白夜の炎

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安定に向かいそうなウクライナ 2014年9月19日   田中 宇

2014-09-22 19:00:50 | 国際
「 9月16日、ウクライナ議会が、EUとの経済関係を強化する連合協定を批准した。批准とともに協定が発効し、EUがウクライナから輸入する製品の関税が引き下げられた。この協定は、最終的にウクライナがEUに加盟することを視野に、ウクライナとEUが関税引き下げなどの貿易や投資の自由化を盛り込んだもので、当初は昨年秋に締結される予定になっていた。

 当時のウクライナのヤヌコビッチ政権が、EUとこの経済協定を結ぼうとした矢先に、ロシアが横やりを入れ、EUとの協定を結ばずロシアと協定を結ぶなら巨額の支援をしてやると持ちかけ、ヤヌコビッチは昨年11月末、EUでなくロシアの提案に乗った。この転換に怒ったウクライナの極右主導の反露勢力が、米国の支援を受けてヤヌコビッチ政権を転覆する運動を開始し、今年2月にヤヌコビッチ政権を倒して極右主導の新政権を樹立したところから、今のウクライナ危機が起きている。 (プーチンを強め、米国を弱めるウクライナ騒動)

 EUとの経済協定の問題はウクライナ危機の発火点であり、ウクライナ議会がEUとの協定を批准して発効させたことは、ウクライナをめぐるEU(欧米)とロシアとの引っ張り合いが、EUの勝利とロシアの敗北に終わったことを示している。ウクライナはロシアから遠ざかり、EUに近づいたと、英国などの新聞が報じている。 (Ukraine approves historic EU deal, breaking ties with Moscow)

 しかしよく見ると、事態の本質は微妙に違う。ウクライナ議会がEUとの協定を批准する4日前、EUとウクライナ、ロシアの代表がブリュッセルで交渉し、EU連合協定の最も重要な部分の一つであるウクライナとEUが自由貿易協定(FTA)を締結する条項を協定から外し、FTAの締結を再来年まで延期し、FTA以外の事項だけウクライナ議会が批准することが決まった。ウクライナを経済面で自国の傘下に置き続けたいロシアは、EUとウクライナがFTAを締結することに特に反対していた。FTA以外の経済協定はロシアにとってさほど脅威でなく、FTAが除外されたことは、ウクライナをめぐるEUとロシアの経済陣取り合戦で、ロシアが勝ったことを意味していると報じられた。 (EU-Ukraine integration pact postponed till 2016 after talks between Moscow, Kiev & Brussels)

 ウクライナ議会がEUとの協定を批准したことは「EU(欧米)の勝利」と報じられ、その直前に協定からFTAが外されたことは「ロシアの勝利」と報じられている。この経済戦争は、どちらが勝ったのか。この疑問についてドイツの放送局ドイチェベレの記事は、ウクライナで議会がEU協定を批准した直後、FTAが外された状態で批准されたことに抗議して外務次官が辞任したことを紹介している。交渉を担当した外務次官が、ロシアの圧力に屈して大事なFTA条項を外してEU協定を批准せねばならなくなったことを敗北と感じて辞任した以上、今回の件はロシアの勝利だというわけだ。 (Russia, West delay key element of EU-Ukraine trade deal)

 FTA条項の要点は、ウクライナがEUからの輸出品の関税を大幅に下げることだ。ウクライナは冷戦後にソ連から独立したものの、ロシアとの経済的な一体化が残っており、ウクライナにEUの製品がほとんど無税で入ってくると、それはそのままロシアに流入し、ロシア経済に打撃を与える。だからロシアはFTAに反対し、FTA条項を外さない場合、ウクライナを経済制裁すると脅した。ウクライナはロシアの脅しに屈し、EUとの協定から輸入関税撤廃のFTA条項を外した。

 これだけ見ると「悪の帝国」ロシアが、帝国から自立したい善良なウクライナに圧力をかけて屈服させた話になる。しかし、この交渉にはEUも入っている。EUは、ロシアをことさら敵視してウクライナの政権を転覆して危機を起こした黒幕の米国と「同盟関係」にある。EUとロシアが対立し、EUとウクライナの協定が結べないままだと、米国がEUを引っぱり込んでますますロシアを敵視・制裁し、その悪影響はEU自身が最も受けてしまう。 (◆危うい米国のウクライナ地政学火遊び)

