ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

タリーン~コーティッド・ピーナッツ ジャパニーズスタイル~

2022-05-09 11:43:49 | 食材
 タリーン~コーティッド・ピーナッツ ジャパニーズスタイル~とは米国で売られている駄菓子である。30代独身日本式サラリーマンは、余ったうまい棒以外では滅多なことでお菓子などは食べないのだが、“ジャパニーズ”と銘打たれているものにはどうしても自然と目が向かい、手に取ってしまう。そう、やっぱり自分のことをジャパニーズだと、思っているのだ。2022年5月、ベイエリアは早くも初夏のような陽気である。こうして気温が上がってくると30代独身日本式サラリーマンの足は靴の中でアツアツムレムレで苦しそうだ。


この商品の特長は以下の通りだ。参考にしてもらいたい。



①グロサリー・アウトレット
ベイエリアには“グロサリー・アウトレット”という名のスーパーがある。それはサンノゼエリアやイーストベイに多くあり、むやみにオーガニック商品を主張していないところからも、比較的低所得者層向けのスーパーであることが見て取れる。30代独身日本式サラリーマンにとってこのスーパーは、ずらりと並ぶ5ドル前後の安ワインや、入れ替わりが激しいチーズコーナーなどが魅力的で、時折訪れるとそこそこ楽しい。ここで段ボール箱に大量に入ったタリーン~コーティッド・ピーナッツ ジャパニーズスタイル~を見つけ、手に取った。




②タリーン~コーティッド・ピーナッツ ジャパニーズスタイル~
タリーン~コーティッド・ピーナッツ ジャパニーズスタイル~は手のひらサイズのプラスチック袋に梱包され、内容量は50グラムだ。中には豆が入っているだけで、見た目からはいったいどこがジャパニーズ・スタイルなのかさっぱり分からない。ただ梱包袋には和傘をさした和装の女、所謂ゲイシャのマンガが描かれているので、やはり“ジャパニーズ”を強調した商品であることに間違いない。ちなみにゲイシャの目はポリコレ民に叱られそうなほどの吊り目である。筆者はジャパニーズスタイルシングルサラリーマン、つまりノンポリなので、純粋な興味を憶えて購入した。1袋50セントである。




③これがなかなか美味い。
これがなかなか美味い。ピーナツを砂糖・塩と小麦粉でコーティングして揚げたもので、コーティングの硬質なカリッとした食感と中のピーナツの香ばしさが気持ちよい。甘さもしょっぱさも控えめで、ピーナツ本来の味を楽しめる。1袋50グラムが絶妙に丁度良い分量で、食べすぎてムカムカすることもなく、“もっと食べたい!”とストレスフルになることもない。忙しい朝の朝食などにも適していると言えよう。だが、いったいどこがジャパニーズなのかは不明のままだ。




④ヨシゲイ・ナカタニ
ここでジャパニーズ・アメリカン・ナショナル・ミュージアムが発行している“ディスカバー・ニッケイ”というウェブサイトから貴重な情報を入手することができた。なんとこのジャパニーズ・ピーナツとは、1930年代にメキシコに移住した“ナカタニ・ヨシゲイ”なる人物によって考案されたものだという。ナカタニ氏は、1940年代の太平洋戦争を機にメキシコで仕事を失い困っていた時に、故郷の兵庫県淡路島洲本市での丁稚時代に学んだお菓子作りの手法をメキシコの伝統的な菓子に組み合わせ、このジャパニーズ・ピーナツを考案し、それが爆発的にヒットしたというものなのだ。彼の移民許可証のようなものの写真が残っており、拡大してみたところ本名は“ヨシヘイ”のようだ。メキシコでは“ヨシゲイ”の方が都合が良かったのだろうか。





 上記の記事を執筆した美人ヒスパニック女性の姓もナカタニなので、おそらくは親戚の方であろう。30代独身日本式サラリーマンのいつもの気まぐれな暇潰しが、日本から世界へ羽ばたいた人との思いがけない出会いになった。ヨシゲイ氏は再び日本の地に帰ることなく1992年に亡くなり、彼の会社も合併や買収で名前は無くなってしまっているようだが、商品はこのように残り、2022年になった今でも30代独身日本式サラリーマンがベイエリアでポリポリ食っている。世界は繋がっている、ただその繋がりのほとんどにヒトが気付かないだけだ。尚、ヨシゲイ氏はメキシコに渡りたったの2年目で現地の女性と結婚している。つまりなかなかのやり手である。悲しき30代独身日本式サラリーマン駐在員が、ヨシゲイ氏を自分自身と重ね合わせるのは少し無理があるようだ。


