ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

ポートランド

2021-02-17 12:00:45 | 生活
 ポートランドとはメイン州の町のことである。筆者のニューイングランド生活は2020年で終わり、今はカリフォルニアのサンノゼ市の長屋に居る。ニューイングランドと比べれば気温は断然サンノゼの方が高く、確かに日中は太陽がまぶしい。だが筆者はむしろ肌寒さを感じることが多くなった。というのもコネチカットの長屋の窓は断熱のために二重であったし、窓枠には隙間風防止のパッキンが取り付けられていた。それに公共の廊下や周辺住民の部屋では暖房がガンガン効いていたこともあって、たとえ外が氷点下でも部屋の中で寒さを感じることはほとんどなかったのだ。だがこちらの長屋は外が寒くなればどこからともなく冷気が侵入してきて、すぐに部屋まで寒くなる。だからポートランドのことを思い出したのだ。


この町の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。


①メイン州のポートランド
“ポートランド”と聞けば、ジャパンのお洒落女子やエコ意識の高い女子などはオレゴン州のポートランドを想像するに違いない。だが筆者が訪れたのはメイン州のポートランドである。こちらのポートランドもオレゴンのそれとは負けず劣らずの人気の町で、米国では“住みたい町”や“芸術の町”などとして知られている。ハートフォードからは車で3時間程度だ。沖合の大きな島々に囲まれて外洋からの波浪や外敵から守られていることや、フォア・リバーの広い河口が船の係留に適していたことなどから、入植の後には漁業や工業の町として発展したものと思われる。筆者はこのポートランドを二度訪ねた。一度目の訪問は2017年の大みそかで、ニューイングランドには寒波が襲来して大雪になり、ポートランドの気温も華氏で10度以下となかなかたいへんな状況下での訪問となった。二度目は2020年の秋、ニューイングランドを年内に去ることが決まり、コロナで大型旅行もままならなかったので再訪してみることにしたのだ。



②ダウンタウン周辺
一度目の訪問ではダウンタウンの外れの安ホテルにチェックインし、まずは港の方へ歩いてみることにした。雪で真っ白になった緩やかな下り坂を慎重に歩き、フォア・リバーの河口に面した港へ向かう。港からは桟橋がたくさん延びていて、漁船が整然と係留され、ロブスターやカニを取るための網かごなどが置かれていたり、漁師の道具が入っている小さな小屋などがあったりと、生きている港のにおいがする。だが今は観光産業がメインの都市だけあって、桟橋の根元付近には獲れたてのシーフード料理を出す食堂やビール醸造所などで賑やかだ。いくつかのお店は大晦日ということで休業していたが、大衆食堂っぽい雰囲気で一人でも入りやすいところが開いていたので、さっそくビールとフィッシュアンドチップスをいただいたのだった。



③ポートランド灯台へ
ダウンタウンの建物はどれも数階建ての赤茶色の煉瓦作りで、歩道にもレンガや石畳が敷かれ、レトロな雰囲気がとても楽しい。ニューイングランドのこういった古い町並みが残る場所には、たいてい空き家や廃墟が多く見られて寂しいのだが、ここは雑貨屋やカフェなどのテナントがたくさん入り、街が活き活きとしているのを感じる。ハートフォードでは見られないホンモノっぽい日本料理屋も散見され、入ってみたくなる。筆者はそんな洒落た街の雰囲気に酔わされて、通りの小さな古着屋で茶色いスゥエードコートを買ってしまったのだった。だがとにかく寒いのでホテルに戻り、一度暖を取った後に少し南方の灯台を見に行くことにした。



④ポートランド灯台
ポートランド灯台はダウンタウンから南へ車で20分ほど走り、ちょうど沖合の島の遮断がなくなった、外洋から見えやすい小さな半島の先に建てられている。低い岩礁の上に立つ灯台と、それに隣接する建物は白を基調とした可愛らしいデザインで趣きはあるものの、筆者に大きな感動はなかった。だがこの灯台はジョージ・ワシントンの指示によって建設され、完成したのは1790年とたいそう歴史のある建物ということだ。悪天候にも関わらず多くの観光客が訪れているのは、この灯台に建国の歴史を感じるのも理由のひとつなのだろう。だがこの日は駐車場から灯台までの遊歩道がカチンコチンに凍っていてすべりやすく、すってんころりと転んでしまう中年女性なども見られた。筆者は灯台のそばで大西洋をしばらく眺めていたが、とにかく寒いのでホテルに戻ることにした。




⑤ポートランド美術館
二回目の訪問の目的地はポートランド美術館であった。特に予備知識があったわけではなく、“ポートランドの美術館なのだから素敵な展示があるに違いない”と期待したのだ。美術館はダウンタウンの南の外れにあるが、よくある美術館と違って建屋に主張が少なく、周辺のレトロなレンガ調の風景に溶け込んでいるので目立たない。コロナの影響で入場は完全予約制になっていた。予約時間前に到着した筆者は薄ら寒い小雨の中、入り口前で待つ羽目になったため、向いの三叉路の細い建物に入ったスターバックスで温かいカフェモカを注文して寒さを凌いだ。展示はなかなか素晴らしかった。特にホーマーのアメリカの生活を描いた作品が楽しいものだった。だが残念なことに筆者が「いいな」と思った作品に限って絵葉書になっておらず、記念品を買う意欲が失せてしまった。展示を見終わりふらふら町を歩いていると、ファンシーな雑貨屋風の店があったので入ってみればそれは画材屋だった。良く見れば向かいには美大があり、美大生ご用達のお店のようだ。店員のおばさんたちに『あ、この30代独身日本式サラリーマン風の男、ただの旅行者が土産物屋と間違って入ってきたのだな』と思われたのが癪なため、知った風に店内を回ると日本製の文具がけっこう売られているのを目にした。だから『これこれ、これを探していたんだ!』という体で物差しを1本買いました。




 一度目も二度目も夕食はサッポロで食べた。サッポロは港の通りにある日本食屋で、割と老舗に見える。他にももっと高級そうだったり、よりホンモノっぽい店名の日本レストランがいくつか見られたが、総じて30代独身日本式サラリーマンが一人で入るには敷居が高めだ。サッポロには失礼なのかもしれないが、安心感があった。だが寿司は日本人好みのネタが豊富で酢飯がしっかりして非常に美味であった。コネチカットではなかなか食べられない味で、“さすが”と思って店内を見れば、やはりカウンターには日本人の方がおられ、少し話を聞くことができた。敢えて日本の寿司に近いものを出すようにしているとおっしゃっていた。生ビールの後に一度目はにごり酒を、二度目は熱燗を飲んで気持ちよく宿に戻ったのだった。ポートランドは好きな町だが、好きだと言うのはお洒落女子みたいで恥ずかしいので、ここだけの話だ。それに筆者が好きなのは、メイン州のポートランドだ。

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