伝文句の切り口上とはいえ、やはり気になります。
この記事にでは、「ワーキングメモリ」というキーワードを持ち出して議論を展開してます。まず、次のようにその意義について解説し、次に問題解決策を提示しています。
<記憶についての研究が各所で進み、「ワーキングメモリ」という記憶回路が、覚えた直後に忘れてしまう原因だと分かってきました。ワーキングメモリとは、脳のメモ帳のようなもので、情報を長期間にわたって貯蔵する「長期記憶」とは異なり、何かの目的のために一時的に貯蔵される記憶領域のことです。ワーキングメモリの容量はとても小さく、新しい情報が入ってくると、古い情報がはじき出され、その瞬間に忘れてしまいます。>
そのとおりと自分の体験を振り返りながら同感します。情報が多すぎ、複雑すぎ、瞬間的な記憶は新たな多様な情報がインプットされると、いつの間にか記憶の彼方に消え去っています。それはそうだとここまでは納得。
次にその解決策ですが、一つはメモをとることです。<メモに残せばワーキングメモリを解放できる>といっていますが、ともかく必要な情報はその都度メモにするということです。これは当然というか、誰もが行っていること、あるいはそうしなければと思いながら、なかなかメモをとれないでいることが問題だと指摘されているようにも思えます。
もう一つは、<場所とイメージで覚える「場所法」>をあげています。場所法について 3つのステップとして、次のように進めるというのです。
1. 記憶する場所を決める。
2. 記憶したい項目をイメージに変換する。
3. 1.で決めた場所に2.で変換したイメージを置く。
これまた、昔から多くの記憶力有能な方々が提案した一つですね。記憶力の世界大会参加者なんかも取り入れていますね。自分でもやったことがあるかというと、そこまでして記憶しておこうという必要性を感じないのか、ただ、無精なのか、経験がありませんが、おそらく有効な方法だと思います。なんどもこのような記憶力の解決法を見聞したりしてきましたが、今なおこれら以外の方法がなく、唯一なのかと驚いたわけですが、覚えるのに王道はないということでしょうか。
とはいえ、そういうとすぐ思い出されるのが、空海が会得した、「虚空蔵求聞持法」という絶対の記憶力の獲得法でしょうか。どんなものかと一番気になる方法ですが、普通の人間にはやはりそういう超天才というか神的存在の人のみが可能な記憶力獲得法として知識として知っている程度で十分かもしれません。
と長々とまた前置きを連ねてしまいました。今日は、日経コントラクション・2017年1月9日号の記事に少し注目して、一部に触れてみたいと思います。
一つは、<生産性革命プロジェクト◆労働力の減少を効率アップでしのぐ>という見出しで書かれた、「生産性革命」という大胆な標語を掲げた国交省のプロジェクトです。実はアベノミクスの内容が標語は立派なのですが、なかなか実体の伴わない張り子の虎のようにも感じてしまう私です。といっても実際どんな三本目の矢が放たれているのか具体的にはよく分からないので、偉そうに批判するのは控えています。
そんな中、国交省が「生産性革命」本部というのを16年に設置して、生産性の革命を行おうとしていたのは知りませんでした。その内容は、革命に値するのか、少なくとも生産性向上に有効なものかは検討しておく必要があるかなと思って、概要を見てみました。
記事によると、同本部は計20の事例を先進的な取り組みとして「生産性革命プロジェクト」に選定。プロジェクトは大きく三つに分類されるとのこと。以下見出しのみ整理します。
1 社会のベースの生産性を高める
[ピンポイント渋滞対策]
[新たな高速道路料金]
[クルーズ新時代に対応した港湾整備]
[コンパクト+ネットワーク]
[インフラメンテナンス革命]
2 産業別の生産性を高める
[本格的なi-Constructionへの転換]
3 未来型の投資・新技術で生産性を高める
[科学的な交通安全対策]
その他 産業別や未来型のプロジェクトも
上記のプロジェクトを見ると、一定の効率化を図る手法であることは理解できます。でも、これ以前から言われてきたことではない?なんて思うのは皮相的な見方でしょうか。
