ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

オースティン・ハウズ・キャンプグラウンド

2018-09-28 14:32:13 | 生活
 オースティン・ハウズ・キャンプグラウンドとは、コネチカット州バーカムステッド市にある州営のキャンプ場だ。ハートフォード地区の夏は完全に終わった。日差しの色味や風の匂いが明らかに変わり、早くも黄色く色づき始めた木々も見られる。コネチカット州の州営キャンプ場は、まだまだキャンプに相応しい9月の初週に早々と営業を終えてしまう。これは冬眠を前にして食欲が旺盛になる熊とニンゲンとの遭遇事故を避けるためのものと思われる。筆者は8月にここオースティン・ハウズ・キャンプグラウンドで30代独身日本式サラリーマン風のキャンプを敢行したが、紹介するのをすっかり忘れていた。



このキャンプ場の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。


①アクセス
オースティン・ハウズ・キャンプグラウンドは、ハートフォードからは小一時間のドライブで着く。91号線を北上し、ブラッドリー空港へ向かう40番出口で下りたらば20号線を西方向へぐんぐん進む。そうすると道はどんどんと山間に入っていき、ハートフォードでは90度近かった気温が軽く80度を下回り始め、車の窓を開けると涼しい風が入ってくる。後はナビに従って複数の丁字路やY字路を適切に進むと、美しい貯水ダムの堤頂を突き進み山を下り始める。するとファーミントン川に架かる橋にさしかかるので、それを渡ってすぐに川沿いの道を上ると目的地へと辿りつく。


②概要1
オースティン・ハウズ・キャンプグラウンドは、アメリカン・リジオン州営森林内にあるため、別名American Legion State Forest Campgrondとも言う。というよりこちらが正式名称として各種ホームページに掲載されている。だが実際に現地を訪れるとオースティン~の方の看板が主に掲げられていて“あれ、キャンプ場を間違えたかな”と思ってしまうので気を付けたい。フライフィッシングの人気スポットの清流ファーミントン川沿いに作られたオースティン・ハウズ・キャンプグラウンドは、30サイトほどしかない小さなキャンプ場で、サイト間の距離は十分あってプライベート空間を楽しめる。水道、水洗トイレやシャワーも完備されていて、前回初独りキャンプに赴いたグリーンフォール・キャンプグラウンドよりも設備は充実している。キャンプ場入り口にちゃんとしたオフィスがあり、バイト女子大生風の女が退屈そうに仕事をしている。そして酒類の持込みも許されているのだ。


③概要2
キャンプ場に到着してテントを設営したものの、飲酒を始めるにはまだ少し早いと思い、場内をぐるぐると散歩してみることにした。そうするとこのキャンプ場は一人キャンプをしている男が筆者の他にもちらほらと見られる。たいてい彼らはゴム長を干して釣り竿をスタンドに立てかけたフライフィッシングに興じる人々で、その30代独身日本式サラリーマンとはかけ離れたアウトドア玄人のような風貌にやや距離を感じるものの、“一人は自分だけではない”という安心感はある。



④サイト番号
リザーブアメリカで予約できるサイトの地図をよく見ると、ループ状になったサイトは川に面した部分と道路に近い部分がある。この道路は夜間でも時折車両の通行があり、山奥に来ている気分に浸っていると、突然「ブーン」と車が通りすぎるのがやや興ざめだ。川に近い方は全く聞こえないので、こちらを選びたい。



 そして8月初旬のオースティン・ハウズ・キャンプグラウンドの夜は蛍がそこかしこに飛び交う。真夏とは思えない涼しい空気が木々を揺らし、静かに音を鳴らす。30代独身日本式サラリーマンは慣れない独りキャンプに寂しさを憶え、何故か頭に浮かんだ“走れ正直者”のメロディーをずっと口ずさみながら、焚火の炎で火遊びをしながら眠くなるのを待つ。西城秀樹なんて、ずっと死なないと思っていたのに。

ホッキ貝

2018-09-20 17:41:26 | 食材
 ホッキ貝とは、正式名称はウバ貝という日本海北部やアラスカなどで獲れる二枚貝のことだ。アドン超級市場の冷凍コーナーには、かれこれ数年以上は冷凍されているのではないかと思わせるような、東南アジアで捕れたであろう川魚のぶつ切りや田螺などの奇妙な食材が多くあるので、霜で中が見えないガラス扉を開け閉めしながらそれらを物色するのはなかなかに面白い。そんな日々の中で今回は、冷凍されたホッキ貝を見つけてしまったので購入してみた。以下はその報告である。


この食材の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。


①ホッキ貝を発見する。
アドン超級市場の冷凍コーナーのホッキ貝は紙のパッケージに入っていて、中国語と英語が併記されたそのパッケージには“北極貝”と銘打たれている。どうやらホッキ貝は中国語では“北寄貝”ではなく“北極貝”のようだ。1ポンド分のホッキ貝が殻を剥かれ、ボイルされた後に冷凍しパックされてあるとのことだ。米国のエセスシ屋でも何故かしっかりホッキ貝がある場合が少なくないのは、きっとこのような商品を使用しているのだと思われる。パッケージにはホッキ貝と野菜を和えたサラダの写真が載っていて、このような食べ方でも長屋でちょっとした酒の肴になるに違いないと思い手に取ってレジに向かった。カナダ産のホッキ貝とのことだ。