 EU(独仏)は、ロシアとの敵対が激化することを好まない。今のように米欧とロシアが敵対していると、米国が欧州を傘下に入れたままロシアと恒久的に対立し続ける冷戦構造が復活し、EUは対米従属から離脱できず、EUが進めたい政治統合やその先にある対米自立も、米国が作る新たな冷戦構造によって妨害されたままになる。米国がウクライナ危機を誘発してロシア敵視の構造を再強化したのは、EUが統合して対米自立していくことを阻むのが隠れた目的だ。 (◆NATO延命策としてのウクライナ危機)

 このような、米国がEUに対して隠然と行っている迷惑行為を乗り越えるためには、EUがウクライナにおけるロシアとの敵対を解消せねばならない。しかし同時に、EUがロシアに対して屈服したかたちになると、米政界を牛耳る好戦派が怒ってEUを非難し、EU内に残存する対米従属的な勢力も、ドイツのメルケルらEU指導部を非難する。だからEUは、形式的に、ウクライナとの経済協定を締結し、ロシアに屈服していないことを象徴的に示さねばならない。

 このあたりのことはプーチンのロシアも良く知っている。だからロシアは、EUがウクライナと経済協定を結ぶことを認めた。しかし同時にロシアは、自国の面子や利権が尊重されることも求めた。両者の折衷策として、ロシアに不利になるFTAの締結を先送りして「ロシアの勝利」とした上で、FTA以外のEU経済協定をウクライナが発効させて「EUの勝利」にするという、玉虫色の解決がはかられた。昨秋来のウクライナ危機の発火点であるEUとの協定が、欧露の和解のもとで発効したことで、危機は解決への第一歩を踏み出したといえる。ロシアがウクライナ経由でEUにガスを再輸出する件についても、交渉が再開することになった。 (Russia, EU, Ukraine may hold gas talks on Sept. 26 in Berlin)

 欧露関係の改善を感じさせる今回の解決について、米国からは何も目立った批判が出ていない。米国は欧露の関係改善の始まりを黙認している。たぶん、関係改善がもっと進展して不可逆的になってから、米国は急に騒ぎ出すだろう。手遅れになってから騒ぐ稚拙な(隠れ多極主義的な)やり方が、近年の米国の常だ。 (ウクライナでいずれ崩壊する米欧の正義)

 米政府は、欧露和解を黙認する一方で、米国の石油会社(メジャー)がロシアで石油ガス田の開発に参画することを禁じる対露経済制裁を発動した。メジャーは2週間以内にロシアから撤退せねばならない。この制裁はロシアの石油ガス産業を困らせる名目で、短期的にロシア側は困窮する。だが長期的に見ると、米国勢が撤退した穴埋めに、中国やBRICS、欧州大陸諸国などの石油会社が入ってくる。ロシアから撤退させられ、利権を失って損をするのは米国企業の方だ。ロシアの石油ガス開発から米国勢が撤退するのは自滅的だと、石油業界の内部から警告が発せられている。 (Fresh sanctions will freeze big foreign oil projects in Russia) (Former BP CEO Warns "Sanctions Will Bite West" As US Gives Majors 14 Days To Wind Down Russian Activities)

 今回の動きには、もう一人重要な人物が関与している。EUとロシアが相互の面子を立てつつうまく和解しようとしても、ウクライナ自身が反露的(米国傀儡的)な極右政権だと、和解に反対し、欧露間の謀略を壊してしまう。ヤツェニュク首相は極右の反露派だ。抗議の辞任をしたウクライナの外務次官も、たぶん反露派だ。次官が抗議した相手は、ヤツェニュク首相よりさらに上にいるポロシェンコ大統領だろう。以前の記事に書いたように、ポロシェンコはおそらく「隠れ親露派」であり、プーチンと諮って今回の欧露和解への道に協力している。 (ウクライナを率いる隠れ親露派?)

