白夜の炎

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「この国の岐路」

2014-05-09 21:35:19 | 政治

「この国の岐路-私たちの道と彼らが目指す道  2014/05/10 

 今この国は本当に岐路に立っています。戦争の悲惨さを実体験した世代が少なくなっていく中、戦争も軍隊も知らない人々の声が高く大きくなっています。先週から今週にかけてNHKで第一次大戦をテーマにしたドキュメンタリーが三回にわたって流されました。そこでは歴史家・軍事史家が参戦兵士の手紙を数多く紹介していました。その中である兵士は、塹壕戦の苦しみについて語り、そこには勇気などない、恐怖だけが支配していると語っていました。紹介された写真に写っている負傷した仲間を担ぐ兵士の眼は、ただ眼があるというだけで、普通の光を持った人の目ではありませんでした。

漫画家の水木しげるさんは南方で悲惨な体験をされましたが、『総員玉砕せよ!』で、「玉砕」を生き残ってしまった者たちに、再び玉砕の命令が下ったと書いている。そして「僕は戦記物を書くと訳の分からない怒りが込み上げてきて仕方がない」とも述べています。

この長岡でも南方の戦線で、あるいは中国の戦線で、文字通り地獄の体験をした人々がいました。またこのまち自体空襲によって灰燼に帰した経験があるのです。今こうして過ごしているこの通り、この角に焼け死んだ市民が、あるいは瀕死のだれかがいたのです。そういったことが過去の記憶になり、それさえ消えかかっていくとともに、勇ましい声や、無関心が広がってきています。

 この間の政治を少し振り返ってみましょう。民主党の野田政権のとき、石原慎太郎東京都知事がアメリカのヘリテージ財団主催の講演会でスピーチを行い、核武装論や自主憲法論を展開した後、東京都知事として尖閣諸島購入を言い出しました。石原氏の動向を危惧した野田政権が国有化を実施すると、日中間の棚上げ合意に反する行為だとして中国政府が一気に軍事的圧力を強め、この島をめぐる日中軍事衝突が現実味を帯びてきました。それは日中間だけでなく、世界的な懸案事項となり、EconomistやFinancialTimes等にも多くの論評がのるまでに至りました。

 そして安倍政権です。石原氏と政治的傾向を同じくすると思われる安倍政権は、日中間の緊張を緩和するどころか靖国参拝を―同盟国アメリカの懸念さえ無視して-強行し、日中間、そして日韓の間で首脳会談どころか電話一本かけることさえできないという状況にしてしまいました。そしてひたすらアメリカの日米安全保障条約の適用地域であるという発言にのみ頼るという外交になっています。日本自らの問題を自ら解決する姿勢は欠如しています。

そして地元の強い反対を全く無視し、強引な政治的圧力のもと辺野古の米軍基地の移転を言われるままに進めることとしました。沖縄の人々の声に全く耳を傾ける人がないという政府は果たして日本の政府でしょうか。まるで沖縄を人身御供に差し出したかのようです。

 そして昨年の末には特定秘密保護法を国民各層の幅広い反対の声・懸念する声を無視して成立させてしまいました。世論調査の結果も無視されました。日本国内の新聞も圧倒的多数が反対の社説を掲げました。しかし一切を安倍政権は無視しました。
この法律では特定秘密を官僚が指定し、しかも何を指定したかは公表する必要がなく、なおかつその資料を廃棄しても報告の義務がありません。日本の政治を実質的ににコントロールする官僚がその行為の責任をとる必要がない体制、そして国民の目に触れないところで最も重要案件を処理できる仕組みを作ったのです。

 しかし実際にはこんな法律を作らなくとも日本は秘密だらけの国です。藤井治夫氏が1972年に書いた『日本の国家機密』という本をみると、外務省に極秘/40673、秘/59915 、防衛庁に国家機密/749、極秘/ 958 秘/22587 が既に存在したと書かれています。国家機密はおそらくは日米安保関係だとされています・

実際そのことをうかがわせる資料もあります。例えば1965年度の「フライング・ドラゴン」計画は、防衛庁内部における「対内局秘」とされています。防衛庁内部でも文官には知らされていなかったのです。内容は自衛隊の制服組と在日米軍の取極で、有事の際に自衛隊と在日米軍が共同作戦を行う計画です。藤井氏は 「…日米両軍関係に設けられている多くの共同作戦機構において作成される協定、覚え書、資料等は、うっかり防衛庁内局などへ報告することもできないであろう。」38頁、と書いています。