②ホッキ貝を解凍し開封する
さっそく冷蔵庫に保管して解凍する。翌日に紙パッケージを開けてみると、中のビニル袋にはボイルされて先端が赤くなったあのホッキ貝がぎっしり詰まっていて見た目がけっこう気持ち悪い。この時点で1ポンドのホッキ貝を一人で消費することの困難さが予想される。



③ホッキ貝を食べる~刺身編~
まずは毎度の食事に数枚のホッキ貝を刺身としていただいてみる。最初の一枚は“あ、ホッキ貝だ”と思え、多少の満足感と共にビールや焼酎を楽しむことができるが、2枚目以降はやはり水っぽく風味が薄くグニョグニョな歯ざわりばかりで残念な気持ちになる。食材自体の味に頼るのはこの商品にはやや酷であるようだ。




④ホッキ貝を食べる~酢の物編~
だがまだホッキ貝はビニル袋の中にたんまりとある。そこでいろいろと食べやすい調味料を試行錯誤したところ、醬油とわさびよりは酢醤油の方が、食材本来の無味乾燥さを誤魔化すには適していることに気がづいた。さらには乾燥ワカメと一緒に和えることで食感のコントラストが栄え、美味しく頂けることを発見したのであった。ホッキ貝酢の物である。



⑤ホッキ貝を食べる~炊き込みご飯編~
それでもまだホッキ貝は無くならない。1/4ポンドほどのホッキ貝がビニル袋の中でしなだれている。正直もうしんどい。これを何とか消費するために思いついたメニューが炊き込みご飯であった。これは炊飯器に醬油と酒とホッキ貝と、ほんの少しのだし汁を入れて炊くといういたって簡単な調理方法であるが、意外にもこれは実に旨かった。水っぽかった冷凍ホッキ貝が炊飯器の中で水気を失うことでまるで乾燥した蒲鉾のような弾力のある歯触りになり、噛めば噛むほどにじんわりと磯の香りが口にやってくる。また刺身の状態ではあるかないか判らなかったホッキ貝の旨味が米に染み出しており、米自体も美味しくいただける。お酒と一緒に楽しめるご飯になった。




 さて、ホッキ貝は北海道苫小牧市での水揚量が日本一だそうで、市か漁業組合かが運営する“苫小牧ほっき貝サイト”という充実したホームページを見つけることができた。ここに載っていたホッキ貝レシピを見ると、筆者が独自に編み出した上記の調理法はあながち間違いではなかったようで、自分の調理センスに自信をつける結果となった。だがさしもの苫小牧市民も一週間で450グラムものホッキ貝を食べることはないのではないか。というより今のところ筆者が“一週間でホッキ貝を食べた量”の日本、いや世界記録保持者なのではないか。この記録を破りたい30代独身日本式サラリーマン諸氏は、お近くの中華スーパーの冷凍コーナーでこの冷凍ホッキ貝2パック買い求め、挑戦されたし。ちなみに“苫小牧ほっき貝サイト”では“ホッキ貝カレー”が紹介されており、ホッキ貝の分量は『多ければ多いほどよい』と記載されていました。

カネシゲトシユキ

2018-09-16 20:40:29 | 生活
 カネシゲトシユキ君は、筆者の中学時代のクラスメイトだ。もうこの世には居ない。30代独身日本式サラリーマンは、休日の昼下がりに昔の事を思い出して遊ぶことがある。そうすると懐かしい人たちの顔や名前や、彼らとの出来事を思い出して、それに浸って時間を潰せる。だがこの思い出し遊びの中でしか登場しない人々は、消息は知らないし、そうまでして再会したいとも思わないし、町ですれ違ってもお互い気が付かないので自分の中では実質的には“居ない”と大差ない人々だ。それでも彼らが“居なくなった”というニュースを知らないので、心の中で“どこかに居る”ことになっている。だから安心して思い出し遊びに興じられるのだが、それに対してトシ君は居なくなったことを知っているので、思い出し遊びの最中に彼が登場すると心がチクリとしてしまう。なので書いておこうと思ったのだ。


カネシゲトシユキ君との思い出は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。


①トシ君
カネシゲトシユキ君は“トシ君”と呼ばれていた。いっこうに陰毛が生えないことへの絶望に近い劣等感の中でも、クラス内外への強烈な自己顕示欲を満たすために闘っていた筆者の焦りの日々とは異なり、トシ君は大人しく、穏やかで、笑顔が印象的な紳士だった記憶がある。大人しいだけではなくクラスで発言を求められば丁寧に発言していたし、記憶が確かであれば庭球部を頑張っていたはずだ。彼とはとても親密というほどではなかったが、思春期のとてつもなく理不尽で幼稚で残酷な世界で、安心して話すことができる数少ない人だった。