 ポロシェンコは5月の大統領選で勝利し、大統領に就任した直後の6月はじめ、今回議会が批准したEUとの協定に署名した。彼は今回の議会批准も礼賛し、反露・親欧米の姿勢をとっている。しかし、この姿勢は人気取りのための表面的なものだ。彼は、欧露和解策としてのFTA抜きのEU協定の発効を押し進めただけでなく、ロシアの仲裁を受けてウクライナ東部の親露派勢力との停戦・和解にも乗り出している。 (ウクライナ軍の敗北)

 ポロシェンコは3年間の期限つきで、東部の親露派に自治拡大を認めた。東部の地元勢力に警察権を与え、事実上、東部の親露派武装勢力がそのまま地元の警察として治安維持にあたることを認めた。 (Ukraine Grants `Special Status' for East to End War)

 もともと士気が低いウクライナ政府軍の兵士の多くは、停戦や和解に安堵しただろうが、親露派を皆殺しにしようと東部におもむいて内戦を戦ってきた極右の民兵とその上司たち(政界の極右政治家)は、このポロシェンコの和解策に激怒している。ロシアに譲歩した上でのEUとの協定締結に対する不満と合わせて、ポロシェンコを非難する抗議集会が首都キエフで発生している。 (Ukraine President's Days Numbered After Broad Accusations Of "Betraying National Interests")

 しかし、極右がポロシェンコから権力を奪うことは日に日に難しくなっている。厭戦気運が強まっていたウクライナの世論は、極右を支持しなくなっており、極右の支持率はひと桁台に落ちている。ポロシェンコはこのような極右の凋落を見た上で、10月に議会選挙を行うことを決定している。極右のヤツェニュク首相は、極右の再起を狙って新政党を立ち上げて選挙に臨む構えだが、支持拡大は難しい。選挙で勝ちそうなのはポロシェンコ自身の政党だ。ウクライナはポロシェンコのもとで、政権から極右を排除して内戦を終わらせる安定化に向かっている。 (`War' and `peace' factions split Ukraine politics)」

http://www.tanakanews.com/140919ukraine.htm

吉田証言など一切関係なく安倍首相や櫻井よしこ氏の慰安婦ヘイトスピーチと二枚舌が国際的に批判されている

2014-09-22 16:15:04 | 政治
「安倍首相がまたトンチンカンなことを言っています。
安倍晋三首相は14日のNHKの番組で、朝日新聞が慰安婦を巡る吉田清治氏(故人)の証言を伝えた記事を取り消したことについて、「朝日新聞自体がもっと努力をしていく必要もある」と述べた。首相は番組で「日本兵が、人さらいのように人の家に入っていって子どもをさらって慰安婦にしたという、そういう記事だった。世界中でそれを事実だと思って、非難するいろんな碑が出来ているのも事実だ」と指摘。その上で「世界に向かってしっかりと取り消していくことが求められている」「一度できてしまった固定観念を変えていくのは、外交が絡む上では非常に難しい」などと述べた。

出典:朝日新聞2014年9月15日付 安倍首相「朝日新聞が努力を」 慰安婦記事取り消し
これに輪をかける「産経新聞」の報道です。
かつて1人の男の作り話が、これほど日本の国際イメージを損ない、隣国との関係を悪化させたことがあっただろうか。朝鮮半島で女性を強制連行したと偽証した自称・元山口県労務報国会下関支部動員部長、吉田清治のことだ。吉田の虚言を朝日新聞などメディアが無批判に内外で拡散し、国際社会で「性奴隷の国、日本」という誤った認識が定着していった。

出典:産経新聞9月8日付「朝日新聞はどう報じたか 初登場昭和55年3月7日付横浜版、女性強制連行の言及なし」
「1人の男の作り話ガー」というすごい妄想ですが、いま問題になっている「吉田清治氏の証言」を朝日新聞が取り上げたのはいつだったでしょうか?
朝日新聞は1982年以降、吉田氏の証言を記事やコラムで取り上げた。証言内容を疑う指摘が92年にあり、朝日新聞は97年に「真偽は確認できない」との記事を掲載し、以降は吉田氏の証言を取り上げていない。

出典:朝日新聞8月28日付「慰安婦問題 核心は変わらず」
朝日新聞が「吉田清治氏の証言」を取り上げていたのは、1982年から1997年の間だったわけですが、「世界中でそれを事実だと思って、非難するいろんな碑が出来ている」のは、いつからでしょうか?

