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がれき処理問題-新潟から

2012-05-23 16:33:26 | 放射能
「講師の関口さん、受け入れ5市に「断念して」

市民団体主催のがれき処理問題勉強会で 新潟県の三条市、新潟市、長岡市、柏崎市、新発田市の5市が受け入れを表明している岩手県および宮城県の震災がれきについて、市民に正しい知識を身につけてほしいと、市民団体「未来の生活を考える会」が主催したがれき処理問題の勉強会が、4月28日午後2時から、三条中央公民館で開かれ、80人ほどが参加した。

 講師を務めたのは元信州大学の非常勤講師で、東京電力・福島第一原発の事故当初から南相馬市や浪江町、飯館村などの放射線量や健康調査を続けている関口鉄夫さん。関口さんは「未来への贈り物―震災がれき処理の虚構―」と題して、データなどを示しながら、時に語気を強めて、政府の怠慢や5市が震災がれきを受け入れる状況にないことを強調。

 講演、質疑応答と続いて最後に関口さんは、「本当に震災がれきが復興の邪魔になっているのなら、何かの手段で処理の方法を考えなければいけない。多少分散したとしても、可能な限り限定し、技術的に準備をして対処すべきと思っている。しかし、手を挙げている自治体は、本当に放射能のモニタリングの仕方もずさん。なおかつ受け入れようとしている施設がデータから事故施設の可能性が高い。受け入れたいという気持ちを否定するものではない。しかし、今が造りかえるチャンスだとか、受け入れることでお土産がもらえるという考えはやめてほしい」とし、「手を挙げた5市に関しては、まず断念してほしい。本当に引き受けるのであれば、処理施設、引き受ける施設の徹底的な調査と、地域住民との協議を積み重ねてほしい。めんどうくさい手続きをクリアして、初めて行政は信頼される」と締めくくった。

 講演要旨は次の通り。

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 原発事故はまれなこと、原子力発電所は安全なものと言われているが、そうではなく、10数年に1度はレベル7という大事故が起き、すさまじい被害を生みだしている。レベル7に至らないレベル4などの事故は、毎年毎年、日本だけでなく世界各国で起き、放射能がもれている。

 福島第一原発の事故では、北海道や九州を除いて、日本で汚染が避けられたところはない。四国や山陰でも線量が確認されている。薄く広く確実に汚染されている。それを忘れてはいけない。それだけに、人為的に汚染を拡大するということは避けなければいけない。

 福島県内の学校の中の放射線量を調べると、玄関が1番高く、教室の黒板の下も高い。子どもたちが学校の中で歩いているところがすべて高い。この地域の地面に直接、線量計を置いて測っても放射能はほぼ普通の事故以前の状態。ところが、屋根の下、雨どいの下がやや高くなっている。子どもたちは、そうしたところは遠慮しない。そこを走り回って、つけてきた泥を玄関でぬぐ。それが上履きについて学校の中に広がり、何日も何日も積み重なる。そのために、福島県内のそれほど影響のない地域でさえ、学校内に汚染が持ち込まれている。

 こういう調査を国はしない、自治体もしない。私はやるべきだと思う。今からでも遅くはない。調べれば、クロスを吸着しにくい材質に替える、あるいは洗浄するという対策がとれる。こういうところを国、自治体はしていない。人が汚染を運ぶということをまったく議論していない。検体の採取の方法もずさん。検査データといっても、どこをどうやって、どのようにして何を調べたということをキッチリ示さないと正しい値は出てこない。

 震災がれきの特徴は、分別が十分でないということ。ただ集めただけ。被災地なので、とにかくゴミをどかさないといけないということで、持って来ることは致し方ない。しかし、集めた場所で丁寧に分別していくことが、後々使えるものか、本当に使えないものかの分かれ目になる。宮城県の災害廃棄物に対する対応は国よりもしっかりとしている。それを、ゴミが山のように積まれた写真ばかりを流布させて、「大変だ、大変だ」とばかり言うことが成り立つのか。

 例えば、南相馬市も丁寧に放射線量を調べていくと、ドームのような層があり、海からの汚染物質が入らないところがある。南相馬市であっても、ずっと原発の近くまで海外沿いの線量は少ない。せいぜい、長野市の放射線量の5割増しか2倍くらい。ところが、内陸に入るたびに線量が上がってくる。内陸で出てきた災害がれきと海外線沿いの災害がれきは放射線量がまったく違う。

 南相馬は、震災がれきを丁寧に分別している。仮保管している場所に集まってくる震災がれきにどんな現象が起きているか。海辺から持ってきた震災がれきの線量は低く、内陸の震災がれきの線量は極端に高い。同じ積み上げた震災がれきであっても、持ってくる場所によって線量はまったく異なる。震災がれきを受け入れる市町村が現場で線量を測ったら少ないというが、それはいつ、どこから持ってきた震災がれきかは分からない。その中に、とても線量が高い震災がれきがある可能性がある。

