ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

花むら

2024-03-25 03:22:48 | 食事
花むらとは赤坂にある天ぷらのお店だ。筆者が去年の11月に、米国駐在ビザ更新のための帰国休暇の際に立ち寄った店である。その休暇の際には浦賀を訪ねたり、岐阜へ行ってみたりしたのは読者諸氏の記憶に新しいに違いない。筆者は決して食通ではないし、普段は高級料理屋というものとは縁のない生活を送っているのだが、人生で一度くらいは関東のホンモノの天ぷら屋で舌鼓を打つもの悪くなかろうという思いはあったのだ



このお店との思い出は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。


①花むらとの出会い
とはいえ予めこのお店を知っていたり、下調べして目を付けていたわけでもなく、出会いは偶然である。宿をとった赤坂駅周辺は、高級な雰囲気ばかりが漂うものだと勝手にイメージしていたが、割と庶民的で猥雑な雰囲気があったので楽しく散歩をしていた。それでも老舗風のシャトー洋館風の連れ込み宿や、かじりつくように書物を読みながら登校する古風な制服姿の小学生男子児童など、赤坂でしか見ない(かも知れない)ものも散見された。さらに坂道を上ると控えめな黒い看板で『天婦羅 花むら』とある。だが店構えは見えない。『つぶれてしまった店の看板かな・・』と思い路地をのぞき込むと、通りの店の一軒むこうに普通の民家風の建屋があって、そこにまた控えめな白い看板があった。佇まいに魅力を感じ、入ってみたいと思いつつも、同時に敷居の高さも感じ気後れしたまま通り過ぎたのだった。



②花むらへ行こう
翌日に何かの理由で再び花むらの前を通りがかったときにまたもや路地を覗けば、植木でいっぱいの店の前に、天ぷら屋の調理白衣と丸帽姿の老父が立っていて、天候を伺うように空を見ていた。その姿がなんだか庶民的な雰囲気で、『あ、花むらさんへ行ってみようかな』と思ったのだった。そして会社の研修の後の懇親会をすっぽかすことを決め、勇気を出して花むらへ予約の電話を入れたのだった。だが電話の先の女性はたいへんに優しく、勇気など不要であったことをすぐに思い知る。



③花むらへ入る
花むらの田舎の宅のような玄関を入り、予約の名を告げると廊下から二階へ案内される。祖父母の宅のような古い家の匂いと、染み付いた油の匂いが交じり合った空間は心地が良い。二階の部屋は正方形の掘りごたつカウンターになっていて、中央に調理場がある。そこに先日見かけた老父がいた。彼が主人で、彼が揚げてくれるのだ。天ぷら油が染み付くせいなのか、部屋の壁の色がタヌキ色にくすんでいて年季を感じる。



“天ぷらなんてもんは、昔の駄菓子みたいなもので高級でもなんでもないし、もともと東京湾は干潟でろくな魚が取れなかったから、この調理法が生まれたのです”と主人(78歳)は言うが、同時に“江戸前寿司なんて米に魚のせてるだけで、技術はいりませんよ”と天ぷらプライドものぞかせる。そして天ぷらを揚げるときのその目つきは真剣だ。揚げるときには“ジュー”という音を想像していたが、彼の天ぷらからは“ピトピト”と微かな音しか鳴らない。薄い衣は優しくて、油のうま味と食感が素材のうま味を生かしている。この花むらさんの天ぷらならばいくらでも食べられそうだ。瓶ビールと熱燗で天ぷらコースを堪能したのだった。大正時代から続く店は主人が3代目、そして二人の見分けがつかないほどそっくりの息子が4代目になるという。“長く続けるためには控えめの方がいい。だから表通りから一軒奥でやってるんです”と主人は言った。

フル・ハウス・チャイニーズレストランの米麺ラーメン

2024-03-24 04:12:49 | 食事
フル・ハウス・チャイニーズレストランの米麺ラーメンとは、バーリンゲーム市にある中華料理屋の米麺ラーメンのことである。最近は日本でも米粉麺食の普及が進んでるようだ。それは“グルテンフリー”“小麦アレルギーフリー”などの健康志向目的以外にも、国際情勢不安と円安による小麦の高騰や、米粉麺大好きベトナム人移民(研修生?)の増加に理由があるように思う。似非30代独身日本式サラリーマンが非モテ貧乏大学生だった頃は、輸入パスタが500グラム100円前後で、それはそれは貴重な主食だった。同じく100円前後で購入できたミートのほとんど入っていないマ・マーのレトルトパウチミートソース、それにゆで卵とブロッコリーも全部一緒に大鍋で茹で、胃袋へかき込んだものである。ずいぶん昔の思い出だ。因みに最近SNSで、この調理方法が禁忌扱いされているのを見かけた・・。