アメリカに「慰安婦」の碑が初めて出来たのは、ニュージャージー州のパリセイズ・パークですが、2010年10月に設置されたものです。朝日新聞が1982年に「吉田証言」を取り上げてから28年も経過しているわけです。「日本兵が、人さらいのように人の家に入っていって子どもをさらって慰安婦にしたという、そういう記事だった。世界中でそれを事実だと思って、非難するいろんな碑が出来ているのも事実だ」と安倍首相は言っていますが、「吉田証言」が本当に「碑」が出来る原因ならば1980年代に出来ていたはずです。28年も経過したあとに出来た「碑」を「吉田証言」のせいにするのはあまりに乱暴な話です。

それから、安倍首相は、「日本兵が、人さらいのように人の家に入っていって子どもをさらって慰安婦にしたという、そういう記事だった」のが「吉田証言」で、それがウソだったのだから「慰安婦は世界中から非難されるような問題ではないのだといわんばかりです。過去にも安倍首相は、前回の首相時代に、「官憲が家に押し入っていって人さらいのごとく連れていくという強制性はなかった」(2007年3月5日の参議院予算委員会)、「この狭義の強制性については事実を裏づけるものは出てきていなかったのではないか」(2006年10月6日の衆議院予算委員会)などと言っています。

安倍首相は自分勝手に「狭義の強制性」「強制連行」なるものを作り上げてそれを否定することで「慰安婦問題」をなかったことにしようとしていますが、「狭義の強制性」についてもオランダ人女性を強制的に慰安婦にした事実認定として、「スマラン事件」の公文書がありますし、日本の司法によってさえすでに事実認定されています。さらにいえば、「狭義の強制性」「強制連行」なるものが存在しなかったと仮定したとしても、「慰安婦」は、当時の国内法・国際法に照らしても違法でした。

安倍首相の理屈では北朝鮮の拉致問題もなかったことになる
仮に安倍首相が主張するように「狭義の強制性」「強制連行」を証明する証拠の文書がなければ、世界から非難されるような問題はないとした場合、北朝鮮の拉致問題も世界から非難される問題ではなくなってしまいます。

安倍首相の「狭義の強制性」「強制連行」の理屈を北朝鮮の拉致問題にあてはめると、「官憲が家に押し入っていって人さらいのごとく連れていく」というケースが確認されていませんから、北朝鮮に拉致された人も「狭義の強制性」「強制連行」はなかったから世界から非難さるような問題ではなくなってしまいます。

そして、日本軍による「狭義の強制性」「強制連行」を示す公文書などの証拠がないから「慰安婦問題はなかった」という理屈をあてはめると、北朝鮮の公文書が明らかになるまでは「北朝鮮の拉致はなかった」ことにもなってしまいます。

北朝鮮によって拉致されたと日本政府によって認定された人のなかには、神戸市の飲食店店員だった田中実さんのように、「複数の証人等から、同人が甘言に乗せられて北朝鮮へ送り込まれたことを強く示唆する供述証拠等」から「甘言により海外へ連れ出された」(警察庁発表)と、北朝鮮に公文書がなくても「証人の供述」を証拠として拉致を認定しています。この田中実さんのケースは、「狭義の強制性」「強制連行」を示す公文書などの証拠はないのに、北朝鮮に拉致されたと認定されているのです。

「慰安婦」については、「狭義の強制性」「強制連行」を示す公文書などの証拠がないから問題ではないと言っておいて、「北朝鮮の拉致」については、「狭義の強制性」「強制連行」を示す公文書などの証拠がなくても問題だという安倍首相の理屈は明らかにダブルスタンダードです。このことは、2007年に安倍首相が「慰安婦」について「狭義の強制性」「強制連行」はなかったと発言したときに、次のようにアメリカでも批判されていました。

「安倍首相の二枚舌」とアメリカ各紙も批判
安倍首相は日本人拉致問題には積極的に取り組んでいるが、
慰安婦問題では「犯罪に目をつぶっている」
24日付の米紙ワシントン・ポスト社説は「安倍首相の二枚舌」と題し、首相は日本人拉致問題には積極的に取り組んでいるが、慰安婦問題では「犯罪に目をつぶっている」と批判。拉致問題で国際社会の支持を得るには慰安婦問題で謝罪すべきだと求めた。

