デュレットとは、エチオピア料理のひとつである。それは以前紹介したセーラム・エチオピアンレストランで出されているもので、読者諸氏に是非とも紹介したい逸品なので取り上げた。引き続き筆者は、江戸時代に蝦夷地で幕府の捕虜になった帝政ロシアの探検家ゴローニン氏の手記を読むが、そこには今と変わらない日本人のコレクター気質や形式に依存する気質、忍耐強さ、言いにくいことを言うのに苦慮する気質やらが、客観的でユーモアを込めた記述で残っていて楽しいものだ。季節は秋で、ベイエリアにも雨が降り始めた。
この料理の特長は以下の通りだ。参考にしてもらいたい。
①エチオピア料理屋で新しいものを注文する勇気
セーラム・エチオピアンレストランは、基本的にエチオピア料理を知っている人の来店しか想定していないようで、メニューは頼まないと見せてくれない。加えてメニューには簡単な説明書きしかないので注文のハードルが高いのだが、同じ”ニンゲン”が食べているものには違いないので、よほどの偏食家でない限りは楽観的でありたい。それぞれの遺伝子には先祖の食歴が影響されているのは確かだろうが、人種によって食べられるものが異なるという研究結果は今のところ出ていないし、きっとこれからも出ないだろう。思い切って挑戦し、新たな扉を開くことの方が価値がある。
②デュレット 概要
メニューの簡単な説明書きによれば、デュレットとは“羊の臓物と赤肉のミンチと、セーラム特製スパイスの混ぜ合わせ”とある。モツ肉大好き30代独身日本式サラリーマンならばすぐに飛びつく内容であろう。これまでずっと牛肉ティベや野菜コンボばかりを惰性で注文してきた筆者は、その40代風保守性を恥じ、迷わずデュレットを注文した。店員の黒人女性は『お、あなたこれに挑戦するの?』と挑発的な笑みを浮かべ、『調理はどうする? 半生? それともミディアム?』と聞いてきた。『初めてだから・・・ミディアムで・・・・』筆者はそう答える。どうやら生肉に近い料理の様だ。不安なのでお持ち帰りにした。
③エチオピアと生肉
以前“ワリヤ・エチオピアン・レストラン”の回でも紹介したとおり、エチオピア人は生肉食を好み、牛の生肉はキッフォ(クトゥフォ)の名で出され、それはエチオピア旅行を敢行した人々のブログなどで見ることができる。エチオピアの生肉食は、エチオピアの標高(首都のアディスアベバは標高2400m)が関係しているだろうか。生肉が傷みにくい、加熱調理がしにくい、などの理由かと予想する。ボリビアを旅した知り合いが、高地ボリビアの料理は水が100度未満で沸騰する所為か、加熱料理がとてもまずいとの話をしていたのを思い出す。
④デュレット 味
持ち帰ったプラスティックパックを早速開けてみると、予想通りごっそりとインジェラが入っている。インジェラをペラペラと数枚めくればデュレットが顔を出す。羊肉ミンチにニンニクの欠片たっぷり、パプリカ風の野菜に玉ねぎが入っている。デュレットをインジェラに包んで口へ放り込むと、それは旨い。ニンニクのパンチ、羊肉の臭み、半生肉と臓物のネチャネチャした噛み切れない歯ざわりが少々。それにインジェラのフカフカとした食感と酸味が、それぞれの突出した部分を抑え合って調和する。赤ワインとの相性が見事である。インジェラにかかっている香辛料がまばらなので、ときどきすごく辛くなるのも、用意したビールで口の中を潤すよい機会になる。
後日再度来店したときには、店内で従業員家族が食事をしており、注文カウンターには7、8歳の黒人幼女が座っていたので、筆者は『あの、注文したいんですがー』と幼女を店員扱いしたところ、幼女はすっかり打ち解けた表情を浮かべ、別れ際には店から出てきて手を振ってきた。世界は決して安全でも健全でもないから、その純粋無垢な心は社会を知れば知るほどに狭める必要がある。だがいずれ成長したならば、たとえメニューに写真がなくても勇気を出し、見たことのない料理を注文してみてほしい。そう思った。このとき筆者はミディアムではなく“レア”を注文した。それはさらに羊肉の臭みとネチャネチャが増し、草食系30代独身日本式サラリーマンも心なしか“肉食系”になった気がしてきた。ユッケ・レバ刺しが追放された今、日本では生肉食がむつかしい状況にあるが、読者諸氏も機会があればデュレットに挑戦されたし。
