ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

マスター社のいわしの缶詰~GATA~

2024-07-07 08:45:10 | 食材

マスター社のいわしの缶詰とは、フィリピンの缶詰会社が製造するいわしの缶詰のことである。これがなかなか面白い商品であったので、ここで紹介したい。世界の年間いわし漁獲量はおおよそ400万トンだという。一尾あたりをだいたい20グラムと考えれば、それは2000億尾にあたり、目下人口爆発が懸念されているニンゲンの数の25倍にもなる。しかもそれは人間に運悪く捕まえられているいわしの数であって、海洋には少なくともその数倍のいわしが居るに違いない。とんでもない勢力である。仮に宇宙から別の生物が地球の調査にやってきたならば、最初のうちは地球の支配者をいわしだと思うかもしれない。いや、実際にいわしなのかもしれない。鰯などという呼称は、いわしに失礼というものだ。

 

 

この缶詰の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。

 

 

①世界のいわし食

いわしの缶詰は、どこのスーパーへ行っても売られている。ムスリムの人々のためのグローサリーストアでも、(たぶん)アラビア文字が書かれたいわしの缶詰がけっこう幅を利かせている。いわしは宗教・民族・地域に寄らずに食される動物であるようだ。とはいえ、レストランなどでいわしをメインにするようなメニューに出会うことは稀だ。筆者の場合、ポルトガル料理屋で見たイワシの丸焼きのみである。おおよそ安い大衆魚としての扱いのように思われる。そして大量に“獲れてしまう”が故に、缶詰にして保存する方法が一般的になったように思われる。尚、それらのいわしの缶詰はたいていトマトソースに浸けた状態で缶詰にされている。

 

 

②フィリピンスーパーのいわしの缶詰

最近よく出向くフィリピンスーパーでは、ことのほかいわしの缶詰が充実していて驚く。いわしの“缶詰食文化”に限れば、フィリピンは世界一のように思われる。ドラム缶のミニチュアのような俵型の、手のひらに具合よく収まる缶詰がラックにぎっしり並べられている。メーカーも数種類あり競い合っているようだ。やはりその多くは“トマト・ソース”入りなのだが、少なからず面白い商品が見られる。特にマスター社の“ココナッツミルク浸け”は、他所では見かけないので、勇気を出して購入してみた。1缶1.5ドルほどの商品である。

 

 

③マスター社のいわしの缶詰~GATA~とは

このマスター社のいわしの缶詰ココナッツミルク浸けは、赤と緑を基調にしたカメルーン代表のようなラベルに、中央には香草や香辛料系の野菜と共にいわしが並べられた写真が載る。この写真から想像するに、調理はせずにそのまま食べるもののようだ。また、中央の緑の部分に“GATA”と書かれている。これはタガログ語でココナッツミルクのことのようだ。缶の底にはタガログ語で“KAYA SARIWA(とっても新鮮)”と書かれている。

 

 

④マスター社のいわしの缶詰~GATA~を食べる。

小さな缶にニンゲンの薬指ほどの大きさのいわしが縦に4,5尾入っている。ココナッツミルクソースはトロミがあってそのいわしによく絡んでいる。皿に取り出し食べてみれば、これが意外にもなかなか美味である。ココナッツミルクの甘みには嫌みがなく、いわしの味を邪魔しない。それに唐辛子がしっかり効いてパンチがある。甘みと辛みと青魚の臭みがなかなかマッチして、酒が進む食材だ。

 

 

 

さて、昔の日本ではいわしは田畑の肥料としても使われていた。蝦夷国でニシン漁が盛んになるまでは、千葉のいわしの水揚げ量がその年の米の出来高を左右するとも言われていたのだそうだ。まさに人類を支えているのはいわしのようだ。『いわしの頭も信心から』などとまるでいわしをバカにしたようなことわざまであるが、ニンゲンが崇拝すべきなのは、まさにいわしなのではないだろうか。そんなことを考えながら、2024年の米国の独立記念日を迎えた。どこかで花火が鳴り響いている。