この店の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。


①立地
フル・ハウス・チャイニーズレストランはバーリンゲーム市にある。とはいってもブルジョア臭の強い洗練されたダウンタウン界隈ではなく、 “バーリンゲーム・プラザ”という名の商業エリア内にある。それはミルブレー市のダウンタウンから少しだけ南のエル・カミノ通り沿いのエリアで、弱々しい街路樹に囲まれてやや廃れた様子がある。たまに洗練した雰囲気のラーメン屋やおでん屋などの挑戦的なテナントが入るものの、長く続かず潰れてしまうようだ。でも老舗のサンドイッチ屋やドーナツ屋もあるし、アンデルセンベーカリーも入っていたりもする。このフル・ハウス・チャイニーズレストランは、グーグルマップのレビューには8年前のコメントがあるので、そこそこ老舗のようだ。



②外観
フル・ハウス・チャイニーズレストランの外観は魅力がない。“Full House Chinese Restaurant” とポップな書体で書かれた英語の看板からは、中華人民共和国の重々しさが感じられず、その左に書かれる形ばかりの屋号のような麻雀の “発” の文字も嘘くさい。それでも中を少し覗いてみれば、入ってすぐに丸見えの厨房があり、中国人の中年男たちが数人、せっせと料理をしている風景を見ることができる。その風景は本格派な中華料理屋風で気持ちが良い。そしてホール係の中年女が近寄ってきてホールへ案内される。この店はホールが厨房の奥にあり、ホールへ行くには厨房を横切るという一般的なつくりとは真逆の構造になっているのだ。




③ホールとメニュー
奥のホールは安中華食堂の雰囲気があって一人客でも居心地がいい。そして実はホール側にも裏口があり、馴染みの客たちはそちらから入ってくる。裏通りには斜めに路上駐車できるスペースが確保されているので、そこに駐車するようだ。というより筆者が“表”と思っている側が“裏”で、裏口と思っている方が本来の入り口なのかも知れない。ということはこちらの裏通りは実は表通りということだ。そう、裏と表などと言うものは所詮ニンゲンの意識の中にしか存在しないということを、改めて思い知ることができるお店になっている。メニューはとても豊富だけれど、この近辺の中華料理屋と比べて珍しいものがある訳ではない。



④米麺ラーメン
筆者がいつも頼むのが、葉物野菜の漬物と豚細切れが入った米麺ラーメンだ。こいつはうどんよりも細いが冷や麦よりも太い米麺の上に、野菜と豚肉がたっぷりのっかった汁麺で、旨いのだ。薄味のスープに酸味のある漬物と豚肉のうま味が溶け込んで、柔らかい給食風米麺の具合もちょうどよい。毎週末の二日酔いの日の昼食には最高である。常連客もこれを注文して二人で取り分けている人をよく見かける。それを筆者は一人でペロリと平らげるので、毎度毎度女店員や男店員に『お! 全部食べた!』と驚いてもらえるのだ。




裏表のない店の構造上、店内に店員の休憩所がないので、二人の男女店員はよくホールで賄いを食っている。それはだいたい筆者が頼む汁麺に姿が似ているので、『今度はそれを食べてみたいのだが・・』というと、『これはメニューにはないネ! でもスープは同じネ。野菜の出汁が出てるから体にいいので、毎日食べているヨ!』と言われた。どうやら“裏メニュー”はあるようだ。最近は米麺ラーメンと一緒に持ち帰りで一品注文している。牛肉と野菜漬物の炒め物なども美味しいですよ。 