人からもらった文庫本の臭いを消す

2022-05-05 12:26:40 | 生活
 人からもらった文庫本の臭いを消すとは、筆者が知り合いから譲り受けた文庫本に対して行った消臭活動のことをいう。最近仕事がひと段落し、共に働いていた業者や下請けの人々とお別れすることになったので、さっそく餞別にに『うまい棒』を贈ってみた。実は筆者はうまい棒の全米ブームの火付け役になろうと適宜活動しているのだ。だが今回も受けがよくなく、また大量に余ってしまった。だから最近はいつも余ったうまい棒ばかり食べている。タコ焼き味はサクサクしていて美味しいし、牛タン味も美味い。コーンポタージュ味も美味い。30代独身日本式サラリーマンにはうまい棒がよく似合うようだ、鏡を見てそう思った。



この活動の記録は以下の通りだ。参考にしてもらいたい。



①人から本をもらう
30代独身日本式駐在サラリーマンであるならば、帰任する同僚駐在員から家具や家電などを譲り受けるという出来事に遭遇することはままある。がっつり昭和世代の上役に、『これも取っておけ、これも高いやつだ』と勧められると、弱腰30代独身日本式サラリーマンは断り切れず、欲しいもの以外に大量の物品を受け取ってしまい、そのままグッド・ウィルに直行した思い出も一度や二度ではない。だが今回は珍しく文庫本をたくさん譲り受けたのだった。紙袋いっぱいにもらった本には、遠藤周作や川端康成、塩野七生などの作品に加えてスピリチュアル系とも呼べそうな本までいろいろ入っていた。




②人から本をもらうこと
『ニンゲンは見たいものしか見ない』というのは、あのカエサルの言葉だ。彼がこの言葉を残してからかれこれ2000年以上が経っているというのに、ニンゲンはこの問題を解決できず、ともすれば当時よりも悪化している可能性すらある。動画サイトや通販サイトを開けば『お前の好きなものはこれだ、お前と同じような人はこれも買っている』と教えてくれる。科学技術の進歩や価値観のアップデートとやらにより、伝統的宗教観や価値観を揺るがされた人々は不安になり、ネット界で簡単に見つかる同意見の人々の空間に安住し、対話を拒む傾向が顕著に見える。“人から本をもらう”とは、そんな目隠し状態の日々の中でのちょっとしたもらい事故であり、新鮮な気持ちになった。自分では買わない本、つまり自分の知らない世界が自分の部屋に在るのだ。


③本が臭う。
だがその本が臭いのだった。いや、臭いというと語弊がある、筆者の苦手とする香りだったのだ。それはおそらく元の持ち主の部屋で焚かれたお香かキャンドルの匂いが文庫本の紙にしっかり染みついたものだ。それがページをめくるたびにふんわりと鼻に押し寄せ、閉口し、読書が長続きしない。“どげんかせんといかん!”と思い、さっそく『本の消臭』とネット検索を試みたのだ。



④本の消臭活動
重曹や芳香剤を使う方法と共に挙げられていたのが、『新聞紙を挟む』であった。いちおう最後の手段的な扱いの方法であり、最も効果的とのことであったので、筆者はこれを採用してみることにした。2022年現在、新聞紙の入手もまた難しくなってきているのだが、筆者には秘策があった。行きつけの中華系スーパーマーケットのライオン・スーパーのレジ台の棚にはいつも新聞紙が山積みになっていることを思い出したのだ。買い出しついでにレジの中年女店員に『これは無料なのか』と聞けば、『これは無料である』と言うので難なく数部入手したのだ。それは“大紀元時報”という名の新聞社で、新興宗教の法輪功関係者が中心となって発行しているものらしい。反共・保守系の論陣を張るとのことだが、筆者には関係ない。これを文庫本の大きさにカットし丁寧に挟んでいく。





新聞紙の方法で本の臭いは劇的に減ったものの、まだうっすらとお香の香りがしていた。しかしそれが読んでいるうちにだんだんと臭いは薄まっていく。自分の手で触ることで自分のものへと変化していく、やはりとどめは“自分の臭い”なのだ。『臭くなくなる』とは『自分の臭いに近づく』ということのようだ。いつか譲ってくれた人に再会し、『いやぁ、この本をお返ししようと思って・・』と手渡せば、“う・・・これ本当に自分の本だろうか、30代独身日本式サラリーマン臭がきつい”と思われるのかも知れない。そう思いながらスピリチュアル本を読んでいる。