出典:読売新聞 2007年3月28日付 夕刊
米紙ロサンゼルス・タイムズ(電子版)は18日、従軍慰安婦問題で安倍晋三首相が「狭義の意味での強制性を裏付ける資料はなかった」との立場を堅持していることについて、「強制性」を否定していることで北朝鮮による日本人拉致問題で日本政府の立場を支持する人たちを「困惑させている」とする記事を掲載した。従軍慰安婦問題と拉致問題への安倍内閣の対応を比較。拉致問題では「北朝鮮を非難」するが、慰安婦問題では「強制を否定している」と指摘。「ワシントンの日本の最大の支援者たち」にも困惑が広がっているとの見方を示した。

出典:毎日新聞 2007年3月19日付 夕刊 「従軍慰安婦問題:安倍首相発言、米に困惑広がる 拉致絡め米紙報道」
それでは、慰安婦問題を「非難するいろんな碑が出来て」きたのは、どうしてなのでしょうか? それは、2010年に、初めてアメリカに慰安婦の碑が出来る前段のところで国際的に立て続けに上がった非難決議を見れば一目瞭然です。

▼アメリカの「慰安婦」問題対日非難決議
米下院121号決議 2007年7月31日可決(※一部抜粋)

日本政府は1930年代から第2次世界大戦までの期間、「慰安婦」と言われる若い女性たちを帝国軍への性的サービス目的のため動員することを正式に委任した。日本政府による強制軍隊売春制度である「慰安婦」は、集団強姦・強制流産・恥辱・身体切断・死亡・自殺を招いた性的暴行等の残虐性や規模面においても、前例のない20世紀最大の人身売買の1つだ。

日本の学校で採用されている新しい教科書は、こうした慰安婦の悲劇や第2次世界大戦中の日本による他の戦争犯罪を過小化しようとしている。

日本の公共・民間の関係者は、最近、慰安婦の苦痛に対する政府の真摯な謝罪を含む河野洋平官房長官による1993年の「慰安婦関連談話」を希釈または撤回しようとしている。(中略)

以下は米下院の共通した意見だ。

1.日本政府は1930年代から第2次世界大戦前に至るまで、アジア諸国や太平洋の島々を植民地化したり、戦時に占領した過程において、日本帝国主義軍が強制的に若い女性たちを「慰安婦」と言われる性の奴隷にしたことを、事実として明確な態度で公式に認め、謝罪し、歴史的な責任を取らなければならない。

2.日本の首相が公式声明を通じ謝罪するなら、先に発表した声明の信ぴょう性と水準に対し繰り返し唱えられる疑惑を解消する一助となるだろう。

3.日本政府は日本軍が慰安婦を性の奴隷にし、「人身売買した事実は絶対にない」といういかなる主張に対しても、明確かつ公式に反論しなければならない。

4.日本政府は国際社会が提示した慰安婦勧告に基づき、今の世代と将来の世代を対象に、残酷な犯罪について教育しなければならない。

▼オランダの「慰安婦」問題対日非難決議
オランダ下院決議 2007年11月20日可決(※一部抜粋)

日本が、公けに、いかなる遠慮もなく、第二次世界大戦以前から戦時中にかけて運営した強制性奴隷制度に対し、何人も疑うことのできない、いわゆる慰安婦に加えられた苦難に対して全責任を取るべきだという意見を持ち、

日本政府が、1993年のいわゆる河野談話によって慰安婦の運命を認め、被害者に謝罪をし、責任を受け入れたことを記録し、しかし、日本政府と日本の国会議員が数回にわたって、後に撤回された昨年3月当時の安倍首相の発言並びに同じ問題について今年初めに衆議院議員らが出したワシントンポスト紙の広告によって示されたとおり、この河野談話から離れた立場を表明したことを記録し、

わが国の下院議長が6月26日付の手紙によって日本の衆議院議長に送ったワシントンポスト紙の広告に関する質問に答えて、衆議院議長が11月7日付の手紙で彼が広告とは別な立場であると言明したことを注記し、

日本の一部の学校教材が慰安婦の虐待を含めて日本の戦争犯罪を十分に認識していないことを考慮し、

日本は「女性のためのアジア平和国民基金」を通じて元慰安婦に部分的に公的に助成された補償の形態を提供したが、補償は民間非政府組織によって与えられたことを考慮し、

[オランダ]政府が日本政府に対し、1993年に遺憾の念を表明し、強制売春制度の運営についての日本軍の関与に全責任を取るという談話の価値を引き下げるいかなる声明も控えるように強く要求することを求め、