 南相馬で震災がれきが集まっているのは本当に一部。震災がれきが復興のさまたげになっているという話は聞かない。むしろ、官僚が頭の中で考えて出来た予算付け。そして、予算がついたから、こういうために使いたいと言ったら、さまざまな難癖をつけて予算を執行しないことの方がよほど災害の復興のさまたげになっている。施策の貧しさゆえに復興が進まないのを、震災がれきのせいと言っているのは官僚。

 岩手県内の災害廃棄物ではなく、家庭から出てくる廃棄物を焼却した灰の放射能データを見ると、高いところでは1万ベクレルが出ている焼却炉もある。普通のゴミを燃やして、これだけ放射能に汚染されている焼却灰が出てくるのに、災害がれきを燃やしたら100ベクレル以下という保障がどこにあるのか。

 5市が共同記者会見した時の資料に、バグフィルターでほぼ100%放射線セシウムは除去されますと書いてありますが、どういう根拠で言っているかさっぱり分からない。あるとすれば「国がそういったから」。御用学者が集まって、焼却炉を知らない原子炉工学の学者がバグフィルターが付いていれば大丈夫だろうといった話だけ。燃焼温度によっても集じん率が変わるのはバグフィルターの常識。使い続ければ目詰まりも起こす。そのたびに集じん率は落ちる。焼却炉は安定して燃焼しているばかりではなく、火を点ける立ち上がりや火を消す立ち下がりの時でも変わってくる。なのに「99・9%取れる」という話をうのみにしている。バグフィルターがついているから安心という話ではなく、放射性を帯びた廃棄物を焼却すれば放射線は散っていく。それが焼却炉の実態。

 がれきの大半は再利用できるにも関わらず、管理の仕方がいい加減なために、広域処理に多くの問題が出てくる。広域処理を行った場合は輸送コストや2次汚染が懸念され、原子力マフィアと呼ばれる連中がもうかるだけ。


 そして、問題は受け入れ側の廃棄物処理施設がまともかどうかということもある。最終処分場はゴミを運んで、ゴミを置く時に粉じんが大気に散って大気汚染が起こる。そして、処分場の遮水シートが破れていたら、降ってきた雨が廃棄物の汚染物質を含んで地下水の中に入ってしまう。また、処分場にたまった排水処理の際にも排水基準と環境基準に差があるために汚染が起きてしまう。実際に多くの自治体の処分場で遮水シートが破れていたり、たるんでいたりというのが実態。震災がれきの焼却灰を処理する施設は皆さん自身が検証する必要がある。

 処分場が事故施設かどうかは、施設の底を浸している地下水を調べることで分かる。施設を通る上流と下流の地下水を調査して、水質がイコールなら問題のない施設。これは、常に監視してデータを開示することが義務付けられている。

 新潟市が処理を予定している福井一般廃棄物処分場、赤塚の処分場もデータを見ると事故施設の可能性がある。データを公表しているのはいい方で、新発田市などは探した限りでは見つけることができなかった。長岡市では処理排水よりも地下水の方が汚いというデータを平気で出している。そんなわけがない。

 では、三条市はどうか。三条市クリーンセンターでは、地下水についてヒ素が環境基準値を超えている。理由について「自然由来と推測される」と書いているが、それを照明する資料が何もない。ヒ素が出たのであれば、地下水として飲んでいる可能性がある。本来ならばキチンと調べなければいけない。さらに驚くのは埋め立てた焼却灰から埋立基準をはるかに超え、環境基準の49倍という鉛が出ている。鉛汚染の可能性がある。これだけの事件があったら公開し、専門家を呼んで調査をすべき。

 そもそも焼却炉も最終処分場も維持管理が不適切。震災がれきの処理以前に、各焼却炉、処分場を徹底的に調査をし直さなければいけない。データについては適切な方法で開示する義務がある。それをやっていない。廃棄物関連の法律のこともまじめにできない市町村が、なぜ廃棄物処理ができるのか。助け合いを求め、きずなを信じて、がれき処理をやると立候補するなら、まずは自分のところの施設を徹底して管理しなければ。震災がれきの受け入れにあたっては、まず自分の市町村の処理施設を検証しなければいけない。法律を順守してデータを公開して、安全性を立証できているのかどうか。それを皆さんが調べてほしい。その情報公開に応じなければデータの隠ぺいを図っているということ。

 国は、検査の費用は全額負担する、処理施設の整備を行う時は2分の1から3分の1は負担する、既存施設の補修や新規施設を造る場合には全額負担するとも言い出した。交付金が出るからチャンスという考えはやめた方がいい。結局は増税という形で返ってくる。未来の世代は、現世代の判断に異議は唱えられない。私たちの責任は特に大きい。」


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