日々の出来事

当院の出来事を紹介します

患者さんが動物病院を選ぶ時代

2010-08-10 19:07:40 | Weblog
日々診療していると、様々な飼い主さんの行動パターンがあることに気づきます。特に転院していらっしゃる飼い主さんには、様々な事情があり、配慮せざるを得ないケースも多々あります。

例えば、フィラリアの予防や混合ワクチンは近隣の動物病院さんでしている、でも病気の診療はうちに来る。近所のおつきあいがあったり、親戚関係だったりでむげにはできない、いろんな話があるようです。そういう場合は、「使い分けていただいてかまいませんよ~」と気軽に応対しています。だってどの動物病院にかかるかは、その飼い主さんの価値観によりますから・・・。

先日いらした僧帽弁閉鎖不全(心臓病)のワンちゃん予防関係は他院で、「先生、近くの先生には投薬始めたことを言わないで」と飼い主さんはおっしゃいます。もともとの先生は、このレベルでは投薬の必要なしと判断しているわけでした。私は論文のデータをお見せして、このクラスの心不全は投薬し始めた方が経過がよい、ということになっているがどうしますか?と判断をあおぎます。結局、いつもの先生には内緒で血管拡張剤の投与を始めました。

皮膚病が治らなかったワンちゃんA、鑑別診断をきちんとしたら、検査で検出はできなかったもののダニによる慢性皮膚炎だと治療的に診断しました。アトピー体質や食物アレルギーがまだ完全に除外できていませんが、大筋で間違ってはいないでしょう。ワンちゃんBは、投薬の徹底不足です。4~5年治らなかった慢性皮膚炎。バイオプシーして他の疾患を除外して、スキンケアーを徹底したら、あっという間に改善してきました。

うちの動物病院は、やるべきことを愚直にやりきる病院です。いいかげんに済まさず、きちんとするべき事をやりきります。したがって見逃しは減りますが、こちらの仕事は積み上がります。近隣の方々が、「あそこの動物病院は高いらしいよ・・・」と噂する場合もあると聞いています・・・。うちが高いのではなく、やるべきことをやりきっているから結果として診療費が高くなる場合があるのです。もちろん事前に、必要性や見積もりを差し上げています。

例えば発熱の場合で風邪のこともありますが、腫瘍など命に関わる病気の場合もあるのです。鑑別診断は重要です。また単一の病気とも限りません。心臓も腎臓も悪くて糖尿病で癌・・・なんていう場合も稀ではありません。特に麻酔をかける前に検査は特に重要で、検査なしで麻酔をかけられる動物の身になってみてください。

言葉が話せない動物と、そのご家族のために真剣に医療に取り組んでいきます。簡単なことは近隣で、面倒な病気はうちで、それでも私はかまいません。逆は絶対嫌ですけどね。

二次医療機関との提携

2010-08-10 15:39:22 | Weblog
通常の一次診療(一般診療)は当然のこととして、うちの動物病院が目指す診療は、一歩先を行く「1.5次」診療です。
一般診療は手抜きを考えず丁寧に診察しています。医学的な根拠(診断理由)をはっきりさせ、複数の異常があっても、見落とさないように、最大限に気を使っています。日々そういう診療をしていると、もう少しハイレベルな医療を受けさせたい・・・、そういう飼い主さんも出てきます。対応可能な検査や治療・手術は当院で行いますが、獣医大学病院などの二次医療機関や開業の専門医に頼らねば無理な疾患を発見することも最近では珍しくなくなりました。

前回、ご紹介した先天性複合心奇形の猫ちゃんは、近いうちに獣医大学の心臓の専門家まで、連れていくことが決まりました。おおまかな診断はついている、しかし精密な診断や病態の把握はまだ完了していません。機械の能力と獣医師側の能力の限界を越えているため、責任のもてる医療情報が揃っていないからです。

専門家や大学病院との連携により、自分たちの実力以上の仕事ができるようになっています。今回は指定された診察日に、朝イチの新幹線で連れて行けば、十分日帰りが可能です。関屋駅を5時40分発の電車に乗れば、東京は十分日帰り範囲であります。診断をきちんと確定し、いちばんその子に見合った治療方法を選択したいと考えています。飼い主さんはお仕事で連れてはいけないそうですので、うちのスタッフ(今回はたぶん私)が連れて行くことになりそうです。そういう手間を私は苦に感じません。とことん全力を尽くしてあげるために、獣医師になったわけですから。