ジョージアのイメルリチーズ

2024-03-11 05:42:17 | 食材
ジョージアのイメルリチーズとは、ジョージアのイメルリ地方の伝統的なチーズのことだ。それは中米からの移民問題で最近やや話題のアトランタ市などがある北米ジョージア州のことではなく、国のジョージア(旧グルジア共和国)である。州のジョージアと国のジョージアの名前の由来には全く関係がないそうだ。そういえば日本ではコカ・コーラ社製品に“ジョージア”という缶コーヒーブランドがあるが、これはコカ・コーラ社の本社が北米ジョージア州にあることに由来する。筆者はこのイメルリチーズを、マウンテン・ビュー市の東欧スーパーで見つけて気に入ったのでここで紹介する。日本では日経平均株価がバブル期の最高値を更新し、ついには4万円の大台に乗ったというニュースに湧いている。実は筆者も株遊びを始めており、現在のところけっこう儲かっているため、純粋にジョージア、じゃなかった、ファイヤーを考えている。


この食材との思い出は以下のとおりだ、参考にしてもらいたい。


①Samovar グローサリーストア
米国にはロシア、ルーマニア、ポーランドなどの東欧から来た移民の人も多い。とはいえアジアや中南米からの移民に比べると、その規模は特に西海岸では小さい。その所為なのか、それとも彼らの食文化が米国のそれと大きく違わないためか、東欧系の食材を輸入販売するスーパーはたいてい小ぶりである(ちなみに以前紹介したサンノゼの老舗ロシアスーパーの、ロシアン・カフェ&デリは潰れてしまった。)。筆者はそんな東欧スーパーには普段は用事がないのだが、今回たまたまサンカルロスのジョージア料理レストランで、ジョージア産のワインが美味であることを知る機会があったので、それを入手すべくやってきたのが、このマウンテン・ビュー市のSamovarという名の東欧系グローサリーストアである。


②Samovar グローサリーストア
残念ながらこのSamovarグローサリーストアには酒類が置いていなかった。それでもマウンテンビュー市のコスコ(日本で言うところのコストコ)の裏の建屋に佇むこの店は、やはりその他の東欧スーパーと同じく店内は小ぢんまりしているものの東欧系の楽しい商品が多く並び、特に手作り風の総菜類が充実している。何でもアゼルバイジャン出身の男性とジョージア出身の女性夫婦に経営される割と古いグローサリーストアらしい。店員はアジア系の風貌をしている。東欧には騎馬民族の影響でモンゴロイド系の血が色濃く残っているときくが、その所為かどうかは知らない。
③ジョージアのイメルリチーズとの出会い
冷蔵庫の中のチーズコーナーも充実している。イメルリチーズはちょうど乳児の脳みそのような大きさと色とかたちとをして、その冷蔵コーナーでひとりでじっとしていた。真空パックされたプラスチックが皺を作っているのが、なおのこと乳児の脳みそのように見える。中央の円形のラベルには米国とジョージアの国旗(5つの赤十字が描かれる)が並んでいるので、もともと輸出用に作られているもののようだ。ラベルの下部には輸出業者としてラッキー社、米国での販売代理店のしてのタマニ・フーズ社の名が記載されているが、製造会社は左隅にある“კარგი社”のようだ(ジョージア語には独自の文字がある)。乳児の脳みそほどの大きさで26ドルもしたが、思い切って購入した。



④イメルリチーズの味
長屋に帰って真空パックからイメルリチーズを取り出すとほんのりと燻製の香りがする。乳児の脳みそのようなイメルリチーズを半分に切り、また半分に切ってから2~3ミリの厚さで切って口に放り込むと、旨い。硬めの乾いた食感、ふんわりとしたスモークの香り、雑味が少ないのに濃厚で、後に残る酸味も心地よい。筆者がすぐに近所の酒屋へ走り、黒ビールを買ってきた。チビチビとこのイメルリ・チーズを口にしながら黒ビールを飲むと、ヨーロッパの労働者になったような気分になれるというものだ。



さて、サン・カルロスのジョージア料理店で食事をしていた際、店の男に『地中海料理とロシア料理のあいのこのようですね』というと、強く否定された。“ロシアとはコーカサス山脈で隔たれているので、気候はまるで違って温暖で、日光も豊かだから、作物なら何でも植えるだけで育つ。食べ物はロシアとは違う”のだそうだ。筆者としては、かつてのグルジアとして、臥牙丸関や黒海関や栃ノ心関などのグルジア出身力士たちを思い出す。尻を人前にさらすことに抵抗の少ない国の人々のようだ。現ジョージア大使のティムラズ・レジャバ氏もセンスのある男のようだし、これから要注目の国である。ただ、把瑠都関はエストニア出身だ。

雙鯉牌の“特脆 魚皮花生”

