エダ豆とは、成熟前の大豆のことである。さやに入った状態のまま塩ゆでにするとたいへん美味とされ、とくに夏の暑い盛りのビールのつまみとして関係各所から認められている存在である。やや毛羽だったさやを指で押せば“ポロリ!”と剥き出る小指の爪サイズの豆は、当に“人間に食べられるためのマメ”と勘違いさせるほどの具合の良さがある。今回は北米におけるエダ豆事情をここで紹介したい。そう、食材企画である。2024年も早くも秋が近づき、日本では“ポスト・岸田”を決める自民党総裁選が佳境を迎えている。
この食材の特長が以下のとおりだ。参考にしてもらいたいな。
①EDANAME
実は北米では、エダ豆は日本食の定番メニューとして広く認知されている。だから日本料理屋へ入れば必ずエダ豆がある。スパイシー好きな中南米の人々のために、茹でたエダ豆をニンニクと唐辛子で和えた、“スパイシー・ガーリック・エダマメ”なるお下品なメニューを見ることも少なくない。そしてなんとエダ豆は、 英語でも“EDANAME”と呼ばれる。日本語がそのまま英語になっている珍しい単語のひとつなのだ。
②大豆の歴史
しかしエダ豆は、“SUSHI” や “WASABI” や “TSUNAMI”、そして“Karoshi”ほどには、日本を代表している単語とは言い難い。と、不可思議に思い、大豆について調べてみた。ウィキペディア氏の出番である。我々ニッポン人にとっては醤油・味噌・おから・豆腐・豆乳・湯葉・鬼退治などと、非常に汎用性が高く、国を代表する食材(武器)といっても過言でない大豆であるが、それは永らく東アジアのみの食い物であり、世界に広まったのは20世紀初頭のことだという。広まった当時も食材というよりは肥料や飼料目的の傾向が強く、おおよそ“ニンゲン”の食べ物とは認知されなかったようだ。エダ豆が今、北米でEDANANEなのは、そういった背景があるようだ。ちなみに戒律によって食肉の扱いに慎重なイスラム教徒などに、大豆は昨今人気の食材となっているそうだ。
③冷凍枝豆
とはいえエダ豆は日本料理屋以外ではあまり目にしない。北米のスーパー・マーケットの生鮮食品コーナーでエダ豆を見ることはなく、主に冷凍食品として袋詰めにされて売られているのが現状だ。筆者は冷凍食品に頼らない独身日本式サラリーマン生活を送っているため、駐在生活10年を過ぎたというのに、エセ日本料理屋でしかedamameを食べたことがなかったのである。それが、2024年8月のアラスカ旅行のおりに立ち寄った“ニュー・サガヤ”でたまたま見つけて買い求め、気に入ったのだ。出会いは常に無限に広がっているのに、常にその多くを自分で閉ざしている。
日系や東洋系スーパーの冷凍コーナーには様々なメーカーのエダ豆がある。それを買い求る。雪平鍋で湯を沸かし、沸騰したところへ放り込む。冷めた湯が再度沸騰しかけたときに素早くザルに上げる。塩で揉んだり氷水で冷やしたりといった上等な真似はせずとも、それだけで美味い。日本人は“エダ豆は美味い”という遺伝子を持っているのではないだろうか・・・と思うほどに、何も味付けせずとも幸福を感じ、ビイルや日本酒をおかわりしてしまう。そのとき筆者は、“理性などは、所詮妄想なのではないか”とふと思うのだ。ニンゲンがヨクボーを抑えて生活しているのは、リセーの存在ではなく、それもホンノー(生存のための知恵)なのではないかと思うのだった。