アジア系スーパーの大きないかを焼く

2022-05-02 08:33:55 | 食材
 アジア系スーパーの大きないかを焼くとは、アジア系スーパーで手に入る大きなイカを焼くことをいう。イカは“烏賊”と書く。それは、死んだようにプカプカと浮いていたイカを食べようとしたカラスが、逆にイカに捕らえられて食われたという中国の言い伝えから、『カラス(烏)にとって恐ろしい“賊”』ということで烏賊になったのだいう。2022年春には島根県沖で生きたダイオウイカが捕獲されたことがニュースになった。その大きさは全長4mという。動画を見ればそれは確かにカラスなどは丸飲みにしてしまいそうな迫力だ。こいつに比べれば米国アジア系スーパーで手に入るイカは迫力に劣るが、それでも30代独身日本式サラリーマンに紹介するほどのネタがある。だからここで紹介します。



この食材の特長は以下の通りだ。参考にしてもらいたい。



①アジア系スーパーで売られている大きなイカ
30代独身日本式サラリーマンでありさえすれば、北米のアジア系スーパーの鮮魚コーナーに佇む巨大なイカを見たことがあるに違いない。その大きさは30代独身日本式サラリーマンのおおよそ手のひら二つ分、色はやけに人肌に近くて気味が悪い。見た目の気持ち悪さもさることながら、一人暮らしには向かないボリュームやさばく手間を考えると、本ブログで再三紹介している小さいイカに比べて購買欲が失せ、敬遠しがちだ。だが安い。店によってまちまちだが、安い場合でパウンド4ドル、高くても6ドルほどで手に入る。なので挑戦してみたのだ。いつものようにプラスチック袋に放り込んで鮮魚コーナーの不機嫌な男店員に手渡せば、値札をつけてくれる。だいたい一杯が2パウンド弱だ。





②大きなイカを裁く
さて、持ち帰って調理を始める。まな板に乗りきらないほどの大きさのイカの足をおそるおそる引っ張って胴体から引きはがすと、ハラワタがにゅるりと現れるので『ひィ!』となる。それは片手で握るにちょうどよいほどの大きさで、半パウンドほどはあるのではないかと思えるほどの重量感、色はどす黒いオレンジ色で気色が悪い。だが30代独身日本式サラリーマンはけち根性だけは達者なので、 “捨ててしまうのはもったいない、このハラワタの重さ分も支払っているのだ” と思い始める。それに “ひょっとしたら美味いのでは・・・”という期待も出てきた。





③ホットプレートで焼く
イカはシンプルにホットプレートで焼くことにした。ハラワタはアルミホイルで作った器に入れて、それに少しだけ日本酒を注ぎ、器ごと加熱する。その他のゲソ、胴体、頭は一口大に切っておき、食べる分だけちびちびとホットプレートに入れて焼く。換気効果の弱いアメリカ式長屋の部屋はすぐにイカの匂いが充満する。アルミホイル内のハラワタはしだいにグツグツしはじめ、適当に混ぜていると色はマイルドな茶色に変わってビジュアルがよくなっていく。箸についたハラワタを舐れば、旨い。何とも言えない深いイカの臭みと風味、甘みとえぐみが相まって最高の味になっている。まさにこれは、“人間に幸せを与えるためのハラワタ”と呼んでよい。細切れに焼いたイカをこのハラワタにディップして食べれば、ホクホクのイカの歯ざわりとハラワタの風味のフュージョンで、うま味が1.4倍増する。日本酒を飲みながら楽しめば、さらにうま味は2.2倍になる。とはいえハラワタは珍味の部類に入るので、一度に大量に食べると多少胃がムカムカするかも知れない。




 2022年初頭のロシアによるウクライナに対する軍事侵攻に対して、インド・中国などの一部の国を除いて多くの国がロシアを非難し、ロシアに対しては経済制裁、ウクライナには物資支援を行っている。平和ボケの30代独身日本式サラリーマンとしては、その制裁や援助が、結果として国どうしの憎悪のエスカレートを抑え、市民の犠牲者を減らす方向へ動いて欲しいものだ。矜持はあるし、命を犠牲にしてでも守らねばならない秩序もあるだろう。しかし30代独身日本式サラリーマンは、いつも適当な距離感を持ってものごとを判断したい。そしてどんな判断に対してもいくばくかの逡巡を持っていたい。我々が “絶対に正しい” と思ったときこそ大いに危ない。何故なら我々は所詮30代独身日本式サラリーマンなのだから。