タンポポの葉

2024-07-05 00:00:23 | 食材

タンポポとは、キク科タンポポ属植物の総称である。改めて考えれば珍妙な名前である。“きっと外来語由来であろう”と思い調べたところ、どうやら自国語のようだ(語源の説がウィキペディアに載っているので、興味のある30代独身日本式サラリーマンは参照されたい)。そして英語では“ダンデ・ライオン”というなかなか格好いい名前を持つ。筆者のこれまでの人生経験では、このタンポポはニンゲン界では“雑草”に分類されており、小児らが綿毛で遊ぶ以外には用にならないものだと思っていた。しかし北米のスーパーマーケットの野菜コーナーに、“ダンデ・ライオン”が売られていることを見つけたので、ここで紹介したい。

 

この食材の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。

 

 

①アヤール・プロデュース・マーケット

タンポポの葉は、アジア系スーパー(ベトナム系・韓国系・フィリピン系・中華系・日系)では売られていない。どうやらアレは雑草であって食べ物ではないという考えは、東アジア共通のようだ。筆者がタンポポの葉を見つけたのは、サウス・サンフランシスコの小さな中南米系スーパーの“アヤール・プロデュース・マーケット”だ。町工場のような建屋が並ぶエリアの小汚い運河沿いにあるスーパーで、狭苦しい駐車場に難儀する場所である。野菜コーナーの上部の棚に束されて売られている。

 

 

 

②タンポポの葉

アヤール・プロデュース・マーケットで売られているタンポポの葉は、形状は筆者の知るところのタンポポの葉に近い。細長く、ギザギザしている。しかし手に取ってみると思いのほか大きく、中央の葉脈のしなやかで力強い感触に驚く。それに色が濃く、日本の河川敷や誰もいない児童公園などで咲いているものとは少し品種が違うようにも思われる。とはいえ目下、40代独身ファイヤー民を目指している筆者は、引退後は雑草などで飢えを凌ぐ必要も出てくることも想定し、今のうちからタンポポ食に慣れておくのも悪くない。そう思い購入に至った。値段は1束2ドル強と、雑草としては高級である。

 

 

③タンポポの葉を調理する。

こういった雑草はたいていの場合灰汁が強いので、長めに茹でておひたしにするのが定石である。筆者はグラグラ煮たてた鍋にタンポポの葉を放り込み、4,5分ほど茹でてみた。しかし湯の色はほうれん草ほどには緑化せず、ほのかに緑茶のような香りがしてくる。茹で上がったタンポポの葉を切り刻んで、これも定石の、“ゆかりふりかけ”で和えて冷蔵庫に入れておいた。そして夕食時に取り出して食べてみると、これがなかなか旨い。滋味とも呼べる範囲の苦味と繊維が心地よく、ゆかりの香りともマッチしている。筆者は一人長屋で、レスリングの小林孝至さんばりのガッツボーズを決めたのだった。因みにサラダで食べても十分美味しいです(マヨネーズとの相性がよい)。

 

 

またもやウィキペディアさんを頼れば、タンポポは欧州(特に東欧や中東)では比較的一般的な食べ物のようで、スロベニアでは人気との記載がある。今回タンポポを発見したたのも、一応スペイン語圏の中南米系スーパーであるし、西洋人の方が雑草食文化があるのだろうか。最近はめっきり米国の普通のスーパー(セイフウェイやホールフーズ等)には行かなくなったので、そちらのスーパーにも調査に出かけてみる必要がある。また、日本でも若葉をおひたしにしたり、根をきんぴらにしたりしているとの記載がある。タンポポの根はまだどこのスーパーでも見かけない。ファイヤーに向け、さらなる調査が望まれる。


雪花啤酒

2024-06-24 07:53:17 | 食材

雪花啤酒とは、中国産のビールである。筆者は、中国産のビールと言えば青島ビールしか知らなかった。だがよくよく考えればあの超大国でビール会社が一社しかないというのもおかしな話である。それでもベイエリアの中華食堂に入ってビールを頼もうとすれば、青島ビール、もしくはサッポロなどの和製ビールがあるばかりで、その他の大陸ビールにお目にかかったことはない。今回ついにこのビールに出会ったので、紹介したい。日本では今いくよさんや桂ざこばさんらが亡くなり、“ひろみちお兄さん”こと佐藤弘道さんが、脊髄梗塞という恐ろしい病になったりと、世の中を不安にさせている。30代独身日本式サラリーマンは、健康であることに感謝し、多少の孤独には耐えるべきである。