この料理の特長は以下の通りだ。参考にしてもらいたい。
①エチオピア料理屋で新しいものを注文する勇気
セーラム・エチオピアンレストランは、基本的にエチオピア料理を知っている人の来店しか想定していないようで、メニューは頼まないと見せてくれない。加えてメニューには簡単な説明書きしかないので注文のハードルが高いのだが、同じ”ニンゲン”が食べているものには違いないので、よほどの偏食家でない限りは楽観的でありたい。それぞれの遺伝子には先祖の食歴が影響されているのは確かだろうが、人種によって食べられるものが異なるという研究結果は今のところ出ていないし、きっとこれからも出ないだろう。思い切って挑戦し、新たな扉を開くことの方が価値がある。
②デュレット 概要
メニューの簡単な説明書きによれば、デュレットとは“羊の臓物と赤肉のミンチと、セーラム特製スパイスの混ぜ合わせ”とある。モツ肉大好き30代独身日本式サラリーマンならばすぐに飛びつく内容であろう。これまでずっと牛肉ティベや野菜コンボばかりを惰性で注文してきた筆者は、その40代風保守性を恥じ、迷わずデュレットを注文した。店員の黒人女性は『お、あなたこれに挑戦するの?』と挑発的な笑みを浮かべ、『調理はどうする? 半生? それともミディアム?』と聞いてきた。『初めてだから・・・ミディアムで・・・・』筆者はそう答える。どうやら生肉に近い料理の様だ。不安なのでお持ち帰りにした。
③エチオピアと生肉
以前“ワリヤ・エチオピアン・レストラン”の回でも紹介したとおり、エチオピア人は生肉食を好み、牛の生肉はキッフォ(クトゥフォ)の名で出され、それはエチオピア旅行を敢行した人々のブログなどで見ることができる。エチオピアの生肉食は、エチオピアの標高(首都のアディスアベバは標高2400m)が関係しているだろうか。生肉が傷みにくい、加熱調理がしにくい、などの理由かと予想する。ボリビアを旅した知り合いが、高地ボリビアの料理は水が100度未満で沸騰する所為か、加熱料理がとてもまずいとの話をしていたのを思い出す。
④デュレット 味
持ち帰ったプラスティックパックを早速開けてみると、予想通りごっそりとインジェラが入っている。インジェラをペラペラと数枚めくればデュレットが顔を出す。羊肉ミンチにニンニクの欠片たっぷり、パプリカ風の野菜に玉ねぎが入っている。デュレットをインジェラに包んで口へ放り込むと、それは旨い。ニンニクのパンチ、羊肉の臭み、半生肉と臓物のネチャネチャした噛み切れない歯ざわりが少々。それにインジェラのフカフカとした食感と酸味が、それぞれの突出した部分を抑え合って調和する。赤ワインとの相性が見事である。インジェラにかかっている香辛料がまばらなので、ときどきすごく辛くなるのも、用意したビールで口の中を潤すよい機会になる。
後日再度来店したときには、店内で従業員家族が食事をしており、注文カウンターには7、8歳の黒人幼女が座っていたので、筆者は『あの、注文したいんですがー』と幼女を店員扱いしたところ、幼女はすっかり打ち解けた表情を浮かべ、別れ際には店から出てきて手を振ってきた。世界は決して安全でも健全でもないから、その純粋無垢な心は社会を知れば知るほどに狭める必要がある。だがいずれ成長したならば、たとえメニューに写真がなくても勇気を出し、見たことのない料理を注文してみてほしい。そう思った。このとき筆者はミディアムではなく“レア”を注文した。それはさらに羊肉の臭みとネチャネチャが増し、草食系30代独身日本式サラリーマンも心なしか“肉食系”になった気がしてきた。ユッケ・レバ刺しが追放された今、日本では生肉食がむつかしい状況にあるが、読者諸氏も機会があればデュレットに挑戦されたし。