この「砺波の教訓」では、今まで悪いことばかり述べてきましたが、しかし、あの時のアクシデント時、すばらしい出来事もありました。
当事者の方々ならばお分かりいただけると思いますが、行方不明者の発見のために、そのときその場にいた皆さんが、それぞれ自分の出来ることを考えて、そして、それを実行に移していったことです。
情報の混乱を防ぐため、現場にあった黒板を利用し、一つ一つの情報を記録することにより、まず、情報をひとつひとつ整理していきました。
そして、それぞれが行方不明者の発見を目的とした、さまざまな手法を出し合い、そして、決して個人的な行動をとらずに、それを皆で話し合い、可能性のあるものは次々と実行に移していきました。
このときの行動は、大変的確であったと思います。そして万一、今後同様のアクシデントが発生したときも、あの日のあの行動、体験は、生かしていく出来だと思います。
ただ、今でも少しまずかったのでは?と思うのは、「行方不明者らしきものが見える」との不確的情報から、夜中の山の中に捜索隊を出してしまったことです。
もちろん多人数で、GPS等の装備ももち、出来る限るの安全策をとった状態ではありましたが、しかし、昼間ならいざ知らず、夜中の山の中を歩くことは、やはり大きな危険を伴うものであったと思います。
しかも、その情報は結局は間違ったものでした。
幸い二重遭難が起こらなかったから良かったのですが、あの時は今一度、夜中の山中に捜索隊を出すことを考え直すべきだったように思います。
考えてみれば、あの時は、セーフティーコミッティー、タスクコミッティーの方々がそれぞれ自分の責任を感じられて、行方不明者の発見を急ぎ、少々焦ってしまっていたようにも思えます。
私も含め、やはりあの時は比較的冷静な人間が、客観的に判断し、夜中の山中の捜索を止めさせるべきであったのでは?と、考えています。
最後に、これは私事なのですが、あの時、ひとりの行方不明者を助けるために、その場にいた皆が見事にひとつになり、行動した出来事は、人生の中でも忘れられない出来事であったと思います。そして、今後もこの大事な経験は忘れてはいけないものの様に思えました。