 

このビールの紹介は以下のとおりだ。参考にしたもらいたい。

 

①雪花啤酒との出会い

筆者が雪花啤酒と出会ったのは、デイリーシティのHマート(韓国系)である。デイリーシティのHマートの酒コーナーは、和製缶ビールの在庫が無かったり、焼酎が冷蔵庫で冷やしてあったり、白酒などの中国酒の取り揃えが充実していたりと、他の韓国系スーパーとは様子が異なるのが面白い。雪花啤酒は、冷蔵庫の最下段にその他の和製瓶ビールと共に並んでいた。雪花啤酒は濃い茶色の瓶で、小麦色のラベルには雪の結晶を象った朱色のロゴが載り、何だかレトロな雰囲気がある。1瓶7ドルの高級酒だが、購入に踏み切った。

 

 

②雪花啤酒

産地は“辽宁省沈阳市”とある。これは遼東省の瀋陽のことだ。瀋陽は満州人王朝の清国のもともとの首都(第三代皇帝順治帝が北京へ遷都)であり、日本軍に一時期占領されたかつての奉天でもある。そう、この雪花ビールは、その満州国時代に大日本麦酒(サッポロ・アサヒの前身)とキリンビールの合弁会社として作られた満州ビールが起源なのだそうだ。ネットで調べた雪花ビールは青い爽やかなラベルの、アメリカ臭のあるデザインのものが出てくる。どうやら筆者の購入したレトロデザイン版は、“瀋陽華潤雪花ビール”といい、少し違うようだ。青いデザインの方は買いたくないので、こちらに出会ってよかったと筆者は思った。

 

③雪花啤酒を飲む

これが大変美味であり、筆者は嬉しくなって長屋でひとり、デストラーデ選手ばりのガッツポーズを決めてしまった。日本のキリンラガーに似ている懐かしい味である。久しく忘れていた瓶ビールの風味が口中に広がり、ほのかな苦味が何とも言えず心地よい。ワンカップのラベルを剥がして使っているコップに注ぐときの、トクトクという音も嬉しいものだ。中国でもこちらの瀋陽華潤雪花ビールは、クラシックビールとして愛されているに違いない。もしくは日帝ビールと蔑まれているだろうのだろうか。

 

④雪花啤酒は今のところ入手が難しい。

残念ながら雪花啤酒は、デイリーシティのHマートにいつもある訳ではない。最近は置いていないことが多く、期待して出かけるとがっかりする。

 

 

さて、数年前にウクライナで始まった戦争は未だに解決が見えていない。イスラエルの方もハマスやフーシ派やヒズボラなどと、いろんな組織が現れて新しいのか古いのかもう訳が分からない争いをしている。そして国連やアメリカやG7の国々はそれを統制できていないようだ。ブリックス諸国やグローバル・サウスを呼ばれる国々は、脱ドル化を進めているともいう。そして米国では81歳と78歳の老人が大統領選を戦う。米国の覇権の終わりが近いのは確かなように見える。30代独身日本式サラリーマンは、80代独身日本式老後を、孤独かつ平和に送ることができるのだろうか。そんな不安を忘れるために、雪花啤酒を飲む。


能量99 棒

2024-05-16 13:19:35 | 食材

能量99 とは、台湾製のスナック菓子である。古来の仏教では、僧侶は裁縫・農耕・建築などの衣食住に関わる能動的行為の一切を禁じられ、全てのものはヒトから恵んでもらわなくてはならなかったそうだ。ヒトから恵んでもらえるもの、つまりヒトが“不要だと思うもの”で生活していくことにより、欲と争いに塗れる外界と距離を置き、自身を律していくという崇高な考えに基づく。しかしやがてヒトの良いヒトたちが、“自分の要らないもの”ではなく“お坊さんが欲しいもの”を恵むようになってしまい、世の中は生臭坊主が溢れかえる状態になってしまった。そして現代版初期仏教僧と呼んでもよいホームレスや引きこもりニートが蔑まされるといった、あべこべな状態にある。世直しが求められる。今回は能量99の紹介である。