[オランダ]政府が日本政府に、現在生存する元慰安婦に加えられた苦難に対して直接的、道徳的な金銭補償の形態を提供するという追加の姿勢を取ることを強く要求するように求め、

[オランダ]政府が日本政府に、日本の学校教材が第二次世界大戦中の慰安婦の運命を含む日本の役割について正確な情報を与えるよう促すことを強く要求することを求める。

▼EU(欧州連合)の「慰安婦」問題対日非難決議
EU議会決議 2007年12月13日可決(※一部抜粋)

A. 1930年代から第2次世界大戦終了までのアジアと太平洋諸島の植民地及び戦時占領地において、日本政府は ianfu ないしは“慰安婦”として世界に知られることとなる若い女性たちを帝国軍の性奴隷にするためだけの目的で公務として徴用し、

B. “慰安婦”制度は輪姦、強制堕胎、屈辱及び性暴力を含み、障害、死や自殺を結果した、20世紀の人身売買の最も大きなケースのひとつであり、

C. 日本の裁判所に持ち込まれた多数の“慰安婦”訴訟では、帝国軍の直接・間接の関与を裁判所が認めながらも、原告による補償請求はその全てにおいて棄却に終わり、

D. “慰安婦”制度の被害者のほとんどはすでに故人であり、生存者は80歳以上であり、

E.この数年の間に、多数の日本政府の高官や公人が“慰安婦”制度に関する謝罪の声明を発表する一方、日本の公人の幾人かはそれらの声明を希簿化したり無効化させようという遺憾な願望を最近になって表明し、

F.日本政府はその性奴隷制度の全容をすべて明らかにしたことはなく、学校で使用される最近の必修教材の中には、“慰安婦”の悲劇やその他の第2次世界大戦中の日本の戦争犯罪を矮小化しようと試みるものがあり、(以下略)

▼カナダの「慰安婦」問題対日非難決議
カナダ下院決議 2007年11月28日可決

1.1930年代から第2次世界大戦中に、アジアと太平洋諸島を占領した間、日本帝国軍は性的奉仕のみを目的として若い女性を獲得することを公的に委任し、その女性たちは慰安婦として知られており、

2.日本の公人が最近、彼女たちの苦難に対する日本政府の真摯な謝罪と反省を表明した1993年の河野洋平内閣官房長官の「慰安婦」に開する声明を弱め、あるいは無効にしようとする遺憾な願望を示し、

3.1945年以来、日本は過去の行為を認め、償いをすることで進歩してきた。また数十年にわたって国連を通じた貢献を含む国際平和と治安、開発に貢献し、

4.カナダ・日本の同盟はアジア太平洋地域において共通の重要な利益と価値に基づいて継続しており、これらには政治的・経済的自由、人権と民主制度を支援し、両国と両国民の繁栄をゆるぎないものにし、

5.それゆえ、カナダ政府は、1993年の河野談話の反省の表明をおとしめるいかなる声明も放棄すること、日本帝国軍のための「慰安婦」の性奴隷化や人身売買などは存在しなかったといういかなる主張に対しても明確に公式に反駁すべきであること、日本帝国軍が強制売春制度に関与したことに対する全責任をとるように日本政府に対して促すべきであり、それには被害者全員に対する正式で真摯な謝罪を国会で表明することや和解の精神で被害者の問題と取り組むことも含まれる。

以上が、各国の慰安婦問題についての対日非難決議の一部ですが、それぞれ太字の部分を見れば明らかなように、2007年3月に行った安倍首相の「狭義の強制性」「強制連行」否定発言、「慰安婦」制度に問題などないかのような発言こそが世界各国から批判されて非難決議が上げられたり、「非難するいろんな碑」が出来てきたりする原因になったのです。「世界に向かってしっかりと取り消していくことが求められている」のは、「吉田証言」ではなく、安倍首相の「狭義の強制性」「強制連行」否定発言の方です。

