KOJI IZAKAYAとは、ニューヨークブルックリンにあるバーである。チャイナタウンで小籠包、もち米が入った点心に青島ビールをいただいた筆者は、マンハッタン橋を歩いて渡りブルックリン方面へと戻った。橋のたもとから見える、ペイント落書きが施されたレンガ作りの古いチャイナタウンの家屋たち、そしてその後ろにそびえる世界都市のビル群の景色が面白い。橋上からイーストリバーを見下ろせば観光クルージング船やモーターボートの運転に興じる人々で賑わい、河口側を眺めるとブルックリン橋の向こうに自由の女神が小さく見えた。ホテルに戻ると昼寝をし、空腹を憶えて起きてからはブルックリンの町で古着を物色して時間を潰し、夕方にはこのKOJIのカウンターについた。
このバーの特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。
①アクセス・外観
メイシーズやエイチ&エムやバナナ・リパブリックなど、アメリカの都市ならよくあるデパートやショップが並ぶフルトン通りから北に延びるローレンス通りは、床屋・ネイル屋や煙草屋、中華食堂が並ぶやや雑多な通りで、KOJI居酒屋もそこにある。黒っぽい外壁には目立たない看板がついているばかりで、外観はアイリッシュ・パブのようだ。周辺にはもっと洗練された外観の、日本人が経営していそうなレストランがいくつかあったのだが、食事を楽しむというより、バーテーブルに腰掛けて物思いにふけりながら過ごしたい気分であったのでKOJIを選択したのだった。
②中の様子・店員
メモリアル・デーの夕暮れ時のバーは閑散としており、筆者以外にはこれから街に繰り出すであろう白人の若者が一人、友人との待ち合わせのためにカウンターに腰掛けてビールをチビチビ飲んでいるだけだ。内装の壁にサムライや着物の日本女を描いて何とか日本風を醸し出そうとしているが、カウンターの雰囲気はやはりアイリッシュパブで、居酒屋の感じはまるでない。まだ時間が早いせいか、店員は中年のアジア人女性が一人しか居ない。
③メニュー、味
だがメニューはハートフォードではなかなかお目見かかれない日本食が並ぶ。鯖の塩焼き、鯵フライなどは、注文したらすぐに出てくるので少し不安になったが、味はベイエリアの“舞”に比べても遜色ない。また、枝豆が新鮮で茹で具合が丁度よいために食感がよく、非常に満足がいく。おでんもあったので嬉しくなって注文したが、これはいまいちだった。そうして〆に握り寿司を頂くころには十二分に腹が膨れていたので、数貫しか食べられなかったが、これもまたなかなか美味であった。厨房では比較的日本食をよく知る人が調理しているに違いない。
④酒
お酒の種類も充実しているようだ。ハートフォードではまず売られていない焼酎もある。日本酒の種類も豊富だったので、聞いたことのない少し高い日本酒を注文してみたところ、中年店員はしばらくそれを探した後に困ったような笑顔を見せ、“ハッピーアワーだから、こっちの酒にしたらどうか”と安酒を勧めてきた。メニューに載っているからといって常備している訳でもないらしい。なぜか安酒は徳利の代わりに化学用フラスコに入れられて出てくる。そしてぐい飲みは小さいビーカーを使う。理科の授業で触れて以来の化学実験用具での飲酒は、イケナイコトをしている感じがして面白いものだった。
30代独身日本式サラリーマンのニューヨーク探訪の最終日はこうして終わろうとしていた。5月末のニューヨークの日は長く、酩酊して店を出ても外はまだ明るい。ホテルまで歩くとビルの間の道には涼しい風が吹き、街路樹がざわざわと揺れる。筆者の前には太った黒人の女が幼女の手を引いて歩いていた。メモリアルデーとはもともと南北戦争、第一次世界大戦以降はあらゆる戦没者を追悼する日だとのことで、多くの人々はこの日に墓地や記念碑を訪れるのだそうだが、筆者にとってはニューヨークを来訪記念日になった。
このバーの特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。
①アクセス・外観
メイシーズやエイチ&エムやバナナ・リパブリックなど、アメリカの都市ならよくあるデパートやショップが並ぶフルトン通りから北に延びるローレンス通りは、床屋・ネイル屋や煙草屋、中華食堂が並ぶやや雑多な通りで、KOJI居酒屋もそこにある。黒っぽい外壁には目立たない看板がついているばかりで、外観はアイリッシュ・パブのようだ。周辺にはもっと洗練された外観の、日本人が経営していそうなレストランがいくつかあったのだが、食事を楽しむというより、バーテーブルに腰掛けて物思いにふけりながら過ごしたい気分であったのでKOJIを選択したのだった。
②中の様子・店員
メモリアル・デーの夕暮れ時のバーは閑散としており、筆者以外にはこれから街に繰り出すであろう白人の若者が一人、友人との待ち合わせのためにカウンターに腰掛けてビールをチビチビ飲んでいるだけだ。内装の壁にサムライや着物の日本女を描いて何とか日本風を醸し出そうとしているが、カウンターの雰囲気はやはりアイリッシュパブで、居酒屋の感じはまるでない。まだ時間が早いせいか、店員は中年のアジア人女性が一人しか居ない。
③メニュー、味
だがメニューはハートフォードではなかなかお目見かかれない日本食が並ぶ。鯖の塩焼き、鯵フライなどは、注文したらすぐに出てくるので少し不安になったが、味はベイエリアの“舞”に比べても遜色ない。また、枝豆が新鮮で茹で具合が丁度よいために食感がよく、非常に満足がいく。おでんもあったので嬉しくなって注文したが、これはいまいちだった。そうして〆に握り寿司を頂くころには十二分に腹が膨れていたので、数貫しか食べられなかったが、これもまたなかなか美味であった。厨房では比較的日本食をよく知る人が調理しているに違いない。
④酒
お酒の種類も充実しているようだ。ハートフォードではまず売られていない焼酎もある。日本酒の種類も豊富だったので、聞いたことのない少し高い日本酒を注文してみたところ、中年店員はしばらくそれを探した後に困ったような笑顔を見せ、“ハッピーアワーだから、こっちの酒にしたらどうか”と安酒を勧めてきた。メニューに載っているからといって常備している訳でもないらしい。なぜか安酒は徳利の代わりに化学用フラスコに入れられて出てくる。そしてぐい飲みは小さいビーカーを使う。理科の授業で触れて以来の化学実験用具での飲酒は、イケナイコトをしている感じがして面白いものだった。
30代独身日本式サラリーマンのニューヨーク探訪の最終日はこうして終わろうとしていた。5月末のニューヨークの日は長く、酩酊して店を出ても外はまだ明るい。ホテルまで歩くとビルの間の道には涼しい風が吹き、街路樹がざわざわと揺れる。筆者の前には太った黒人の女が幼女の手を引いて歩いていた。メモリアルデーとはもともと南北戦争、第一次世界大戦以降はあらゆる戦没者を追悼する日だとのことで、多くの人々はこの日に墓地や記念碑を訪れるのだそうだが、筆者にとってはニューヨークを来訪記念日になった。