 

この棒の特長は以下のとおりである。参考にしてほしい。

 

 

①能量99 の見た目

いつものようにアジアスーパーのお菓子コーナーで、ランチ用のスナック菓子を物色していると、袋麺の5食入りプラスチックパックをやや小さくした直方体の袋が並んでいるのが発見できる。その袋の正面にはデカデカと、“能量99 ”と書いてある。様々な豆や穀物の写真がラベルの背景になっていて、ヘルシー志向の商品であることが見て取れる。やおら手に取り、袋の上部の透明の部分から袋の中を覗きみればかすがなる、そこには“やおきんのうまい棒”より二まわり小さい棒状の袋が、縦に並んでぎっしりと詰まっているのが見える。このように小分けにされた商品はランチ用としてはありがたい。筆者は購入に踏み切った。ちなみにチョコ味、カボチャ味、たまご味、やむ芋味の4種類がある。

 

 

 

②能量99

この能量99 、内容成分を見てみると、何と12種類もの穀物豆類が入っている(玄米、蓮の種、大麦、ソバ、オートミール(燕麦)、エンドウ、小豆、緑豆、インゲン豆、黒大豆、黒もち米、そしてコーン)。あながちラベルの写真は誇大広告ではないようだ。因みに筆者はオートミールがエンバクという穀物の名前であることをこの時に知った。この能量99 棒の製造元は北田食品という、1988年設立の台湾桃園市に本社を置く企業である。鏡餅のような形状のロゴからは、日系由来の会社ではないかと予想されたが、そのような情報は見つからなかった(日本にもかつて兵庫県加古川市に同名の会社があったようだが、今はないようだ)。

 

 

 

③能量99棒を取り出す

小分けにされた棒状の袋にも穀物豆類の写真が載せられているが、この小袋の方は“棒”の文字が他の文字と同サイズである。この包装は余白が少なく、縦方向にしか切れないため、斜めに少しだけ切り、角に作った穴を指で広げて能量99棒を剥きだしにしなくてはならない。包皮を指で剥いてやっとこさ顔を出した小ぶりの能量99棒の先っぽは、優しい麦色をしている。

 

 

 

④能量99棒を食べる

外側のスナックは、軽さと存在感が共に感じられて食感がよい。12種の豆雑穀がバランスよく交じり合っているからか、味には主張が全くなく、素朴そのものだ。その分、中央部分のチョコの味(筆者はチョコ味が好き)のうま味が引き立ち、小分けの袋が不要なほどにムシャムシャと食べてしまい、みるみるうちにデスクの上に小袋のゴミ山ができ、女子社員から奇異な目線を向けられることだろう。

 

 

 

商品名にある“99”は、商品と直接関係のある数字ではなさそうだ。しかし九十九という数字は日本でも“ツクモ”という特別な読み方をする数であるし、九十九里浜などといった地名にも用いられる。“数えきれない”“永遠”を思わせるとともに、“百からたった1だけ足りない”という儚さも兼ねた深みのある数字に思われる。そういえば似非30代独身日本式サラリーマンが幼少の頃には1999年には地球が滅びるといった予言が面白おかしく語られていた。2024年の五月には世界では太陽の爆発(核運動?)が活発化したため日本でオーロラを見ることができたらしく、それがまたもやいろいろな不安を呼んでいるようだが、ノストラダムスさんの予言からはもう25年も余計に生き延びているのだから、我らはそろそろ心静かに最後を迎えようではないか、どうせ一人だし。

 