2024-03-03 03:31:26 | 食材
雙鯉牌の“特脆 魚皮花生”とは、筆者がパシフィック・スーパーで見つけて購入した豆菓子である。そう、またもや豆菓子である。そしてまたもやパシフィック・スーパーなので、まくらの紙面が稼げない。そこで『豆といえば・・』と何かネタを探していたところ、筆者は梅垣義明という人を思い出した。派手な衣装に厚化粧で、女性歌手(越路吹雪)のものマネをしながら鼻の穴から豆を飛ばすという芸をしていたワハハ本舗の男性である。Vシネマのミナミの帝王シリーズなどで素顔で俳優としても活躍していたのを、大学生の頃に土曜日の午後のローカル放送などでもよく見たものだ。ウィキペディアで彼のことを調べてみると2024年現在も健在で、コロナ禍で自粛を余儀なくされた豆飛ばし芸をついに再開したとのことであった。



この豆菓子の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。


①“特脆 魚皮花生”との出会い
中華系の人々は豆や種を菓子にすることに長けているようで、アジア系スーパーのお菓子コーナーにはナッツ類以外にも南瓜や西瓜の種などを菓子にしたものが多く売られている。とはいえ北米に駐在を始めて10年が経とうとしているというのに、その辺りの種菓子にはいまだに挑戦できずにいるのが現状だ。実は今回紹介する商品も“魚皮花生”という少し薄気味悪い商品名から、何度か見なかったことにして通り過ぎていた。しかし透明の袋に透けて見えるその豆菓子は、素朴な植木鉢色をしてヤギの糞のような愛らしい形状なので、不思議と目に止まる。そして2024年の2月、ついに手に取った次第である。



②“特脆 魚皮花生”の外見
“特脆 魚皮花生”とはピーナツをコーティングしたお菓子である。“魚の皮でコーティングしているのかな・・”と、おそるおそる内容物表示を見たところ、それは小麦粉・醤油・塩と馬鈴薯でんぷん、それに若干の添加物のみであったので少し安心(ややがっかり)した。レトルト・カレーのパウチ程度の大きさのプラスチック袋に227グラムの豆菓子が入っている。袋の正面にはブランド名で“雙鯉牌”と書かれ、二匹の鯉が、毬なのか古銭なのかの黄色い円を挟んで向かい合うロゴが描かれている(“雙”とは“双”と同じ文字なのだそうだ)。“EST.1987” とあるので、このブランドの設立は日本がバブルの絶頂で、銀座の土地が一坪1億円と言われた年だ。よく見るとこのロゴの右側に小さな緑色のギザギザ吹き出しがあって、中に白抜きで “原味” と書かれているのが可愛らしい。値段は2.5ドルほどだ。



③“特脆 魚皮花生”の封を開けて食べる。
“特脆 魚皮花生”の封を開けると、ジャラジャラと豆菓子どうしが擦れる音がする。それはまるで碁石入れを揺らしたときのようで、この豆菓子の硬度が想像される。一粒手に取るとそれはやはり硬い。かなり厚めのコーティングがされていて、しかも中のナッツとは分離しており、コーティングの中でナッツがコロコロと動くのが可愛い。そして口に放り込む。これがなかなかに味もよく、安心(少しがっかり)した。コーティングの恐ろしいほどのカリカリ食感(おそらくこの食感のことを“特脆”と表現している)が心地よく、さらにコーティングとナッツの空隙が食感を軽くする。そして香ばしいナッツ、全体として薄味で甘さが少なく嫌みなく食べられる。軽めの朝ごはんとして5、6粒食べたり、酒のつまみで食感を楽しむのにも大変よく、気に入ったのだった。



しかしコーティングが厚すぎて、鼻の穴に入れるには少々大きすぎる(勝間和代先生なら何とかなるかも知れない)。そう思って梅垣氏について再度調べてみれば、彼がその芸に使用していたのはなんと春日井のグリーンスナックだったそうだ。春日井のグリーン豆は筆者の北米生活には欠かせない、大変貴重な食材になっている。“世界は不思議なところでつながっているものだ”と感慨深く夜を過ごした。千葉県周辺で地震が多発している。本ブログ読者の関東周辺似非30代独身日本式サラリーマンたちは、備えを怠らなないようにしてもらいたい。豆菓子は非常食にも良く、サイズによっては鼻の穴にしばらく保管できる。