白夜の炎

原発の問題・世界の出来事・本・映画

容易ではない、この国の政治…そして未来

2011-07-29 15:03:01 | 政治
 日朝の秘密工作をおぜん立てした田中均氏がブログで小泉以降の各政権のあり方を批判しています。
 →http://diamond.jp/articles/-/13368

 中でも民主党政権が官僚不信にとらわれ、場当たり的な対応に陥っていることに深い懸念を示しているようです。

 この田中氏は小泉政権の時、日朝の秘密接触を通じて小泉訪朝を実現した立役者です。

 結果的には反北・拉致問題キャンペーンによって所期の目的を実現できなくなってしまいましたが、日朝間に信頼関係を築き、東アジアの情勢を動かそうとした努力は本当に素晴らしいと思います。


 さて、その田中氏は氏のブログの中で、民主党政権の政策運営に深い懸念を表明されています。

 例えば元外交官らしく、外務省のブリーフィングが途絶えてしまったことを懸念されたりしています。

 その際はブッシュ元大統領が、朝1時間をブリーフにあてていた様子等も描写しながら、専門家がきちんと評価してまとめた報告に毎日きちんと目を通すのが、国家運営の基本の一つだとおっしゃっています。

 それ以外の例も様々あげておられて、それはそれで確かにその通りだと思います。



 ただ私はこうも思います。

 鳩山氏が普天間の問題で追い込まれ、辞任に至った時、記者会見で、本来漏れてはならない情報が新聞記者などにリークされていたことを明らかにしていました。

 外務省は本当に首相の外交政策を実現するために働く意思があったのでしょうか。

 自分たちが外交をやっているのであり、首相も外相も、ただの帽子だ、何か失敗したときに辞任させて責任を取った形を取るための道具だとは考えていないのでしょうか。


 他の役所も同様でしょう。本当に民主党政権のために働く気はあったのでしょうか。

 民主党政権は政治を変える、政治主導だといって政権を取りました。

 そこに素人っぽい、具体的に権力をコントロールする手立てを書いた姿勢があったことは私も認めます。

 しかしだからと言って、外務省が首相の交渉過程を記者クラブの記者を通じてリークし、外交交渉を破たんに追い込み、政権打倒の道具にするなどということがあっていいのでしょうか。


 役人たちの今までのやり方は、各役所ごとに自分たちの縄張りを守りながら、先輩がやってきたことをつつがなく後輩に受け継ぐこと、それが仕事をしている、というものだったのではないでしょうか。

 だから公共事業が延々と続き、危ない原発が無責任極まりない連中によって作り続けられてきたのではないでしょうか。

 外交にしても、沖縄県民をアメリカに人身御供に差し出しながらずっと対米従属を継続し、それに反する方向はどのような手を使っても阻止してきたというのが実態ではなかったのでしょうか。


 結局田中氏が言うように官僚を信じ、官僚が整理した報告に耳を傾ける政治は、今までと同じことをやり続けろということに他ならないのではないでしょうか。


 民主党政権が、本気でそれを変えようとしたからこそ、官僚は働くことをやめ、国民が選挙で選んだ政府を裏切り、国民の災難を横目で見ながら、次の言うことを聞く政権の誕生を待っているのではないでしょうか。

 
 民主党に足りないのは、確かに田中氏も言われていた通り、やりたいことを実行するための手立てであり戦略です。

 政治主導を掲げた以上、権力の中枢である官僚機構そのものを解体・再編する戦略こそが一番重要だったはずです。

 その点があまりにも甘かったといわなければなりません。

 具体的には、自前の官僚予備軍を官僚機構の内外に抱え、少なくとも課長補佐以上のポストを政治任命できるようにする法案とそれを通す準備を行い、法制局もコントロールできる体制を整える、といったことではなかったかと思います。


 今の官僚を信じて政治が立て直せるとは思えません。

 田中氏は経産省の役人を信じて、日本のエネルギー政策と、国民の安全を両立できるとお考えでしょうか。

 私はそれはまず無理だと思わざるを得ないのです。

 今の日本は、展望もないまま自らの権力にしがみつく、またその他の何事もなしえないエリート官僚と、その官僚機構を具体的に変える手立てを欠いた政権党と、何の反省もなくぼんやりと「政局」がらみで政権への返り咲きを願う自民党と、この三者が権力をめぐる戦いをしています。

 そして大手メディアは長年の「お付き合い」の結果、自民党と役人の言い分を垂れ流す以外には、自前の取材力もなければ、仮に記者がよい取材をしていても、それを流す決断がないようです。

 本当にこの国の政治は危機的です。

 しかし繰り返しになりますが、それは「優秀な」官僚機構への信頼によって回避できるものではないというのが、一有権者である私の意見です。

 田中氏の為すべきことも、ブログでの評論ではなく、民主党政権が機能するように具体的に働くことなのではないでしょうか。
            

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