スイカの種

2024-05-05 02:18:40 | 食材
スイカの種とは、スイカの種子のことである。米国で車を運転していると、窓から顔を出し、風を受けて気持ち良さそうな表情した飼い犬たちをよく見る。彼らはニンゲンが編み出したこのマシンに対して何の知識もないはずなのに、恐ろしい(はず)の速度で走る箱の中に居ても、何の恐怖も疑問も持っていないようなので、こちらとしては不思議な気分になる。だが自身を振り返って考えれば、実は我々もクルマのことで知っていることは多くない。にも関わらず疑問も恐怖も持たずにいる点では、飼い犬たちと差はないように思う。生き物の『事象を受け入れる能力』は極めて高いのかも知れない。仮にネアンデルタール人さんが間違って現在にタイムスリップしてきても、すぐにスマホでラインを始め、アダルト動画を見るのだろう。今回は食べるスイカの種を紹介しよう。


この種の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。


①スイカの種と日本
スイカの種は、日本有史以来忌み嫌われる存在のように思われる。その黒ゴキブリの子供のような見た目のせいか、『食べると食あたりを起こす、盲腸になる』などと言われており、幼児の頃に母や祖母などから“飲み込まないように”と注意された記憶がある人も多いに違いない。また、客先でスイカを出された時の種の処理の礼儀作法は、日本社会で未だに確立されておらず、人々を戸惑わせる原因となっている。そのためついには“種なしスイカ”なるものが開発され、主流となっている状況にある。かつて昭和後期生まれの少年にトラウマを与えた “加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ” の“スイカマン”のコントにも、スイカの種に対する潜在的な忌避感が根底にあるように思われる。


②食べるスイカの種
以前もどこかの回で紹介したが、北米のアジア系スーパーでは日本人には馴染みのない豆や種が売られていて面白い。とはいえ①で挙げたような背景があるため、筆者はアジア系スーパーの食料品コーナー(園芸コーナーではない)でスイカの種の袋詰めを見つけても、積極的な購買意欲を持てずにいた。しかしフィリピン系のパシフィックで売られている商品は、ラベルのデザインがトロピカルでポップなので挑戦することにしたのだ。それはルシア社の商品で、黄色いラベルには手書き風のスイカのスケッチがある。ちゃんと黒い粒々も丁寧に描かれていていて具合がいい。



③ルシア社のスイカの種
このルシア社のスイカの種は、見た目が日本のものとは異なる。黒みが少なく、チャバネゴキブリほどの大きさがあって、スイカというよりは大き目の向日葵の種に近い風貌をしている。だが、ラベルには確かにWATERMELON SEEDSと書かれているし、絵もスイカなので、スイカのはずだ。内容物はスイカの種と塩のみなので余計な香りや味付けの無いシンプルな商品と言える。


④ルシア社のスイカの種
これが食べて楽しい商品だったので、一人長屋でデストラーデ選手ばりのガッツポーズを決めてしまった。それと同時に長くの間、些細な偏見から購入を避けていた自身への反省もあった。食べ方にコツがある。このスイカの種は、皮は食べずに中の胚の部分だけを食べるのだ。まず歯で種の先の方のみを割って、そのあと今度は残った殻を縦方向に歯を立てれば、パリリと割れて中からナッツ色の薄い胚の部分が顔を出す。うまくいけば、スマートフォンのシムカードを取り出すように、殻から胚の部分を綺麗にスルリと指で摘まみだせる。これが気持ち良い。うまくいかないことも多く、それがまた楽しい。味はナッツの風味に、ほのかに僅かに甘酸っぱい匂いがあって、嬉しい。チビチビ飲む酒のつまみとしてなかなか上等である。



“仮にネアンデルタール人さんが間違って現在にタイムスリップしてきても、すぐにスマホでラインを始め、アダルト動画を見るのだろう”と書いたが、それは間違っているかも知れない。彼らが滅んだのは『事象を受け入れる能力』が足りなかったからかも知れないからだ。車を恐れる生物、火を恐れる生物、体制に疑問・不満を持つ生物は淘汰され、考えず、疑問も持たず、エライ人が発明したもをすぐに受け入れ、体制に従うことができる体質の生物(飼い犬)が、生き残ったのかも知れない。選挙に行かずに、構造のわかっていない機械やシステムにただ身を委ねる特殊能力を持つニンゲンが最強・・・などと考えつつ、種の保存に貢献しそうにない30代独身日本式サラリーマンが、スイカの種をポリポリしている。