 その後情報公開法が作られていますが、実に知りたいことが出ない法律でいくつもの訴訟が起こされています。

 このように国家の存亡にかかわりかねない事態が市民に知らされていない状況が継続する中で、そして軍事的緊張を外交的に緩和する努力を政府が放棄する中で、今度は集団的自衛権を憲法解釈の変更で認めようという事態になっています。個別的自衛権は個々の国が侵略を受けた場合それぞれの国には自衛する権利があるというものです。しかし集団的自衛権は例えばNATOの様な軍事同盟をみるとわかりやすいわけですが、自国が直接危害を加えられていなくとも、同盟関係にある国が危害を加えられた、あるいはその可能性が高いと判断されると、共同で軍事行動を行う義務を負うというものです。

 そもそも憲法第9条で紛争解決に軍事力は用いないと言っている国が、自国が直接侵略されたわけでもないのにどこかの国と戦争をするというようなことが、政府の憲法解釈の変更だけで認められるでしょうか。当然あり得ないことです。

そもそも憲法というのは時の政府の恣意的な行動を抑制し、何が正しく、何が間違っているかの基準を示すものだったのではないでしょうか。今の安倍政権が立憲主義の否定といわれるのはまさにその通りです。彼らは憲法無視の内閣であり、したがって憲法のもとでそれに従って生きている市民を無視した政府だといわなければなりません。しかし彼らはこの憲法のもとで、この原則を順守することを誓約して議員となり、内閣を構成しているのではないでしょうか。そして官僚たちも同様のはずです。彼らの行為は実は彼らの正当性を実は掘り崩すものです。

 だからこそ彼らはとんでもない憲法改正を行おうとしていのです。
 彼らが用意した憲法草案の全文は、「…日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を守るとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。…」と書かれています。市民的自由や個人として自立した個人が前提となっている現憲法の理念とは大きく異なっています。今の憲法の前文は・・・・となっています。・・・・

そして、第9条(平和主義)には「2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。」とかきくわえられ、「我が国の平和と独立竝国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。・・・」とめいきされます。「自衛権」とだけしか書いていないことには集団的自衛権も正当なものだとする意図が見えます。

 さらにそれだけではありません。この憲法草案の何よりの特徴は、本来的に一人一人の市民が持つ基本的人権や自由が、あたかも時の政府・国家権力によって与えられるものであるかのように書かれていることです。

たとえば、第12条(国民の責務)には 「・・・自由および権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及公の秩序に反してはならない。」となっています。「公益」はだれが決めるのでしょうか。責任とか義務とは何を意味するのでしょうか。その解釈はまた政府が-そして官僚が、行うことになるのではないでしょうか。不服に思い裁判にかけても最後のよりどころの憲法がこれでは、「責任と義務」が強調され、そして上級審に行けばいくほど行政優位の判決が出る今の裁判制度のもとでは、市民的自由の保障は実質的に担保されないこととなるでしょう。そして人々はあきらめていくこと似るのではないでしょうか。それとも安倍政権はそれを期待しているのでしょうか。

また思想および良心の自由を規定する第19条は 「思想および良心の自由は、保障する。」となっています。現憲法 では「思想および良心の自由は、これを侵してはならない。」です。つまり先ほども言った通り、自由権は一人一人の市民が生まれもって持つものであり、それを国家権力は侵害してはならない、と言っているのです。これが近代市民社会のしたがって民主的社会の基本的原則です。それを自民党の憲法草案は、国家権力が「保障する」ものだと貶めています。市民がもともと生まれ落ちたときから一人一人が持っているものを政府が管理できるもの、もっといえば政府が与えた範囲のものにしてしまいかねない規定になっています。

さらに第21条(表現の自由) についても、「2 前項の規定にかかわらず、公益及公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは認められない。」 となっています。ここでも誰がこの判断を行うのでしょうか。テロ組織だ、反社会的団体度といえばただちに結社の自由は失われます。団結権は労働組合はもとより、あらゆる市民団体成立の根源的な基礎です。これだけNPOの活動が活発になっている時代にこの規定は何なのでしょうか。

実際、勤労者の団結権を規定した28条は2で「公務員についてし、全体の奉仕者であることにかんがみ、法律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部または一部を制限することが出来る。・・・」としています。今でさえ公務員のスト禁止等が継続しており、ILOの度重なる勧告を日本政府が無視しているという状況の中、このような憲法が生まれたとき公務員はどのような条件で働くことになるのでしょうか。

