2005年に日米両国政府が発表した「日米同盟 未来のための変革と再編」(
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/henkaku_saihen.html)という文書がある。これは1997年の日米防衛協力の指針を受けてまとめられたもので、さらにさかのぼれば三ツ矢計画以来の日米軍事協力の積み重ねに連なるものである。
ここでは日米間の「切れ目のない」防衛協力の重要性が強調され、機雷掃海はもとより、弾道ミサイル防御を始めとしながら、実に広範な軍事協力が検討され、それが今後日米両政府の実施すべき政治的方向だとされている。
しかし言うまでもなく、実施すべきことは日本側に多く、憲法上の制約を超えた活動が求められたのである。
そして「本日、安全保障協議委員会の構成員たる閣僚は、新たに発生している脅威が、日本及び米国を含む世界中の国々の安全に影響を及ぼし得る共通の課題として浮かび上がってきた、安全保障環境に関する共通の見解を再確認した。また、閣僚は、アジア太平洋地域において不透明性や不確実性を生み出す課題が引き続き存在していることを改めて強調し、地域における軍事力の近代化に注意を払う必要があることを強調した。この文脈で、双方は、2005年2月19日の共同発表において確認された地域及び世界における共通の戦略目標を追求するために緊密に協力するとのコミットメントを改めて強調した。」と述べているが、このような情勢認識の変化は今安倍政権が推進している安保法制の方向性そのものである。
さらに具体的に二国間で推進すべき活動としては、「防空 弾道ミサイル防衛 拡散に対する安全保障構想(PSI)といった拡散阻止活動
テロ対策 海上交通の安全を維持するための機雷掃海、海上阻止行動その他の活動
捜索・救難活動 無人機(UAV)や哨戒機により活動の能力と実効性を増大することを含めた、情報、監視、偵察(ISR)活動
人道救援活動 復興支援活動 平和維持活動及び平和維持のための他国の取組の能力構築
在日米軍施設・区域を含む重要インフラの警護 大量破壊兵器(WMD)の廃棄及び除染を含む、大量破壊兵器による攻撃への対応
補給、整備、輸送といった相互の後方支援活動。補給協力には空中及び海上における給油を相互に行うことが含まれる。
輸送協力には航空輸送及び高速輸送艦(HSV)の能力によるものを含めた海上輸送を拡大し、共に実施することが含まれる。
非戦闘員退避活動(NEO)のための輸送、
施設の使用、
医療支援その他関連する活動
港湾・空港、道路、水域・空域及び周波数帯の使用」があげられている。今回の安倍保穧がここから出発していることは明らかだろう。
実際この方針が出た翌年安倍第一次内閣が成立し、その内閣のもとで安保法制懇が作られ、この指針に沿った報告書が出されたのである。しかし報告書が出された時は、安倍内閣が倒れた後であり、報告書を受け取った福田首相はこの報告書を事実上無視した。その後の麻生政権、民主党政権も同様である。
しかし安倍第二次内閣が成立するや、安保法制懇が改めて妻妾種され、まとめられた報告書に沿って昨年7月1日の閣議決定の内容がまとめられていったのである。
その内容は2005年の「変革と再編」の要求を満たすものである。つまり日本の歴代政権は日米軍事協力が日本の対米属国化を-軍事協力を通じて-決定的にすることを、憲法第9条を口実に回避してきたのであるが、今回安倍政権はそれさえ放棄して、本の属国化に邁進しているということである。