ちなみに、オランダ下院決議の中に出て来る「ワシントンポスト紙の広告」というのは、櫻井よしこ氏らが「ワシントンポスト」2007年6月14日付に掲載した「慰安婦強制連行の証拠はない」とする意見広告のことです。きょう(9/18)の毎日新聞などにも櫻井よしこ氏らは「『慰安婦』国際中傷を跳ね返せ」という意見広告を出して、慰安婦の問題は、吉田清治氏の虚偽証言による「作り話」で、「この間、日本はどれだけ辱めを受けてきたでしょうか」などとしています。しかし、事実はまったく逆で、国際的な非難をあびているのは、安倍首相や櫻井よしこ氏らの主張である「狭義の強制性」「強制連行」否定の方です。日本が「辱めを受けてきた」のは、安倍首相や櫻井よしこ氏らの主張の方なのです。

もっと言えば、安倍首相や櫻井よしこ氏らの「狭義の強制性」「強制連行」否定にもとづいて「世界に向かってしっかりと(慰安婦=日本軍性奴隷制を)取り消してい」けばいくほど、日本に対する国際的な批判は一層強まるほかありませんし、各国の対日非難決議や「非難するいろんな碑」も増えこそすれ、減ることはないでしょう。事実、2007年の安倍首相の発言や櫻井よしこ氏の意見広告ではそうなっているわけですから。そして、今回の朝日新聞の「吉田証言」のことは、そうした国際的な動向や「慰安婦=日本軍性奴隷制」とする国際的な評価には1ミリも影響しないと思います。

それから、以前のエントリーで紹介したスマラン事件で、オランダ人女性を強制連行で慰安婦にした日本軍の大尉・少佐・将校ら21人が裁判で有罪になっていますが、日本政府は、有罪判決を受けた日本軍性奴隷という戦争犯罪を反省するどころか、国家の英雄=英霊として厚生省と靖国神社の共同作業として靖国神社に合祀しています。そうすると靖国神社に参拝する政治家は、ナチスドイツのホロコースに匹敵する重大な戦争犯罪である「慰安婦=日本軍性奴隷制」を遂行した日本軍兵士をも国家の英雄=英霊として称えていることに必然的になります。逆に言うと、靖国神社に参拝する政治家にとって、「慰安婦=日本軍性奴隷制」などと国際的に批判されることはもっとも許し難い「辱め」にあたるので、安倍首相も櫻井よしこ氏らも「狭義の強制性」「強制連行」否定という姑息な手を使ってでもなんでも、とにかく「慰安婦=日本軍性奴隷制」を無きものにしたいのだろうと推測しています。」

http://bylines.news.yahoo.co.jp/inoueshin/20140918-00039211/

産経新聞社長と中曽根元首相が慰安所づくり自慢「女の耐久度、どこの女がいい悪い、3千人のための慰安所」

2014-09-22 15:55:09 | 歴史
「そこで、直接には「産経新聞」の報道ではありませんが、産経新聞社社長・フジテレビ社長・フジサンケイグループ会議議長・フジサンケイグループ最高顧問を歴任し、フジサンケイグループを築いた人物による「サンケイ出版」による発表ですから、十分に「歴史から目をそらすまい」とした「産経新聞」社社長が「史実に基づき」発表したものと考えていいと思いますので、以下紹介します。
鹿内信隆・櫻田武著『いま明かす戦後秘史 上巻』(サンケイ出版)40~41ページ
鹿内信隆・櫻田武著『いま明かす戦後秘史 上巻』(サンケイ出版)40~41ページ
上の画像は、鹿内信隆氏と櫻田武氏の著書となる対談本『いま明かす戦後秘史 上巻』(サンケイ出版、1983年11月30日発行)の40~41ページです。この本にある「対談者略歴」によると、出版当時の肩書きは、鹿内信隆(しかないのぶたか)氏が、サンケイ新聞社社長・フジサンケイグループ会議議長・ニッポン放送取締役相談役・フジテレビ取締役相談役・「彫刻の森美術館」館長で、櫻田武氏は日経連名誉会長・政府の財政制度審議会会長・国鉄諮問委員会委員長とあります。

上の画像にあるように、「慰安所の開設」について、陸軍経理学校で学んでいたと鹿内氏は語っています。テキストに書き起こすと以下です。

鹿内 (前略)軍隊でなけりゃありえないことだろうけど、戦地に行きますとピー屋が……。
桜田 そう、慰安所の開設。
鹿内 そうなんです。そのときに調弁する女の耐久度とか消耗度、それにどこの女がいいとか悪いとか、それからムシロをくぐってから出て来るまでの“持ち時間”が将校は何分、下士官は何分、兵は何分……といったことまで決めなければならない(笑)。料金にも等級をつける。こんなことを規定しているのが「ピー屋設置要綱」というんで、これも経理学校で教わった。この間も、経理学校の仲間が集まって、こんな思い出話をやったことがあるんです。

