サトイモとは、タロイモ類の仲間のイモのことである。日本人はたいていジャポニカ米のことを“米”と呼び、その他の米を“タイ米”や“ジャスミン米”などと頭に冠を付けて区別する。筆者の昔の知り合いには、牛肉のことを“肉”と呼ぶ人があった。その人は鶏や豚の肉については“鶏肉、豚肉”と呼ぶが、牛肉だけは“肉”と呼ぶので面白かった。つまるところ当事者にとってのメイン種には、冠が外される傾向にあるということであろう。一方でジャガイモ、ヤマイモ、長芋、サツマイモなど沢山のイモがある中で、日本人にとって“イモ”という名の芋がないのは、“メインのイモ”が無かったという証左であろうか。今回は北米のサトイモ事情について書く。
この食材の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。
①サトイモはどこで売られているか。
北米でもサトイモは手に入る。しかし西洋人にとっての“イモ”とはやはり“ジャガイモ(ポテト)”のことであり、北米の白人用スーパーへ出向いても、サトイモを見ることはあまりない。サトイモ(タロイモ)の原産は東南アジアであるらしく、大航海時代にアンデスでジャガイモの方を先に見つけたことからか、タロイモの類はマイナー商品で、西洋人の食卓に並ぶことはないようだ。これは筆者の予想だが、西欧人はヌルヌル・ネバネバした食感を好まないのではないかと思う。オクラ、サボテン、ジュンサイ、長芋、メカブ、サトイモのような、ネバネバヌルヌル系の食材は、主に南米やアジア系のスーパーの方で見るものだ。ちなみに南米系スーパーではヤム芋の類が多く売られる。
②Taro EDDO
サトイモは“Taro EDDO”という表記で売られている。以前紹介した“YAMAIMO”とは異なり、日本からの輸入商品ではなく、産地は中国やメキシコであることが多い。“まさかEDDOとは”江戸“のことか!?”と思ったが、残念ながらガーナの言葉が由来のようだ。Taro EDDOはネットに6、7個が入った状態で売られる場合もあるが、たいていは段ボールに山積みにされているものを自分で袋に詰めるシステムだ。大きさや形が揃わずにまちまちで、ラクダの皮膚のような醜いサトイモを、手に取ったり戻したりして物色するニンゲンを見ているのは面白い。
③サトイモの調理は茹でて、浸けるのが最もよい。
サトイモは煮っころがしにするのが一般的であろう。しかし煮すぎるとぐちょぐちょになってしまって不快であるし、煮が足りないと味の染みが悪いので具合がよくない。思案の末、筆者は茹でてちょうどよい固さになったサトイモを、醤油に浸ける方法をとることにした。醤油は最近アジアスーパーで見つけてはまっている台湾製の黒豆醤油を使う。浸けるといっても醤油をタッパーに5ミリくらいの深さまで入れ、茹でたサトイモを置いていけば自然と醤油の嵩が増すので、サトイモたちは半身浴状態になる。そして上から乾燥昆布を振りかけて、冷蔵庫で置いておくのだ。
醤油に漬かった部分だけがしっかりと栗色になったサトイモは見た目がよい。そいつを皿に並べ、上に少しだけ和辛子を載せて食べたなら、元西武ライオンズのデストラーデ外野手のようなガッツポーズをせずにはいられない。さて、ウィキペディアでサトイモの記事を見たならば、日本人には古くからサトイモと共に暮らす文化があったようだ。冒頭で『イモ”という名の芋がないのは、“メインのイモ”が無かったからでは・・・・』と述べたが、それは間違いで、もともとは“芋”とは“サトイモ”のことだったかも知れない。それがその他のイモが勢いを増したせいで、頭に“サト”を付けられてしまったのではないかと予想する。現在価格が高騰している米(日本米)の呼称も変わる可能性があるかも知れない。