そしてこの憲法草案には今までなかった第9章・緊急事態、という規定が新たに盛り込まれています。その内容には閣議が「緊急事態」を宣言すれば、「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。」が含まれます。戒厳令を連想するのは私だけでしょうか。

 この連休中安倍首相はヨーロッパを歴訪し、防衛協力を行く先々で訴えました。NATOでわざわざ演説までしています。あたかも第二の「脱亜入欧」を目指すかのようです。その行動が中国との対峙を意図するものは明らかです。でも「何のために」そうするのでしょうか。なぜ外交的解決をするための環境を作らないのでしょうか。まるでわざと緊張を高め、それを口実にして軍事化を進め、国民の自由を奪う憲法を作ろうとしているかのようです。国民の安全を危機におとしいれ、それを口実に国民の自由を奪う。こんな安全保障政策があるでしょうか。間違っていればよいのですが、私には安倍政権がやっていることはそのように見えてしまいます。

 いま安倍政権は、アベノミクスと称して円安誘導と公共事業、そして一部の輸出企業の好成績で日本経済の復活が果たせるかのような幻想をふりまいていますが、それは虚妄です。そんなことより、よく日本の周りを見回せば、世界で最も急激に成長している中国という経済圏があり、そして先進国にまで成長した韓国があります。日中韓が連携すればそれだけで世界最大の経済圏であり、その中で互いに足りないものを補い、経済的にも文化的にも大きな飛躍が期待できるのではないでしょうか。別に閉鎖的な共同体を作る必要はありません。自由で安全な環境を作ればよいのです。

 振り返ってみれば鳩山政権がアジア共同体を打ち出したのはまさにこの方向でした。そして彼は沖縄の問題にも耳を傾けました。そしてまさにそれゆえに政権は破綻に追いやられたように思います。そして今安倍首相の日米同盟強化とEU・NATO歴訪です。

 しかし先方もよくわかっています。安倍政権はEUにEPA-経済連携協定-締結を持ちかけましたが、EUは日本政府に対してEUの人権条項を協定に含めるように主張しています。彼らは安倍政権が危険で反民主主義だということを見透かしているのです。

 いま私たちは安倍政権を倒し、改憲や集団的自衛権の試みを阻止しなければ、私たちが当たり前だと思っている社会・国を失ってしまいます。政府の顔色をみなければNPOが作れない。もしかしたらネットのブログやFB、Twitterまでチェックされかねない、そんな国になりかねません。自民党の憲法草案が目指す、安倍氏が「取り戻す」といった日本はそのような日本なのです。

これは右とか左の問題ではありません。イデオロギーや思想の問題ではありません。私たちが当たり前だと思っている社会を維持していこうというだけのことです。それを壊そうという試みを阻止しようということなのです。

なんとしてもこの岐路で間違った道を選ばないようにしなければなりません。日本の次の世代が、そしてこれから生まれてくる人たちが私たちを厳しいまなざしで見つめています。国の外からもです。みなさん、私たちの未来のために、そして日本だけでなく、アジアと世界の未来のために、頑張ろうではありませんか。」

5月8日(木)のつぶやき

2014-05-09 03:26:22 | EU

水木しげる『総員玉砕せよ!』。「玉砕」を生き残ってしまった者たちに、再び玉砕の命令が下る。最後のバンザイ突撃を前に兵隊たちが合唱するのは「女郎の歌」。水木は言う。「僕は戦記物を書くと訳の分からない怒りが込み上げてきて仕方がない」。 twitpic.com/e37da8

tokiさんがリツイート | RT

戦前の日本は、国民向けの精神教育で日本の伝統文化を利用したため「伝統を重んじた時代だった」かのように錯覚されやすいが、実際には単に国民を従わせるのに有用な「道具」として利用しただけだった。本当に国と伝統を愛しているなら、自分の地位や面子を守る為に国を滅ぼす戦争を始めたりはしない。

tokiさんがリツイート | RT

議事録あった 外務省が独自メモ/秘密保護法有識者会議 慎重意見の存在明らかに/「記録廃棄」の主張不自然 ln.is/www.jcp.or.jp/…


それでも台湾学生運動は統一を阻止できない | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト ln.is/www.newsweekja… @Newsweek_JAPANさんから


@RUVRJAPANESE アメリカには他にやることはないのか、といいたい。例えば自国の貧困者の改善とか。民主主義の国なんでしょ。


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