交通渋滞策は重要です。渋滞の原因としては交通渋滞の科学的分析で、その要因のいくつかは解明され、提示されてきたと思います。交通政策、ひいては集中する通勤・休暇による移動の問題、道路構造・車線の問題、ドライバーの運転方法の問題、高速料金の価格設定と無料化の問題など、多様な問題と解決策がなんども議論されてきたかと思います。しかし、ここで取り上げられた渋滞解消策は、生産性改革と名乗るほどの特別な有効策かとなると疑問符をつけたくなります。
そもそも交通政策における需給予測自体、かなりあいまいなデータ予測で、道路の新設などを安易に行ってきたのが過去の公共事業の悪い例です。ここで取り上げられたピンポイントで渋滞が起こっていることを的確に対応すれば、費用対効果上も効率的な対応策が可能なのに、長い間このような分析を科学的合理性をもって行ってこなかったことのつけかもしれません。それを生産性改革というのはいかがなものかと思ってしまうのです。
いずれも派生的な対応で、生産性改革という名前に値するのか疑問を感じるのは私だけではないように思えます。
たしかに、本格的なi-Constructionへの転換は、ドローンを使った三次元測量やICT建機による施工など、全プロセスにICT(Information and Communication Technology)を活用と言う点は、いまはやりのドローンの積極的活用やICT建機といった新しい機械・ソフトの活用という点で、期待を感じさせてくれます。しかし、現場サイトで、どこまでこれらを利用できる、受け入れることが可能なのか、より具体的実践的な事例なり試行事業なり提示して、現在の事業形態をステップアップする方向性を提供しないと、絵に描いた餅になるか、極めて狭い領域での利用に止まり、生産性改革といった本格的な改革には繋がらないように思ってしまうのは穿った見方でしょうか。
もう一つ関心を抱いた記事があり、それは<施工時期の平準化◆余裕期間の活用広がる>です。
公共事業の場合、よく言われるのは、年度末に急に工事が集中して行われるといったことはよく聞かれるでしょうし、身近に見聞する人も少なくないのではないかと思います。他方で、年度初めはほとんど事業がない場合が多いということはご存知でしょうか。
これは一般化して説明すると、誤解が生じるかもしれません。ただ、公共事業や交付金・補助事業を見てきたわずかな経験からいえば、事業側にとっては補助事業等は利益率が高いものではない、他方で、その事業を完成すれば確実に補助金等が支給されるので事業の収支の安定には寄与するとの感覚ではないかと思ったりしています。すると、利益率の高い事業を優先し、補助事業は後回しになることは傾向としてはあるのではないかと思うのです。他方で、行政側も年度末近くになると、補助事業の進行状況が判明し、使い切っていない補助金があると、来年度の予算獲得の意図もあり、全部使い切るため、いろいろな名目で事業を行い補助金を使い切るといった姿勢が長い間に慣例化しているのではないかと思っています。(公共事業と交付金事業、補助事業が混在していますが、とりあえず補助事業を中心に公共事業をも考えています)
そうすると、事業体の年間収支でいえば、年度初めはほとんど補助事業がなく、その後一定時期に集中するという、事業体が抱えている労働者・機械・資材の効率的・安定的な活用ができていることにはならないかもしれません。むろん高い収益性のある事業をとっていれば別ですが、建設事業全体が総体で減少している中、それほど収益性の高い事業が多くあるわけではないでしょうから、安定的な事業運営とはならないでしょう。
いろいろ書きましたが、今回の施工時期の平準化自体は、本来的な方向性を示しているのではないかと思います。記事では、<14年6月に改正された「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(品確法)でも、発注者の責務として計画的な発注と適切な工期設定に努めることが明記された。>とあり、住宅建築の品確法には一般的な関心が寄せられていますが、公共工事も本来、身近で重要な事業ですから、品確法が適切に運用されることが期待されます。
とくに国交省が15年1月に品確法運用指針を作成し、<「適切な設計変更」と「予定価格の適正な設定」を運用指針の重点項目に掲げ>たうえ、<15年度に設計変更ガイドラインを改定。>とありますので、今後はこの改定ガイドラインで適正に設計変更が行われることを注意して見守りたいと思います。