【鹿内信隆・櫻田武著『いま明かす戦後秘史 上巻』(サンケイ出版、1983年11月30日発行)40~41ページより】

陸軍経理学校において、「慰安所の開設」のノウハウを事細かく教え込まれていたことを、「産経新聞社社長」が証言しているのです。この産経新聞社社長の証言とは真逆のことをつい先日も「産経新聞」は、「正論 実体のない「従軍」冠した罪重い」という記事の中で次のように報道しています。
「従軍」は「従軍看護婦」などのように軍と公的な関係を持つ人々に関わる冠辞である。そのような実体を有しない人々を指す「従軍慰安婦」なる呼称は、戦後のある時期から使われ始めた通俗的な用語であるから、公文書で用いたり学術用語として使用したりすることなど極力避けるべきである。「従軍」と冠せられたがゆえに「強制連行」という動詞に容易につながる結果を招来したとも考えられるから、河野談話そのものの撤回を強く求めるゆえんである。

出典:産経新聞8/20付正論  実体のない「従軍」冠した罪重い 国学院大学名誉教授・大原康男
ようするに上の報道は、「慰安婦は日本軍とは公的な関係はないのに従軍慰安婦などという用語を使うから問題がいろいろ起こるのだ」と言いたいわけですね。これは、産経新聞社社長だった鹿内氏の証言とはまったく真逆です。鹿内氏は、「慰安所の開設」について、現地で調達し「慰安婦」にする女性の「耐久度」や「消耗度」からはじまって、「どこの女がいいとか悪い」とか、そして、等級による“持ち時間”や料金の規定にいたるまで事細かく陸軍経理学校の授業で勉強していたと証言しているのですから、「慰安婦は日本軍とは公的な関係はない」などと言えるわけがないのです。この真逆の証言に対して、「産経新聞」は、現在の編集長が言っているように、どちらが「捏造」「ウソ」「虚偽報道」なのか、「正確な史実を内外の人々に知ってもら」うために、「事実が判明すれば、その都度、記事化して正し、必要があれば訂正を行うのが当然の報道姿勢」ですから、自らの言葉に責任を持って現在の「産経新聞」の乾正人編集長は、「記事化して正」すべきでしょう。そうでなければ、朝日新聞を批判する資格が「産経新聞」にはそもそもないということになると思います。
松浦敬紀著『終りなき海軍』(文化放送開発センター出版部)の90ページと98ページ
松浦敬紀著『終りなき海軍』(文化放送開発センター出版部)の90ページと98ページ
それから、上の画像は、松浦敬紀著『終りなき海軍』(文化放送開発センター出版部、1978年6月15日発行)の90ページと98ページの画像です。ここでは、中曽根康弘元首相が戦時中に23歳で3千人の総指揮官だったことを自慢した上で、その3千人の大部隊のために、「私は苦心して、慰安所をつくってやった」と証言しているのです。3千人の総指揮官だった中曽根元首相が「慰安所をつくってやった」と証言しているのに、「慰安婦は日本軍とは公的な関係はない」などと2014年の8月20日に報道している「産経新聞」こそ、「歴史から目をそらし」「史実に基づかない報道」をしている新聞なのではないでしょうか。こうした「産経新聞」の報道で「事実を歪(ゆが)めては国際的な信用は得られない」でしょう。」

http://bylines.news.yahoo.co.jp/inoueshin/20140909-00038966/

9月21日(日)のつぶやき

2014-09-22 03:04:44 | EU

兵役拒否の亡命・韓国青年 「徴兵制が敷かれる前に反対すべきだ」 #BLOGOS ln.is/blogos.com/out…


安倍政権とメディア 戦前そっくりになってきた #BLOGOS ln.is/blogos.com/out…


戦争への実感のなさが、危機の本質を見る目を遠ざけている | 渡辺 豪 | 沖縄タイムス+プラス ln.is/okinawatimes.c… @theokinawatimesさんから