②トシ君
トシ君が亡くなったときのことを書く必要はないので、書かないことにする。クラスメイトと宅電で泣きながら話した。



 30代独身日本式サラリーマンともなれば、近しい人の死をいくつかは経験する。実際トシ君よりもずっと近しく、寝込んでしまうほどのショックを受ける死とも直面した。でもそんな出来事の初体験はトシ君で、そのときに自分や友人や先生の様子を見たり、ご両親のことを慮ったときに、「あ、僕は生きねばならない」と思ったし、母親に強くそれを言われもした。幸いにして高校入学と共に陰毛は生えたものの、辛いことや報われないことは連続して起きた。それでも何とかやってきた。今も何とかやっている。それをトシ君のお陰というと彼の死を肯定しているようで気に食わないのだが、また暇な週末に思い出し遊びをしてトシ君に会ったなら、「何とかやっていますよ」と伝えようと思う。彼はあの笑顔を返してくれるに違いない。

ハナ・スシ

2018-09-16 13:51:05 | 食事
 ハナ・スシとは、コネチカット州マンチェスター市にある日本料理レストランだ。筆者はずいぶん前から大坂なおみ選手の持つニンゲンが元来持っている醜いモノを全て抜き去ったかのような、全てを超越したような魅力にすっかりやられており、このほど全米オープンで見事優勝されたときには新しい時代の到来みたいなものを感じたほどだった。優勝後のインタビュー記事を読んでいると“カツ丼が食べたい”と発言されていた。なので今回は、ハートフォード周辺でカツ丼が食べられるハナ・スシを、30代独身日本式サラリーマンのみならず大坂なおみ選手向けて紹介します。


このお店の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。


①立地
マンチェスター市はハートフォード市の東に位置する町で、中央部は古い町らしく小さな商店街通りの周りに比較的安作りな住宅が密集している。町の北部の丘陵部は最近になって大々的に開発されて大型商業施設が乱立しており、ハートフォード地区の人々の人気の買い物スポットになっている。比較的土地が安く治安もハートフォードよりはずっとよいので居住区として人気があるようだ。ハナ・スシは中央部の商店街から少し離れた幹線道路の交差点付近にあり、ガソリンスタンドや車のパーツ屋などが並ぶやや殺風景な場所にある。


②店の外観
ハナ・スシは4つの店が並ぶテナント長屋にあり、ハナ・スシ以外の店はハラル肉を売るインド・バングラ系のグローサリーストアやネイルサロンの店が入っている。どの店も薄暗く、オープンしているのかどうかが判然とせず、建屋全体からチープな雰囲気が漂う。それでもやけに広めな駐車場が完備されているので、“どの店も大入りを期待しているのだろう”と期待して勇気を出して入店した。



③中の雰囲気
入ってみると意外と店内は明るい。浮世絵風の女が描かれたのれんや、竹でできた間仕切りなどで日本らしさを演出している。店の奥の間仕切りの向こう側に3~4人程度しか座れないカウンター席があり、手前側に複数のテーブル席が並ぶ。狭い店内にテーブルが密集する様子が日本の駅ビルにある蕎麦屋を思い起こさせて懐かしく心地よい。その店内の雰囲気と相まってか、ホールを取り仕切る40代後半風の中国人男性店員にもどことなく脱サラ日本人っぽいオーラが出ている。なかなかどうして親近感の湧くお店だ。


④メニュー・味
寿司の他に焼うどんやカツ丼・天丼・親子丼、カレーライスなどの30代独身日本式サラリーマンのエネルギー源になりそうなメニューが並ぶ。ハートフォード地区の日本料理屋によくあるタイ料理や中華とのフュージョンメニューがなく、純日本料理屋と呼べる。もちろんエダマメや揚げ出し豆腐などの定番おつまみも置いてある。だが筆者は訪ねる度にカツ丼と寿司数貫とサッポロビールを注文してしまうので、他のメニューの味は知らない。寿司はしっかりと酢の効いたシャリに大振りのネタが載って嬉しいし、カツ丼がお勧めだ。ボリュームたっぷりの分厚い豚カツが甘めのタレに絡まってやってくる。なぜかキュウリとニンジンの千切りまで載ってくるが、慢性的野菜不足の30代独身日本式サラリーマンにとっては嬉しいサービスということにできる。




 純日本料理などと筆者は喜んでしまったが、それは純日本料理などではなく、自分が慣れ親しんだ料理というだけだ。そもそも純日本料理などというものはない。というのも料理は情報技術ほどの速度ではないにせよ変化している。江戸前寿司が日本の寿司代表になったのはつい最近のことだし、カツ丼は明治時代にできたメニューだし、カツカレーは巨人軍の選手が初めて食べたものだし、醬油は鎌倉時代までは無かったという。4世代前の日本人からすると、“こんなもん日本食じゃない”というメニューや味ばかりに違いない。大坂なおみ選手、コネチカットの小さな町にまあまあ美味しいカツ丼があるのでお忍びで立ち寄ってみてください。